朝ドラ「ブキウギ」出演の新星・黒崎煌代、映画初出演作「この映画には、今の自分はこのままでいいのかという問いがあります」映画『さよなら ほやマン』公開

  by ときたたかし  Tags :  

人気アーティストMOROHAのアフロさんが映画初主演を務め、家族の再生劇を描いた映画『さよなら ほやマン』が現在、全国公開中です。

そのアフロさん演じる主人公アキラの弟・シゲル役を、本作はスクリーンデビューとなる黒崎煌代さんが好演。現在放送中の連続テレビ小説 第109作『ブギウギ』では、趣里さん演じる主人公鈴子の弟・花田六郎役を演じており、今後の活躍も期待される新星です。お話を聞きました。

■公式サイト:https://longride.jp/sayonarahoyaman/index.html [リンク]

●本作でのスクリーンデビュー、おめでとうございます。出演が決まった時はいかがでしたか?

わたしは映画に出ることが小学校の頃からの長年の夢だったので、本当に夢は叶うのかと、とてもうれしかったです。最高の気分でした。

●映画に出ることに対するあこがれが強かったのですか?

そうですね。実は父の影響なのですが、父がアメリカで映像関係の仕事をしていて、映画のフィギアや雑誌など関係するものがたくさんあって、そういうものに囲まれながら育ったんです。洋画は特に身近なものでした。

●初めての現場はいかがでしたか?

日本映画の現場は怖いイメージがあったのですが、そんなことはまったくなく。みんな和気あいあいとしている現場でした。スタッフさんのせわしなさは、イメージ以上でしたけれど、その姿を見てモノ作りは頭を使うなと思いました。みんなで頭を回すのでモノが作れるのだなと。なので、今後ももっと映画に出たいと思いました。映画の魅力が分かる現場でした。

●この『さよなら ほやマン』の物語の感想はいかがでしょうか?

最初はとてもストレートな物語だなと思ったので、(映像化したら)どうなるのかと思ったのですが、完成した映画を観た時に、主演のアフロさんの人柄がとても出ていました。みんなが納得のいく無骨さが出ていてとてもよかったです。

自分の居場所は、ある程度歳を取ることで分かってきて安定してくるわけですが、安定と不安定のバランス、ですかね。それは長く生きていると、ずっと付きまとってくる問題だと思うんです。今の自分は、このままでいいのかという問いは誰しも持っていると思うし、そういうことにも言及した作品だと思うので、わりと広い年代の方々に刺さるのかなと思います。

●弟のシゲルというキャラクターは、どう演じたのでしょうか?

彼は表面的には楽しそうなところがあると思うのですが、とてもピュアな男なんですよね。そこを大切にしていました。自閉症という設定はあるのですが、そのアプローチではなく、シゲルのピュアさを大事にしました。

●また、庄司輝秋監督の本作への想いは、どのように理解しましたか?

理屈ではなく、自分がやりたいところへ自由に突き進んでもいいのではないか、そういう提案をしたかったんだろうなと思いました。そして、作品を通して多くの人へ問いたかったのだろうと思いました。僕はシゲルを演じることで、そのメッセージを伝える一端を担えたのだと思います。

●世代的に響くテーマでもあると思うのですが、個人的に感じるところはありましたか?

わたしは22歳なのですが、周囲は就職活動をし始めているので、いわゆる安定に付きつつあるなか、わたしは役者という不安定な場所にいる。周囲を見てみると、入った会社の愚痴をこぼしている人もいる。そんな人たちにこそ、この『さよなら ほやマン』を観てほしい。やりたいことにぶつかっていけと、背中を押してくれるような作品なのかなと。

●俳優業は不安定な仕事かも知れませんが、やりたいことが出来ているわけですよね。

わたしの場合は、やりたいことって見つけにくいだろうなと、小学生くらいの時に感じていました。なので、いろいろなものに触れて、やりたいことが見つかるように、出来るように触れていました。努力が要りました。

●その甲斐があり本作でスクリーンデビュー、現在放送中の連続テレビ小説『ブギウギ』では主演の趣里さんの弟役ですよね。

まだ実感はないのですが、連絡がたくさん来ています。メッセージ数などの数字で現れるので、朝ドラって反響が大きいなと思いました。

●反響を受けると、仕事への意識って変わりますか?

まだないんですよね。自分が俳優だとか芸能人だとか、そういう感覚はないので、その自覚を持つべきか、そうじゃないのかも分からないので、いまとても困惑しています(笑)。自分としては生活は変わってないです。

●今日はありがとうございました。最後に映画を待っている方たちへ一言お願いいたします。

現状がこのままいいのかという、わりとみんなが考えるテーマについて言及している映画です。誰にでも刺さる映画だと思うのですが、今、道の選択を迷われている方は観ていただいて、進んでほしいなと思います。決める支えになるのではないかなと思うので、ぜひ劇場でご覧ください。

■ストーリー

豊かな海に囲まれた美しい島で、一人前の漁師を目指すアキラは、「ほや」を獲るのが夏の間の仕事だ。船に乗ることができない弟のシゲルと2人、島の人々に助けられてなんとか暮らしてきたが、今も行方不明の両親と莫大な借金で人生大ピンチに直面中。そんな折、都会からふらりと島にやってきたワケありっぽい女性、漫画家の美晴が兄弟の目の前に現れた。「この家、私に売ってくれない?」その一言からまさかの奇妙な共同生活が始まる。3人のありえない出会い、それは最強の奇跡の始まりだった。

新宿ピカデリー他全国にて公開中
配給:ロングライド/シグロ
©2023 SIGLO/OFFICE SHIROUS/Rooftop/LONGRIDE

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo