『CASSHERN』(04)など数々の作品を手掛けてきた紀里谷和明さんが監督・脚本を務め、監督自身“最後の作品”と公言している映画『世界の終わりから』から全国順次公開中です。
本作は“世界の終わり”とそれを救うため奔走する一人の女子高生の物語で、力強く生きる映画的なヒロインではなく、孤独と絶望に満ちた世界を必死に生き抜こうとする姿を独自の世界観で描いており、公開直後より大きな話題を集めています。
主人公のハナ役を演じるのは、映画『空白』『さがす』など話題作に出演、第77回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。今最も注目の俳優、伊東蒼さん。作品のこと、役柄のこと、さまざまうかがいました。
■公式サイト:https://sekainoowarikara-movie.jp [リンク]
●公開前の試写会の評判も高かった本作ですが、最初物語を読まれた時はどのような感想をお持ちになりましたか?
いつも頭の中で世界観を想像しながら台本を読むのですが、今回はどういう風になるのか想像ができなかったんです。なので、ハナとしてこの世界を体験したい、見てみたいと思ったのが最初の印象でした。
●ハナは世界を救うため奔走する女子高生でしたが、ハナとして物語の世界に入ってみていかがでしたか?
CGがある部分など、演じていてもわからないところがあったのですが、完成した作品を観て「こういうことだったのか」と納得したんです。彼女が、何が起こっているかわからないなりに何かを変えなくちゃと一生懸命になっているのと同じように、わたしも全部はわからなかったのですが、わからないなりに一生懸命頑張って答えを探して撮影していました。
●まさにハナとして映画の中で生きた、イメージですね。観る人の人生観によっても受け取るものが変わりそうですが、監督はどのような説明を?
監督の説明はわかりやすかったです。世界の終わりという、とても大きなテーマを扱った作品で、飛翔体が地球に落ちて来るとかザ・SFみたいなものをわたしは想像していたのですが、監督は「本当に身近な話なんです」とずっとおっしゃっていました。土台の物語は世界の終わりを止めるという大きなお話ですが、撮影をしていく中で、自分はひとりじゃないということ、そばにいる人に少し気持ちを向けるだけで、その人が救われたり、ちょっと安心させたりすることができるということを感じました。監督が言っていたそんなに大きな話しじゃないという意味は、そういうことなのかなと思いました。
●今回、ハナを演じる上で心がけたことは何でしょうか?
撮影している期間は本当にハナと同じ気持ちで自分の気持ちも動いていました。毎熊さんや朝比奈さんに会う時は心から安心していましたし、夏木さんとは安心感の中に尊敬からくる緊張感がありました。カメラが回ってない時もまわりのみなさんがコミュニケーションを取ってくださって、それが本当にエネルギーになりました。それがそのままお芝居に活かせと思います。
●特に今回の撮影を経て、吸収した、成長したなと思うことは何ですか?
衝撃的なシーンが多いので、目の前で起きていることに反応することが、この作品を通して少し上手になった気がします。自分の引き出しが増えたような感じです。
●20代、30代とこの先お芝居をしていく上で、目指している姿などはあるのでしょうか?
まだはっきりと先のことを考えられてはいないのですが、今はまわりのみなさんのお芝居を受けて、自分の中でいろいろな感情が生まれたりしていて、特に今回の作品では本当にもらってばっかりでした。これからはちょっとずつでも、自分から出していく、自分から相手にエネルギーを渡せるような、そういうお芝居ができる俳優になれたら素敵だなと思っています。
●今作では、名だたる先輩俳優の方たちが大勢出ていて、その点強く感じられたのかも知れませんね。
そうですね。目を合わせるだけでその物語の中に引き込まれていくような感覚になって、本当にみなさんすごいんです。かっこいいなと思います。どの先輩方にもあこがれるのですが、みなさん強くて優しい印象を受けました。カメラが回っていないところでわたしの体調を気にかけてくださったり、学校の話を聞いてくださったり、そういうひとつひとつの何気ない会話でも助けられ、支えていただている。そういうことがさりげなくできる大人になりたいなと思います。
■ストーリー
高校生のハナ(伊東蒼)は、事故で親を亡くし、学校でも居場所を見つけられず、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。
心当たりがなく混乱するハナだったが、その夜奇妙な夢を見る……。
(C) 2023 KIRIYA PICTURES
全国順次公開中