調理時間
炊く前5分、炊けたら1分
材料 2人分
米 1合
牛こまぎれ肉 100g
粒マスタード スプーンこんもり1杯
おしょうゆ スプーンなみなみ2杯
塩
お砂糖
作り方
【1】米をとぐ。お塩をふたつまみ、おまじない程度入れてください。
【2】
しょうゆをまわしかけたお米の上に牛細切れ肉をひろげてふたをして炊く。甘いお味が好きな方はここでお砂糖をお好みで足します(わたしは酒飲みなので足しません)。
【3】
炊けたら、粒マスタードを投入し、しゃもじでお肉を切りながら、混ぜて完成。
あれば彩りにネギなどをのせてもいいです。
【ワンポイント】混ぜたら30分ほど置いて味をなじませるとさらにおいしいです。
●牛肉と粒マスタードの炊き込みごはんのお話
作家・宇野千代さんが書いたレシピの本、とても面白いので、
繰り返し繰り返し読んでいます。
登場するのは、彼女の人生街道のあるシーンに出てきた味ばかり。
婚家を出奔する前の想い出の味、岩国のお祭りすし。
文壇で大スキャンダルとなった画家・東郷青児、作家・北原武夫との
暮らしぶりなんかも、「もう時効」とばかりにこだわりなく紹介しながら、
そのときどきに開発した味を紹介しています。
装丁デザインも謎かわいくてすてきな作り。
いくつかは文庫で版を重ねていますので、今も入手しやすいのがいいですね。
そんな宇野千代さんのレシピ本の一冊、
「わたしの作ったお惣菜」(集英社文庫)は
齢90歳になんなんとするかわいらしい「千代おばあちゃん」が作る
楽しいお料理の本。
そこに出てくるすごいレシピといえば「極道すきやき」
まずお料理の説明からふるっています。
「第一に変わっているのは、普通のすき焼きのように、
豆腐、しらたき、葱などの具を一切使わないことです。
次に、このすきやきに使う肉は、百グラム三千円はする和牛」
というものだそうです。
ほうほう、「極道すきやき」すごそうだなあ。どうやって作るの?
著書によれば、
・お肉にブランデー(ナポレオン級)をまわしかけ、
・そのあと割りしたを加えて、
・溶いた卵黄をその上にかけてしばらく置く。
味がなじんだらテフロン加工のフライパンでゆっくり焼いていく。
とのこと。
締めくくりには、
「でも、みなさんがお作りになるときは、
百グラム、千円くらいの牛肉でも、結構、おいしいものですよ。」
とさらりと言ってのけるお千代さんに完全にやられました。
実際に作らなくても楽しめるのがよいレシピ本なのだなぁ。
宇野千代さんの本で、レシピ執筆の王道かくやと目からうろこの思いでした。
極道すきやきは、いつか作ろうと思っている「夢」のひとつなのですけれど、
まあ普通に、100グラム150円のオーストラリア産の赤身の細切れ肉でも
少し贅沢な炊き込みごはんができますよ、というのが
今回の「牛肉と粒マスタードの炊き込みごはん」です。
お肉は普通に焼いてももちろんおいしいのですけれど、
そこは赤身の細切れ肉。焼けばしょぼしょぼに縮んで寂しい見た目になるし、
いまいちおなかもふくれないような。
赤身の細切れ肉の持ち味を最大限に生かすのは、
「出汁にする」ことだと思います。
お肉のおいしさを、おつゆ全体に広げてしまえば、
ほかの具にまでお肉のオーラが乗り移って最高です。
炊き込みごはんで、お米にお肉の味を乗り移らせてしまいましょう。
炊きあがったら粒マスタードを投入。
粒マスタードの程よい酸味でお肉のしつこさも和らぎます、
一口食べればどこか異国のおしゃれスパイシーな味。
つまり、おしゃれスパイです(なんだそれ)。
調理道具は、お鍋一つとおしゃもじとスプーン一つあればよし。
包丁いらずで、かんたんです。
この炊き込みごはん、コツは一つだけ。
お肉は冷めるときにじゅわーっと出汁がでます(浸透圧ってやつですね)。
少しさましてからいただくともっともっとおいしくなるのです。
お肉とマスタードの味がなじむまで、30分ほど置くことです。
じっと我慢の子になっていてくださいね。
●ごちそうさまでした。