女性の心に寄り添う!セラピスト「ハルさん」の真実:【気になる女性インタビュー・1】

  by いりゆみ  Tags :  

「電源が切られたテレビ。その真っ暗な画面に自分の顔が映っている。確かに、これは私の顔だ。でも、何かが違う。あれ、おかしい!その瞬間、何者かが彼女を支配し、その口からは彼女の意図しない言葉が発せられた・・・」

この驚くべき体験をした女性、武内晴代さんは、浦安市在住のセラピストである。多感な学生時代、いく体もの霊にその代弁者として魅入られた彼女は、やがて母となり、セラピストとなった。今からおよそ11年前、彼女はディズニーリゾートにぎわうこの地の静かな住宅街に女性専用のセラピールームを開業し、以来、多様な価値観の中で悩む女性たちを「本来あるべき幸せな姿」へと導いている。なぜ彼女は、「人の心の深い場所」を観じ、癒すことができるのか。彼女の温かい人柄と、霊をも惹きつける鋭い感受性に、その答えの一端を垣間見た気がした。

「ちょっと待ってくださいね、今温かいお茶を入れますので」

一月の冷気をまとって訪問した私に、晴代さんは鉄瓶に入ったお茶をすすめてくれた。

「鉄瓶で入れると、女性に必要な鉄分がとれるんですよね」

柔和な笑顔が素敵な女性である。

セラピールームの照明は低めに落とされ、その静謐な空間にはやさしい音楽が流れている。この部屋に、一人では抱えきれない思いを抱えた女性が訪れる。女性の「人生」という大きな課題に向き合う作業は、一人の主婦でもある晴代さんにとって重圧ではないのか。この仕事についた経緯を伺った。

「お母さん」だけでは満たされない。女性としての不安と転機

「私は、幼稚園の頃から、お母さんになりたい、しかなかったんですよ」

意外な答えが返ってくる。

「私は20歳で短大を卒業して、その4月には結婚しました。22歳で1人目を授かりましたので、お母さんになる夢は大人になってすぐに叶いました。26歳で2人目を生んで、私はお母さんを満喫していたんです」

しかし晴代さんは次第に不安に襲われるようになる。子どもたちが巣立ったら、何をすればいいのだろうか。「母になる」だけでは埋まらない何かを心に感じ始める。

「多分、同級生はバリバリ働いている時期ですよね、25・6歳って。でも私はそのころ、社会との関わりがまったくありませんでした。外に出るといえば幼稚園までの往復と買い物くらいで」

そんなある日、彼女の姉が気功の先生を紹介してくれた。もともと晴代さんは手から出るエネルギーのような「何か」を感じており、知人の肩の凝りを緩めることもあった。

「晴代ちゃん、良くなったよ~なんて、よく言われていました」

晴代さんが訪ねたその先生は、気功とともに整体やカウンセリングも行う心理療法士であった。彼はカウンセリングスクールを開講しており、晴代さんは彼の元に通い始める。懸命に勉強する彼女に、あるとき、講師である彼は言う。

「あなたは人の話を聴ける人だよ。今は心を病んだ人がたくさんいるから、カウンセラーになったほうがいい。ハルちゃん、出来るよ!」

その言葉は晴代さんに力を与えた。話すことに苦手意識を持っていた彼女に、彼は「人の話を聴く力」を見出したのだ。彼女はカウンセリングの仕事をしていく決意をあらたにし、スクールを修了するとすぐにセラピールームを開業する。

しかし、「開業」は大きな選択だ。迷いはなかったのだろうか。

「私は経営というものを全く知らなかったのですが、知らないからこそ、何も悩まずに『私にもできる』なんて思えたのかもしれないですね」
若さと、「知らないこと」の強み、そして天性の素直さが彼女を前に進ませたのだ。

必要なのは「肩書き」ではない。開業後の悩みと気づき

未知の仕事を前に、誰もが壁に突き当たる。彼女も例外ではなかったという。

「やってみてからの迷いはありました。やる、やらないという迷いではなくて、私みたいな人が人のカウンセリングをしていいのかな、という迷いです」

彼女の元には人がうらやむほどのキャリアをもった女性も訪れる。私も肩書がほしい。自信をもって公言できる何かが欲しい。そう考えた彼女は放送大学で心理学を学ぶという選択をする。

「私は公の資格をもっていなかったので、心理士の資格を目指しました。私はこれをもっています、という自信をつけたかったのだと思います」

しかし晴代さんは次第に疑問を感じはじめる。この勉強は何のためにあるのだろうか。知識の集積が、カウンセリングという仕事に役に立つのだろうか。

「単位をとるために、とにかく知識を詰め込んでいました。フロイトの歴史とかユングの思想とか。もちろん、これらは勉強にはなります。でも、カウンセリングの現場で役に立つのかといったら、またちょっと違うんですよね」

無理やり詰め込んだ知識は、いつか記憶から離れていく。

「自信がないから資格が欲しかっただけなのです。私は知識からではなく、臨床を学ぶところからこのお仕事を始めましたので、結局、経験したことや肌感覚で得たものが一番大事なんじゃないかな、って」

晴代さんは大学を3年で辞めた。

思い込みやとらわれに苦しむ女性。トラウマを抱える女性。自己を受容できずに悩む女性。自分らしさを見失ってしまった女性。

彼女の元にはさまざまな悩みを抱えた女性が訪れる。

晴代さんは彼女たちを本来の姿、幸せな人生に導くため、直感で「これは良い」と思うものをセラピーに取り入れ、感性に合うものだけを残している。

その結果、花のもつエネルギーを精神に取り入れる「バッチフラワーレメディ」、姓名などから導き出される数字の力で自身や相手を理解する「数秘術」、人の潜在意識に直接働きかける「ヒプノセラピー」などが残った。中でも彼女がカウンセリングの中心に据えているのが「ヒプノセラピー」だ。

「ハルさんといえばヒプノセラピー。そういう位置づけです」

女性の潜在意識に働きかける。晴代さんのヒプノセラピー

ヒプノセラピーとはどのようなものなのだろうか。

人の意識には普段から自覚している「顕在意識」と、無自覚でありながら人の意識の大半を占めている「潜在意識」がある。

この、自覚していない潜在意識こそが、人の考え方や行動に大きな影響をおよぼす。

ヒプノセラピーは、クライアントを催眠状態に導くことで潜在意識の扉を開き、そこにプラスのメッセージを語りかけ、気づきをもたらす。

晴代さんはまず彼女たちの悩みをじっくりと聞き、そこで得た「その人にとって必要なメッセージ」を、催眠状態にある彼女たちの潜在意識に働きかけるのだ。

この行為は常人ではとても真似のできないスピリチュアルな技法に思える。なぜ晴代さんにはそのようなことができるのだろうか。

「催眠療法と聞くと、何か特別なこと、スピリチュアルなことだと思っている人が多いですよね。催眠術のイメージと重なってしまう人もいますし。でもこの療法自体は誰にでもできるんですよ」

晴代さんによると、誘導の方法や言葉を学べば、人を催眠状態に導くことは誰にでも可能だという。実際、米国では催眠療法が医療の現場で治療として使われている。催眠療法は必ずしもスピリチュアルなものではないのだ。

しかし、その催眠状態を使ってどのような施術をするのかは、それぞれのセラピストによるところが大きいという。

前世療法など、スピリチュアルに思える施術をする人もいるが、晴代さんのセラピーはあくまで女性を「その人が望む幸せ」に導くことを主としているという。

「かつては前世療法も行っていたのですが、前世に関してははっきりと見える方と、そうでない方がいるんですよね。

もともと人の顔や過去に観た情景を写真のようにはっきりとしたビジョンで呼び起こすことができる人は、前世もまるで映像を見ているかのように体験することができるのですが、身体感覚の中で音や匂い、肌感覚を優位としている人は、前世をビジョンとしてはっきりと見ることが難しい場合もあります。

ですから、前世を見ることを目的としていらっしゃる方には、はっきりと見ることができない可能性もある、ということを、事前にお話しています」

クライアントの中にはアトラクション感覚で前世療法を望む人もおり、その期待が大きければ大きいほど鮮やかなビジョンとしての前世は遠ざかってしまうという。

しかし晴代さんは「前世を見る」ことが必ずしも大切なことではないと考えている。催眠状態で理性を取り払うことの気持ちよさを体験すること、そのリラックスした状態でプラスの暗示を受けることが、その人の人生にとって意味をもつのだ。

「クライアントさんがリラックス状態に入ったら、私はその方に合った、より効果的な施術をします。

たとえば過去の出来事に傷ついている方の場合には、催眠状態を使ってその方の過去に遡り、その時の感情に向き合っていくこともあります。

ただ、過去の出来事に対する恐怖感などが強く、今の心身状態では難しいと判断した場合には、過去に戻ることはしません。リラックスした状態を味わっていただいたり、自己受容感や安心感、日々の幸せや穏やかさを感じていただけるような誘導をしていきます。

そして、過去や現在、望んでいる未来のその方へとプラスのメッセージを語りかけていきます。

そのメッセージは、事前のカウンセリングで伺ったご本人の言葉でもあるし、私自身がその時に自然と感じるメッセージでもあります」

実はこの施術こそが、晴代さんの本領だ。
彼女は女性がリラックスした状態に入ると、自らもトランス状態に入るのだという。

何者かが体に入ってくる。晴代さんが体験したこと

「私はセラピストの講師もしているのですが、生徒さんに、『ハルさんの真似はできません』って言われることもあります」

そう微笑む晴代さん。クライアントが催眠状態に入ると、彼女はあたかも何かが下りてきたような感覚に包まれ、その口からは彼女自身の言葉を超えたメッセージが発せられるという。

「その時の感覚としては、すごく相手を愛おしく思うし、大切に思うし、幸せになってもらいたいと心から願う気持ちです。

こういうことを言っていいのかはわからないのですが、神様からもらった言葉をその方に伝えている、という感覚です」

晴代さんは自身の口から出た言葉に感心することもあるというのだ。催眠状態に誘導すること、そして催眠状態そのものはスピリチュアルであるとは言い切れないと彼女はいう。

しかし、晴代さんのこの状態はスピリチュアルそのものなのではないだろうか。

「私、若いころ、そうですね、高校とか短大生の頃、イタコ体質で大変だった時期があるんですよ」

思わず息をのむ。

「私はもともと霊感が強くて、霊がひっきりなしに入ってくるときがあったんです。たとえば家に1人でいて、消えたテレビの画面に映った自分の顔を見ていると、姿かたちは自分なのですが、なんだかそれが違う人のように見えてきて、『あれ』と思った瞬間にその違う人に切り替わってしまうのです。私もはじめはなにか精神的な病気かと思っていました」

驚くべきことに、その「何者か」が入ると、自分自身が意図しない言葉が口をついて出るという。晴代さんは悲しみに襲われ、鬱のような状態になってしまう。

「でもあるとき、各地で公演を行うようなスピリチュアルな女性の方に、『あなた、霊がついているよ』と言われて。私はそのとき、『そうか、これは私自身の病気ではなくて、霊がもたらす現象だったんだ』ってほっとしました。」

その時の晴代さんには、まるで順番待ちをするかのごとく、霊が列をなしている状態であったという。

あるとき、1人で寝ている晴代さんに霊が入り込んだ。突然起きだした晴代さんは、「白い飯をくれ」と叫ぶ。

「そのころは家族も『これは霊のせいなのだ』と理解してくれていましたので、母がその霊の相手をしてくれました。

母が茶碗にごはんを盛って私に差し出して、私はそれを食べます。すると霊も落ち着いてきたようで、そこで母が『あなたはもう亡くなっているのよ』という具合で諭していくんです」

それに合わせて晴代さんも自分自身を取り戻していき、最後は母娘二人で、祈るような形でその霊をいるべき場所へと戻すという。

「体感覚としては、左巻きのらせん状にして、上へ還していく感じです」

この話を聴いて、彼女が何かに導かれるようにこの仕事をはじめたその所以を垣間見た気がした。彼女には「人の心」を受け止める力、その心をあるべき場所に導く力が備わっているのではないだろうか。

その女性にとっての世界を大切にする。晴代さんのセラピー

そんな彼女が、セラピーを通じて大切にしていることがある。それはクライアント自身の世界観を大事にする、ということである。晴代さんはクライアントの主観を、決して否定することはない。

「例えば先ほどの前世に関しても、そういったものがあると信じる人もいるし、信じない人もいますよね。私にも主観があって、信じているものと、そうでないものがあります。

でもそれを彼女たちに押しつけたりはしません。その人がその人なりの幸せな毎日を送ることができればそれでいいと思うので」

晴代さんが女性を導く場所は、彼女自身に基づく世界ではない。あくまでクライアント自身が大切にしている世界なのである。

「私」は大丈夫。自分自身を承認することの大切さ

主観というオリジナルの世界で生きている私たちは、その中で幸せを感じられないとき、心が揺らぎ、苦しんでしまう。

では今、女性たちはどのようなことに生きづらさを抱えているのだろうか。

この問いに、女性たちの心を見つめ続けてきた晴代さんは、

「トラウマを抱えていたり、家庭の問題で悩んでいたり、こちらにいらっしゃる女性の悩みは本当にさまざまなのですが」と前置きしたうえで、迷わずこう答えた。

「自己肯定感が低く、承認欲求が満たされないとき、多くの女性は苦しんでいます」

それは、人に認められたい、認めてもらえなければ自分には価値がないと考えてしまうということなのだろうか。

「たとえば、主婦は、毎日家族のために多くの時間を費やしていますよね。でもそれを認めてくれ、ほめてくれる人がいない。お母さんは家事をやって当たり前、という家庭の空気の中で、孤独感を募らせることも多いのです」

家事は終わりのない労働だ。しかしそれをしたからといって誰もほめてはくれない。ほめてもらおうと思ってしていることではないが、虚しさがないといえばうそになる。一見幸せそうに見える家庭の中で、どこか満たされない思いを抱える女性たちの姿が浮かび上がる。

「たとえば、資格を次々と取る方の中には、その承認欲求に突き動かされている場合があるように思います。

資格は公に認められているものですので、それをもっていれば他者に認められるのではないかという気持ちになりますし、だからこそ、資格を求めてしまうのだと思います」

しかし、その隠れた動機に突き動かされて資格をとったときには、心の穴は埋まらない。

「だから、自分で自分を認める、それができればその人は幸せなのだと思います」

なるほど、承認欲求の「承認」は、他者に求めるものではなく、自分自身の中に見いだせばよいのだ。それでも人はどうしても他者との比較の中に身をおき、その優劣で自分の立ち位置を推し量ってしまう。

「自分を認められないから、劣等感にさいなまれてしまうんです。私OK。それでいいのです。

よく女性は何かやりたいことがあっても人の評価を気にしてしまいます。ここまでやらないと自立はできない、あの『すごい人』はこのくらいできる、そこに到達していない私はまだできない、というふうに、自分なりの基準とか、夢に向かうためのルールのようなものを設定してしまうんですよね。

でも実はそんなルールはもともとなくて、多分自分がやりたいなと思った時がスタートのときなのだと思います」

そこに他者の承認は必要ない。私は大丈夫、私OK。その気持ちを持つことができればよいのだ。

そしてその承認は、ポジティブな感情にのみ許されているものではない。ネガティブな気持ちもまた、私たちは認めてあげていいのだと晴代さんは言う。

「よく『怒っちゃダメ、不安もだめ、ニコニコ笑ってプラスに考えなくちゃ』と多くの人は思っていますよね。

ネガティブな感情に向き合うにはエネルギーがいりますし、そういった感情を持つことは、人として良くないと思われているところがあります。

でも、ネガティブな感情を持つこともまた、人間として自然なことです。怒りや悲しみ、不安などは誰しもが持つことのある感情で、それらを否定し、抑圧し、なかったことにしてしまうのは、自分に優しくないなと思います」

私たちの内からおこるネガティブな感情を否定することは、自己を否定することにもつながるのだ。

「たとえば、小さな子どもが駄々をこねて泣いているとき、私たち大人はつい『泣いちゃダメ』と叱ってしまいますよね。

しかしその行為は、子どもがその時どきで感じている自然な感情を否定してしまうことにつながります。

私たちは、まわりに迷惑がかかる、恥ずかしい、などの大人の都合で子どもの感情を否定してしまいますが、そうではなく、なぜこの子は泣いているのだろうとその心に興味をもち、話を聞き、共感することが必要です。

それと同じことを、人は自分自身の心にもしてあげるとよいのだと思います」

今感じている素直な感情を、まず許してあげる。すると、私たちは「では、どうすればよいのか」ということを前向きに考えることができる。

「自己承認は、許す、認める、ほめる。この3つなのです。

誰かに認めてもらいたいという気持ちは誰しもあると思うのですが、良い評価をされてもなぜか満たされないということがあって、結局は、あの人と比べてこんな私はだめだ、もっとがんばらなくちゃ、なんて考えてしまいがちです。

そんなときはちょっと自分の心に興味をもって、本当に自分自身のことを、ネガティブな感情を含めてまるごと認めてあげてほしいと思います」

あなたに優しいあなたでいてください。

この言葉は、晴代さんがヒプノセラピーをしているときに出てきた言葉であるという。そして、より多くの女性に伝えていきたいと彼女が願う言葉なのである。

上をみると足元が揺らぐ。本当に大切なこととは

自己を承認する大切さを教えてくれた晴代さんだが、この思いは、晴代さん自身も身をもって体験したものだという。

「私も、このお仕事を始めて何年かたった頃、ある人に『ハルちゃんは、セラピストとしては成功したけど、経営者としては失敗しているよね』と言われたことがありました。え?私失敗しているの?って、そこから私の悩みが始まってしまいました」

コンサルタントをしている知人にも、自分の強みを打ち出す必要性を指摘されたという。すると同期のセラピストが自分より多くのクライアントさんに施術していることが気になりだしてしまう。晴代さんはまさに他者との比較のなかで劣等感を抱いてしまったのだ。

「私はもともと自分が経営者であるという意識もなかったので、そうしたダメ出しに心が大きく揺れてしまったんです。私は自己アピールも下手で、そもそも子どものころから『私はこれができます』なんて言えるタイプではなくて」

晴代さんはビジネスという言葉に翻弄されるようになる。売り上げを上げるためにはブログを毎日更新したほうがいい、月の売り上げの目標をたてたとき、それを目指すには週に何日、1日何人から仕事を受ける必要がある。ノルマへの強迫観念のようなものが晴代さんを苦しめた。

そして彼女は改めて考える。私がやりたいこと、したい生活はどのようなものなのだろうか。考え抜いた末、結論が出た。

「私のやりたいこと。それは、一人ひとりのクライアントさんに充実したカウンセリングをする。家事をする。友達とランチをする。パンやケーキを焼く。そしてときどき、昼寝もする!」

そして、彼女は気づく。

「私、やりたいことが全部できているじゃない」

あなたには才能があるのだから、頑張ればもっと上を目指せるのに。そうした言葉が彼女を惑わせていた。

「上を見ると、足元が揺らぐんですよ」

上を見れば見るほど、今ここにある幸せに気づくことができなくなってしまうのだ。

「自分のもっているものに気づくことができて本当に良かったです。考えるきっかけを与えられたあの時期は私にとって必要でした。

そして私に進言してくれた方たちも、私の気持ちのあいまいさを察して励ましてくれたのだと思います。

ただ、私の場合、売り上げをノルマにしてしまったら、多分カウンセリングの質もきっと落としてしまっていたと思います」

セラピーは一生懸命、売り上げには手を抜いて。晴代さんは今、自身にとって心地の良いペースで幸せな毎日を送っている。

「生まれ変わったら魔女になりたい」。自然の一部としての人間

そんな晴代さんに聞いてみた。生まれ変わったら、またこの仕事に就きたいですか。少し考えてから、いたずらっ子のような笑顔で彼女はこう答えた。

「私ね、生まれ変わったら魔女になりたいんです」

魔女とは!私の好奇心が掻き立てられる。

「魔女には、実はずっとあこがれています。魔女になりたい、って人に言うと、『ハルさん、もう魔女だよね』って言われるんですけれど」

たしかに、フラワーレメディーを調合している晴代さんの姿は、神秘をその内に秘めた魔女のようだ。

それにしても魔女とはいったいどのような者であったか。魔術によって人や物を自在に操る、あの怪しい老女のことか。

「魔女といっても、呪文をとなえるようなあの魔女ではないんですよ」

「ほうきに乗って空を飛ぶ、自然と一体化している魔女にあこがれるんです。結局私たちは自然の中に生かされています。

だからもっと自然の声を聴くことができたらいいな、って。全体の中の一部として、自然を感じたいんです。

風とか海は、何を言っているのだろう。そんなことを感じ取れる魔女になってみたいです」

人も自然の一部である。人の心を感じ、癒していく彼女の夢は、人を含めた「自然」を体全体で感じることのできる魔女であった。

「でもそれは、本当は生まれ変わってからではなく、今この人生でやっていきたいと思っています」

そう微笑む晴代さんの元には、今日も女性たちが訪れ、『本来の姿』に立ち返っていく。その彼女たちの姿は、自然そのものといえないか。

晴代さんはすでに、女性の内なる自然の声を聴き、感じとることのできる魔女なのかもしれない。

今回お話をいただいた晴代さんの「セラピールームハル」はこちらです!
セラピールームハル http://www.hareru.com/

写真:トップ、3枚目、4枚目の画像は武内晴代さんからお借りしました
画像:『足成』
2枚目http://www.ashinari.com/2011/05/22-347845.php
5枚目http://www.ashinari.com/2015/07/29-393087.php?category=305
6枚目http://www.ashinari.com/2011/01/13-344787.php
7枚目http://www.ashinari.com/2016/12/08-394562.php?category=2

いりゆみ

入江佑未子(通称いりゆみ) 「ひと」がイチバン面白くて、切なくて、怖い! だから、これからもずっとその姿を書いていきたいと思っております。 濃い~時期も薄い時期も含め、ライター歴20年。ただいま停滞中なのですが、復活します!「ワタシの、オレの」こんな人生を紹介してほしい!という方、ライター募集の方がいらっしゃいましたら、ぜひ下記のサイトへ遊びに来てくださいね♪

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