「ハチ次からでええからさ、1つの箇所を撮る時に3アングル3枚でキめて」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
「多すぎて選別にまで時間がかかってしまうねん。編集して送ってくれるねやったらご自分の納得する枚数でよろしいですけども」
『編集は記事書いてる人がしないと』
「だったらやっぱ3枚でキめて」
『じゃあもっと1枚1枚に時間かけないとだな・・・』
「ハチはたくさん撮ってもかまへんねで。こっちに送ってくる時に珠玉の3枚にしてくれたら。たくさん撮って見比べることで見る目が出来るしね。ハチはまだ見比べる目が出来てないからあの枚数になんねん」
『それが難しい』
「とにかく次から1箇所3アングル3枚ね」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
620枚強を222枚に選別し、それを編集加工もしてナンバリングしながら記事を同時に書く。書かない人にはサッパリわからないだろうが、書く人にはハッキリと気が遠くなる作業である。便所魂を8年も磨いているからカンでやれるが、新人の便所ライターではこうはいくまい。便所ライターがいるかどうかは知らんが。
【姉妹寺もフムフムが待っていた】
トイレには何かしらのフムフムが待っている。
なるほどと思うようなフムフムから答えのないフムフムまで。
フムフムとは納得しているフムフムとは違う。
何かが異なることへの気付きのフムフムである。
便器も浮く、オストメイト用シャワー設備も浮く、
が、ベビーチェアは浮かない。
ベビーチェアに浮いている商品がないわけではない。
地面との接地面がなく壁の中程に浮いているように取り付けるタイプのベビーチェアも商品としてはあるのだが、地面から生えているタイプを選んだというところにフムフムである。
子供用トイレは入ってすぐ小便器、入ってすぐ個室。
限界ギリギリまで我慢して遊んでいる子供たち。
個室の中のカラーが赤なので女の子用と思いきや、男の子用である。
ドアが青、中は赤。
色によるイメージの固定化をうまく中和させた色使い。
当然女の子用の個室は逆パターンの色使い。
独立した子供用のトイレなのに禁煙と書かれている。
便器も子供用のサイズではないし、幼児よりは大きいキッズが対象であるようだ。
便器サイズから大人も入ることを想定しているのだろう。
フムフム。
洗面にも、いろんなタイプがあるもんだ。
どこか懐かしかったり、
スタイリッシュであったり、
おもしろかったり、
フムフム。
和式便所の手すりが少々遠いような気がする。
これはよくあるもう一歩前へという貼り紙をするより効果的に一歩前に来させるための手すりだろうか。
フムフム、2歩行きそうだな。
早押しボタンのような形状の洗浄ボタンだとこの位置とこの姿勢からだと押しにくい気がする。
トイレがちょっとした考えるチカラを求めているのかもしれないな。
【姉妹寺も例外なく謎スペースは存在する】
かなり広めだが、物は端にまとめる。
鍵穴はない。
ここも広めで、鍵穴はない。
謎スペースが広めだと鍵穴はないのか、フムフム。
鏡の前に謎スペースがあるパターンは多い。
荷物を置くためのスペースと考えて置いてはみるが、荷物を持たずに鏡の前に立ってもすぐに荷物を持って鏡の前に立つ。
なぜだろう、理由はわからないが置いた荷物はすぐに持つ。
鏡前の謎スペースは幅が狭めである。
姿見の前の、ほんのちょっとの謎スペースも、バッグを置くためのスペースかもしれない。
しかし置いても、すぐにバッグは持つと思うが。
【ちょっと開けてみようか】
「その謎スペースの左側の板さ、開けてみて」
『えーーーーーーーーーーっ?!』
「ソレ目隠しやろ?外れるわ、ちょっと外して中も見えるカンジで撮って」
『壊れるんじゃないの?』
「マグネットでくっついてるとみた。強めに引いてみて」
『壊れたらどうするんだよ』
掃除の人はどうしてんだよ。
掃除する人がいるから、白い便器が白いタイルが白い棚が白いんだよ。
タンクの横を拭く時はどうしてんだよ、ココが外れないと拭けないんだよ。
日本人が拭き掃除をするのに、このタンクは左の側面は拭かないとは考えにくいんだよ。
ということは、この板は外れるんだよ。
『あ・・・外れた』
フムフム、マグネット。
このホースを隠すためにわざわざこの板をマグネットで取り付け、掃除のために取り外せるようにしてあるのに、掃除は行き届いていないようだ。
隠すとそこは手薄になる、フムフム。
日本人は美しいかそうでないかにとてもこだわる。
カタチの悪い野菜や仕立ての悪い服は価値が下がる。
大きさを揃え、色を揃え、縫い目を揃えるのは、美しいからなのだ。
栄養価が一緒でもカタチの悪い野菜は高値にならないので、生産者の手によって事前に選別されて市場には出ない。
使っている生地や糸が一緒でも検品で縫製にアラが見つかれば、事前に選別されて市場には出ない。
しかしそれらがB級品との冠を付けて、美しくはないがモノは確かと市場に出れば、美しいモノと同じように売れる。
もしかすると美しいモノ以上に売れる。
見た目の美しさではない価値に気付くフムフム。
その価値とやらを見極める目は、トイレで培えるかもしれない。
※全画像:筆者および助手ハチ撮影