“おっさんカエルと純朴女子高生のほのぼのラブコメ”
本作を一言で説明するとそうなる。身も蓋もないけどそうなる。
でもギャグ展開でもファンタジーでもない。
一昔前には小学校の周辺に必ずあった放課後に子供達が集まる小さな社交場である駄菓子屋「かわずや」を舞台とした、(なぜか)カエルの店長とアルバイトの女子高生ゆうのゆっくりと流れる日々を描いたのが『かわずや』(著:蟹丹/KADOKAWA)だ。
著者の蟹丹氏は今作が初単行本となる新進気鋭の新人漫画家。
イラストレーターとしてはすでに活躍中で、思わず目を止めてしまう鮮やかな色彩は今作のカバーイラストでも確認する事ができる。
「かわずや」は、雨宿りをしていたゆうが店長と出会う第0話から物語が始まる。
店長の優しさに触れたゆうはアルバイトとして、かわずやで働く事になるのだが、店長とアルバイトのゆうの間にはよそよそしい雇用関係は存在しない。
まるで長年一緒に暮らしたかのような不思議な親密感が二人を包んでいる。その空気感が心地よく、なんとも優しい。
移ろう季節のなかで、夏には夜祭りで花火を見上げ、夏の終わりの蝉爆弾におびえ(笑)秋には大量の落ち葉焚きで焼き芋をほおばる。
誰もが体験したであろう、いつかの憧憬が店長とゆうの視線で描かれるのだ。
そうして作品に没頭するなかで、自然とカエルである事を忘れ店長とゆうの物語を静かに追いたくなる自分を発見する事になるだろう。
さらに本作では現代ドラマに必須の“携帯電話”が存在しない。
メールもLINEも使えないなかで女子高生ゆうの店長への想いは読者にだけ見える形で静かに育まれていく。(それがくすぐったいのだけど…)。
コミックス1巻はショートエピソードが23話収録されたオムニバス形式となっており、1巻の最終話にあたる23話では、そんな二人の関係性が少しだけ変化するエピソードも!
本作のサブレギュラーとして登場し、
二人を暖かく見守るお店の常連お菊ばあちゃんの目線で
貴方も、どこか、もどかしい二人のこれからを見届けてはいかがだろうか?
『かわずや』
KADOKAWAウェブコミックサイト「コミックNewtype」で好評連載中。(https://comic.webnewtype.com/)