俳優の市原隼人さんが給食マニアの教師を演じる人気ドラマシリーズ「おいしい給食」のシーズン3(全10話・テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビ、TVerほかにて順次放送)が、10月より順次放送開始します。
2019年に放送を開始した「おいしい給食」シリーズ。昨年公開された『劇場版 おいしい給食 卒業』のラストで甘利田(市原)は函館への転勤が決まりましたが、今回連続ドラマではその函館でスタート。北の地オリジナルの献立や食材に囲まれ、新たなる給食道が幕を開けます。
2023年秋、甘利田を再び演じることになった市原さんに話を聞きました。
■公式サイト:https://oishi-kyushoku3.com/ [リンク]
●ファン待望の新シリーズは、新要素が多い展開になりそうですよね。
冬の北海道が舞台ということで吹雪いていますし、「わたしは極端に寒がりだった」という甘利田が震えているシーンから始まりますから(笑)。ストーブで牛乳を温めているシーンもあり、それもこの『おいしい給食』シリーズでは初めてのことです。
それとシーズン3の駄菓子屋さんのシーンがまたいいんです。僕は高畑淳子さんが大好きなのですが、まさか出演してくださるとは思ってもいなかったので。高畑さん演じるサキという店主が面白いんです。子供には買い食いせず早く帰れというくせに、甘利田はこっそり買ってしまう。今回も駄菓子パートがありますので、面白味が増しています。
●そして今作から参加となった新メンバーもたくさんいますよね。
新米の英語教師役の大原優乃さんは、自分の出番が終わっても帰らず、私服に着替えられた後、監督の横にいるんです。「この作品が大好きだから、もっと見たいです」と。作品が好きで参加してくださるというのはとても嬉しかったですし、本当に感謝しきれない想いでした。
生徒の粒來ケン役の(田澤)秦粋は、撮影が終わっても食べ続けていました(笑)。フードスタイリストさんが作ってくださる給食が素晴らしく美味しいのもありますが、好き嫌いなく食べることが好きみたいで、本当に役柄に合っていると思いました。台本も付箋だらけで、メモもたくさん書いてある。勉強熱心で、役と真摯に向き合っている。それを見て、心動かされました。彼は14歳ですが、僕は当時そこまで考えられていなかったと思うんです。僕ももっと頑張らないといけないなと思いました。生徒たちからも、本当に数えきれないほど学ばせてもらいました。
●今回、シーズン3が始まると決まった時は、いかがでしたか?
実は台本をいただいて、しばらくは読めなかったんです。ほかの仕事や役柄が入っていない時に『おいしい給食』にしっかり向き合いたかったので。それくらいこの作品には深い思い入れがあります。台本を読み進めると、企画・脚本を担当されている永森裕二さんのペンが走っている。これは来たなと。一気に読み終わってしまいました(笑)。
この作品は、どの作品よりもハードなんです。精神的にも肉体的にも。シーズン3もやり切れるのかどうか、自分の中でそういう気持ちが逡巡してしまいました。
●「やり切れるのかどうか」とは、どういうことでしょうか?
『おいしい給食』は子どもたちと作って来た、そうして作っていく作品ですので、彼らにウソをつくことはしたくなかったんです。作品作りはビジネスと夢が混沌としているものではあるのですが、その中でも『おいしい給食』は夢を先行させなければならないと思っていて、理不尽なことや私利私欲なことがまかり通るのではなく、すべての部署が結託してお客様のために、作品の意義をどれだけ深められるかどうか純粋に目指していける作品なんです。
●なるほど、その目的を見失わないようにしなければいけなかった。
衣食住に入っていない我々役者という職業は、なくても世の中は成立します。だからこそ世の中の方たちに必要とされるために、作品の存在意義を我々で作り上げなくてはいけない。この『おいしい給食』においては、子どもたちが観ても目を背けないように、人生のキャリアがある大人たちが観ても教養や道徳、また1980年代のノスタルジックな雰囲気も感じていただける作品にしないといけない。すべての方たちが楽しめる、キング・オブ・ポップを目指すと監督とも話ながら作っているんです。
●長く甘利田先生を演じられていますが、改めて彼の魅力とは何でしょうか?
懸命に生きる人たちの、代弁者でもあるのかなと、そういう気はしていました。好きなものは好きと貫く、言うべきことは言う、負けた時は素直に認めて負けたと言う、誰に対しても敬意を払える、そんな人間でありたいじゃないですか。甘利田はそうすることが出来ない人たちの代弁者であるような気持ちもするんです。
●同調圧力をまったく気にしないというか、自分に正直な甘利田の姿に感動する声もあります。
彼のような人間が増えればいいなと思います。もちろん作品の舞台である、インターネットもSNSもそこまで普及していない昭和ならではの直接相手と顔を突き合わせて、話し合うことが当たり前だった時代だからこそ、甘利田や登場するキャラクターたちの人間力、人間臭さを感じられていると思います。そういう意味では、今の時代にちょっと寂しさも感じながら、甘利田を演じる瞬間もありました。
給食もみんなで「いただきます」「ごちそうさま」言う日本独特の文化でもあり、僕らは自然と言っていますが、「命を頂く」こと、「誰かが走り回って食材を集めてつくってくれた食」だということを考える。そういう意味が込められていることも、大事にしなくてはいけないと感じました。
●シリーズの人気は、市原さんはどう受け止めているのでしょうか?
僕はただひた向きに向き合っているだけなのですが、純粋にこういう作品が増えればいいなと。完全オリジナル作品だからこそ、現場で臨機応変に作っていくことができる、総合芸術の強みをフルに活かせる。現場で何かをたくさん生み出していけるこんな作品が増えればいいなという思いです。もしシーズン4があるのであれば、今まで以上に出し惜しみをせずに、くだらないと思われる事にも埋没し本気で命をかけ没頭したいです。
●今回函館に行けたので、こういう形の全国展開はありそうです(笑)。
僕も、どんどんいろいろな土地に行ったらどうなるのかなと思いました。そういう意味ではもう夢だけは膨らんでいて、甘利田が海外に行ったら楽しいかも知れない。初めての飛行機で機内食、面白そうですよね(笑)。
「おいしい給食 season3」(全10話)
10月よりテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビ、TVerほかにて順次放送スタート
(C) 2023「おいしい給食」製作委員会
ヘアメイク:大森裕行(ヴァニテ)
スタイリスト:小野和美