便所カメラマンはいろいろと苦労するが、その最大の苦労はピントが合わないことである。
白い陶器や白く光るタイル、反射する鉄で出来上がっているトイレで、人間を入れずに撮影をするとおおかたピントが合わない。
しかし、便所カメラマンが撮りたい思う便所は、カラフルでオシャレなピントが合いやすいトイレのほうではない。
まったくピントが合わない、白く光る便所に貼られたプレートなのだ。
ラミネートされた光を反射しまくる貼り紙がベタベタ貼ってある、便所なのである。
【これは完全にパワースポットですね】
神秘を感じるパワースポット。
本当にアナタは、神秘を感じているだろうか。
神秘っぽい雰囲気にのまれてはいないか、パワーっぽい雰囲気に流されてはいないか。
そんな目に見えない雰囲気なるものに騙されてはいけない。
私が目に見えるわかりやすいパワーをいちいち解説して差し上げよう。
完全に見えるパワースポットを。
女子トイレ
小奇麗
男子トイレ
小汚い
手書き
多目的に使えるからって犬、ダメ。
【とにかくパワーが強いのです】
お願いするとか、そういったレベルではないのだ。
このゴミ入れにタバコの吸い殻を捨てるってことはどうゆうことか、わかるよね?
燃えるよね?よく燃えるに決まってるよね?常識で考えてもわかるよね、あ?
というレベルに達している。
その怒り、いかばかりかとお察しするべきである、利用者ならば。
緊急時に押すことをお知らせする、薄さ。
に、比べて、緊急時以外に押すなとお願いする、濃さ。
と、やってはいけない貼り紙の数のパワー。
どっちが目立っとんねん。
管理者がついつい注意を促すほうを目立たせたくなる、そんな利用者の在りようということではなかろうか。
便所の教訓、貼り紙の枚数と濃さを見て我がふりを直せ。
みなとタワーのパワーが炸裂。
パワーが強すぎて、
きっと開かない。
【アナタのパワーが強ければ大丈夫】
イメージだがアナタのパワーが強ければ、取れそう。
頑張れば洗面と石鹸液と根こそぎ壁から剥がせるかもしれないので、己のパワーに自信がある人はトライしてみてはいかがだろうか。
ないとは思うがもし取れたら、管理事務所に『ちょっとした出来心で引っ張ってみたら、見事に取れちゃって』と懺悔しよう。
どんなにママパワーが強くても、赤ちゃんに対して完全に背を向けるのはママパワーの過信であると肝に銘じよ。
しかしまァ現物を忠実にイラストに出来るもんだな。
くぼみの深さも、溝までも。
ん?
安全性は大丈夫なのか。
運というパワーが必要な気がしてならないが。
予備トイレットペーパーが危うい場所に置かれてあるので注意しよう。
スマホ画面など見ながら予備に手を伸ばそうものなら、つかみ損ねるばかりか洗いたての床に落ちて用を成さなくなる可能性もある。
この個室はすでに予備を1個セットしなくてはならない状況である。
チャンスは3回。
通常ならば安全策で左手で手すりの上の1個を狙うが、私は曲がりなりにも便所ライターなので攻めの予備に走ろうと思う。
中年ともなればそんじょそこらの生娘と違って政治家の汚職も警察の不祥事もネットニュースでた~くさんクリックしてきているので『私ならうまくやれる』という根拠のない自信に満ち満ちている。
便器に座った姿勢で、やや両利きであるが不得手なほうの左手で、若干高いほうの予備を、上半身90度ひねりで後ろ手につかむことにしよう。
これはかなりの攻めであるが、私の便所でのパワーはこの世の誰よりも強いと自負しているので、いけると確信する。
INAXほどの絵心はないが、イメトレを描こう。
必ずや、いく。
※全画像:筆者および助手ハチ撮影