1940年代から医療機関で処方されている糖尿病治療薬「メトホルミン」が、米国で注目を集めています。
2型糖尿病(肥満などの後天的な理由によって、血糖値を下げるインスリンというホルモンの感受性が下がり、血糖値が上がる状態)に使われてきた、メトホルミンが寿命を伸ばすために効果があるのではないかと指摘されているからです。
アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は、臨床試験(実際に、お薬を患者さんに投与して効果を確認すること)を許可しました。
メトホルミンは、3つの作用によって血糖値を抑える効果を発揮します。
1「肝臓での糖の生成を抑制」
2「糖を末梢の組織で利用するはたらきを促進」
3「腸からの糖分の吸収を抑制」
したがって、膵臓に働きかけて血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促すものではありませんが、身体的な負担も少なく、結果として血糖値をコントロールできるため、広く利用されてきました。
また、非常に安価な医薬品であり、日本においての健康保険を使って投与を受けた場合の費用は、一日当たりの薬価が8円程度です。
イギリスのカーディフ大学研究チームが、メトホルミンを回虫に投与したところ、加齢が遅れて寿命が延びることがわかっています。
また、マウスによる実験では、年齢変化によって起こる骨がもろくなる症状が改善されることが分かりました。
それだけではなく、メトホルミンを投与したマウスは、一般のマウスに比べて寿命が40パーセント延びたというケース報告されています。
人間においても、寿命が延びる効果は期待されています。10年ほど前から、メトホルミンが寿命を伸ばす作用があるのではないかと言われていました。
その理由ですが、2型糖尿病の治療を受けている方のうち、メトホルミンをきちんと飲みつづけたケースでは、有意に数年長生きしたケースが確認されているからです。
メトホルミンが、なぜ寿命を伸ばす作用があるのかは、まだ分かっていません。何らかの原因によって、長生きする遺伝子にスイッチが入るのではないかと考えられています。
勃起不全を改善するバイアグラは、もともと狭心症の薬として開発されていました。また、薄毛の治療薬として処方されているミノキシジルは、高血圧症状を改善するためのお薬として開発されていました。
このような例からみれば、メトホルミンが、寿命を伸ばす薬として機能している可能性はありえるでしょうね。
ただし、大多数の医師は、長寿に関する薬は、試験結果が出るまでに長い時間を要するので、今の時点ではなんとも言えないという見解を述べているようです。
また、原始的な生物や、体が小さいほ乳類で実験した場合、ほとんどの場合で大きな効果を示します。
そのことから、人間が飲みつづければ120歳まで生きられるというのは、過剰な期待ではないかという意見が多数を占めているようですね。
また、多くの医師の間で一致している長寿を実現する方法とは、暴飲暴食や喫煙・飲酒・ストレス・睡眠に気をつけ、規則正しい生活をすることだそうです。
なんとも耳が痛いお話ですが、今回の臨床試験で寿命を伸ばす作用が確認できれば、生活習慣との工夫で、今までよりもはるかに健康に過ごせることができるようになるかもしれませんね。今後の実験の進展に期待したいところです。
※写真はイメージ 撮影 松沢直樹