11月16日に衆議院が解散し、来月4日公示・16日投開票の日程で衆議院議員総選挙が行われることになりましたが、その影響で2007年と2010年に行われた参議院議員通常選挙の比例区に立候補した5名(民主党1名・自民党1名・みんなの党3名)の候補者が繰り上げ当選となる見込みです。今回紹介する2名の任期は、来月上旬に中央選挙管理委員会が繰り上げ当選の認定を行ってから来年の夏に実施が予定されている第23回参院選までの約8か月間となる予定。
民主党:樽井良和(新[衆1])
樽井良和氏(45)は1967年、岡山県備前市で生まれました。同志社大学経済学部在学中にゲームソフト販売店を起業し、大学中退後に議員秘書を経て2000年6月の第42回総選挙に岡山3区より民主党公認で出馬して落選。2003年11月の第43回総選挙で大阪16区へ選挙区を移して近畿ブロック比例で当選し、衆議院議員となりましたが2005年9月の第44回総選挙(いわゆる郵政選挙)で落選しました。その後、2007年の第21回参院選に比例区より出馬し、39,927票を獲得して民主党の候補者35名中26位(当選者20名)で落選。2011年4月には渋谷区長選に民主党と減税日本の推薦で出馬しましたが、現職に敗れました。
2007年の民主党比例名簿登載者は任期中に3名が死去し、当選者1名と繰り上げ予定だった1名が2009年の第45回総選挙に出馬・当選したので樽井氏が次点となっていましたが、今回の解散総選挙に伴い15位で当選した今野東議員が宮城2区より出馬し、12月4日の公示に伴い自動失職する見込みとなったので樽井氏の繰り上げ当選が内定しました。
「遊んだゲームは5000本以上」が売りで、自他共に認める“ゲーマー議員”の樽井氏は落選中も元衆議院議員としてエンターテイメント立国推進協議会を立ち上げ、2010年に大きな騒動となった東京都青少年健全育成条例が過剰な表現規制につながるとの立場より反対を表明すると共に同条例の成立後も表現の萎縮に関するアンケートを実施するなど、精力的に活動してきましたが、国政復帰後も“ゲーマー議員”の肩書きを生かした政治活動に注目が集まりそうです。
自民党:武見敬三(前2)
武見敬三氏(61)は1951年、厚生省(現・厚生労働省)と激しく対立し“ケンカ太郎”の異名を取ったことで知られる元日本医師会会長・武見太郎(1904 – 1983)氏の長男として東京都で生まれました。慶応義塾大学法学部卒業後、東海大学教授やテレビ朝日『モーニングショー』『CNNデイブレイク』などの司会を務め、1995年の第17回参院選に自民党公認で比例区より日本医師会推薦候補として出馬し初当選。2001年の第19回参院選でも再選し、2006年に発足した安倍内閣では厚生労働副大臣を務めました。しかし、父親と異なり医師でない武見氏を推薦候補とすることに対して医師会内部に強い反発が続いた結果、2007年の第21回参院選では医師出身の国民新党・自見庄三郎議員との間で組織票が割れて前回より4万票近く得票を減らし、35名中15位(当選者14名)で次点となり落選。2007年より渡米してハーバード大学医療財政研究所の客員研究員を務めた後、2009年に帰国し大学教授に復帰していました。
武見氏の落選中、トップ当選した舛添要一議員(現・新党改革代表)の東京都知事選出馬や上位当選者である丸山和也議員の大阪府知事選出馬が取り沙汰され、繰り上げ当選の可能性が何度もうわさにのぼっていましたが、いずれも見送られて今回ようやく、10位で当選した義家弘介議員が神奈川16区より総選挙に出馬し、12月4日の公示に伴い自動失職する見込みとなったので武見氏の返り咲きが内定しました。
日本医師会は野田首相が民主党内の反対を押し切っての参加に前のめりな環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が「国民皆保険制度の破壊に直結する」として強硬に反対していますが、自民党の安倍総裁も復帰して早々に日本商工会議所の会頭に対しTPP参加に前向きな態度を表明したと一部で報道されており、自民党内でも参加の是非を巡って意見が割れる中で国政に復帰する武見氏が任期中、難しいかじ取りを迫られる場面もありそうです。
(後編につづく)
画像:繰り上げ当選が内定した樽井良和元衆議院議員のブログ