ヤクザの年末年始はこうなった!コロナ禍で様変わりした迎春シノギ最前線

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

暴力団対策法ができる以前、季節ごとのイベントに使うものというのは暴力団にとってシノギ(活動資金を獲得する仕事)の商品でした。

例えば、しめ縄や門松などの正月飾り。自分たちのシマ(縄張り)にあるスナックや食堂などの飲食店や一般家庭に付き合いで購入してもらうわけです。

驚くべきところでは、ド派手なクリスマスツリーやクリスマスリースなどもそうだったといいます。ラウンジやレストランでは、揉めたくないという気持ちで買ってしまうわけですね。

ヤクザは、神棚を事務所に飾り、天照皇大神などの神様を崇め奉ります。ですから、縁起物を扱うことも多いんですね。神社の社務所で巫女さんが売っている破魔矢(はまや)などは違いますが、新宿花園神社の酉の市などの祭りごとがあると、小判、おかめの面、俵、稲穂、宝箱、お札、鯛、招き猫、その年に起こった流行を反映した飾りなど、いろいろな縁起物を売って生計を立て、資金を獲得しているわけです。

熊手などは縁起物の最たるもので、獲物を鷲がわしづかみにしている爪のカタチに似ているため、“福徳をわしづかみ”という意味が込められた縁起担ぎの商品。それは、テキヤ系の組織(神農系)が多いからだといえます。

今回は、コロナ禍で様変わりした年末年始のヤクザのシノギについて、実話系雑誌でライターをされている田中さん(仮名/46歳)にお話を伺いました。

コロナはテキ屋に「死ね」と言っているようなもの

丸野(以下、丸)「コロナショックのせいで、神社のお祭りなどが中止になっていますが……」

田中さん「そうですね。コロナのせいでテキ屋はまったく仕事になりませんし、上納金、生活費すら稼ぐことができなくなりました。コロナ以前であれば、祭りを仕切っているのはテキ屋でしたから。初詣などの祭りの境内のショバ割り(出店区画を決めること)は昔からテキ屋が行っていました。同じ商品の店を入り口と出口付近に分けたり、老舗は客通りが多いところに出店させたり、いろいろとやっていました」

丸「今年の初詣は、本当に淋しいものでした」

田中さん「コロナはこういった神農に生きる者たちに“死ね”と言っているようなものですね

正月飾りを売りつけて逮捕される時代

丸「年末から年始にかけて、組員はどのようなことでしのいでいたのですか?」

田中さん「稼ぎ時の10月には、東京渋谷のストリップ劇場で“みかじめ料”の代わりとして、3万円で買いつけた門松を8万円で売りつけた稲川会系の組員3人が逮捕。でも、コロナ禍があってから、酉の市で売るはずだった熊手などをネット販売しているヤクザもいますよ。やはり正月用の飾りというのは、ヤクザ利権。ずっと作り続けてきた商品ですから、品物もいい。酉の市に行けなかった参拝客には人気です」

丸「警察が暴力団排除条例※を適用していますが、影響はありますか?
※暴力団排除条例(福岡・東京と沖縄に施行されて全国各地で整備された、暴力団の活動を鈍化させるための条例。さらに東京では改正暴排条例が施行された)

田中さん「締めつけが厳しくなっていますね。年末年始の露店と新年の縁起物の販売にも、最近ではこういう経済活動を阻止するために、かなり強固な姿勢でいます。正月用の商品の販売は、毎年11月ごろに組側から縄張りのバーやクラブ、居酒屋などの飲食店へ購入の打診を開始。稲川会系の組員逮捕についても警察が準備して手を打ったという感じですね。渋谷やススキノでは、《暴排ローラー作戦》で正月飾りの売りつけに応じることのないようにイベントを開催しました」

みかじめ料の徴収は半グレ任せ

丸「みかじめ料の徴収は現在では行われていないのですか?」

田中さん「用心棒代の徴収は実質おこなわれています。やはりバーやクラブ、ラウンジは酔客が暴れたりするし、一部の金融会社や不動産会社は暴力団と懇意にしていますし。実際には、ヤクザは指示を行うだけで、小遣いを渡したケツ持ちをしている半グレの若者を出向かせます。それに、みかじめ料代わりに、店内やオフィス内の花や観葉植物、リースカーペット、調度品、絵画、おしぼり、業務用洗剤なんかもレンタルしたり、販売したりしますよ」

丸「でも、去年と今年はコロナショックで、どの業態も大変だと思うんですが……」

田中さん「断られるみたいですね。緊急事態宣言下では飲食店なんかは時短営業で火の車ですから」

ヤクザの政治資金パーティーである「事始め」

丸「他にはシノギの手口ってありますか?」

田中さん「各組織の本体がやるのは、12月13日に行う恒例行事の“事始め”ですね

丸「僕は京都祇園のお茶屋さんにお世話になっているんですが、芸妓や舞妓さんが“来年もよろしゅうお願いしますぅ~”と執り行う行事ですよね?

田中さん「そうです。正月準備の行事ですね。年始のヤクザはいろいろと忙しく繁盛期になるので、挨拶回りを先にやろうという行事ですね。挨拶に回るということは、お世話になった分の金を包んで持っていくということです

丸「政治家の資金パーティー的な……

田中さん「そうです、年末に組の本体はそうやって金を集めるわけです。各枝葉の組の人間がやってきますから、かなりの金額になるでしょう。まぁ暴排条例で5人以上の組員が集まることができないので、今では静かなものです。一昔前は、ケツ持ちをしている会社役員、政治家、芸能人なんかも挨拶にきていましたが、コンプライアンスの問題で今では金を送ったり、送られたり、顔を出さないようにしています

“偽装結婚”が古来からのヤクザのシノギ

田中さん「昔からこの商売はあるんですが、外国人女性と日本人の“偽装結婚”はなくなりません。つい数日前も稲川会系の元暴力団組長ら3人がその罪状で逮捕されました。外国人パブや外国人クラブで働かせるために、永住者資格がもらえる“結婚ビザ”目的で引き合わせるわけです

田中さんの話では、“偽装結婚”は組織的に行われているようで、だいたい外国人女性は200万円程度バンス(前借り)するので、売春を強制されたりするようです。

様々な知恵を絞りだし、現代ヤクザはなんとか生き残ろうとコロナ禍でもがいているといいます。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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