佐賀県武雄市に続く全国2番目の“TSUTAYA図書館”として、神奈川県の海老名市立中央図書館が10月1日に新装オープンしました。同館では眼鏡ふきやおろし金などが付属したムック本など不可解な選書が相次いで発覚し、市議会で追及されるなど先行事例である武雄市と同様の問題が開館直前に表面化した中での出発となりましたが、開館して早々に「蔵書検索で表示される図書分類がおかしい」と言う声が『Twitter』などで次々に挙がっています。
眼鏡ふき・おろし金・シリコン鍋……武雄市に続き来月新装開館予定の海老名市立中央図書館でも「疑惑の選書」が発覚か - ガジェット通信
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海老名市立図書館の蔵書検索を使用してみると、例えば西村京太郎の推理小説『九州新幹線マイナス1』(祥伝社、2012年刊)は「文学・文芸書/国内文芸/国内小説/国内小説」が正しいはずなのに何故か「旅行/国内旅行/九州・沖縄/九州・沖縄」に分類されています。あらゆる書籍がそうなっているわけではありませんが、どうも特定の地名が入っていると機械的に「旅行」へ振り分けられる傾向があるらしく古典文学では『伊勢物語』(角川ソフィア文庫、2007年刊)が「旅行/国内旅行/甲信越・中部・北陸/三重」に、松尾芭蕉の『奥の細道』(複数冊)が「旅行/テーマ別旅行/あの人の行った旅/あの人の行った旅」や「旅行/国内旅行/東北/東北」に振り分けられているのが確認されました(10月3日21時現在、以下同じ)。
この他、映画監督・伊丹十三作品の撮影時の裏話を題材にした『「マルサの女」日記』(文藝春秋、1987年刊)は正しく「アート/映画/映画/映画史」に分類されているのに『「お葬式」日記』(文藝春秋、1985年刊)は「文学・文芸書/エンターテイメント/映画・ドラマ/映画・ドラマ」と微妙にずれた分類となっていたり、歴史書に分類されるはずの小島敏男『しらせ 南極観測船と白瀬矗』(成山堂書店、2011年)が「趣味実用/ゲーム/ゲーム/マジック」に分類されているなど選書の際に見られた意図の不明確な分類が次々と発見されています。
しかも実際に来館した複数の個人利用者が『Twitter』で報告を挙げているところによれば、こうした意図の不明確な分類は蔵書検索だけでなく「開架の比率を大幅に増やした」ことを売りにしている書棚でも見られるそうで「ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』が『ロシア・ソ連を知る事典』の横に「旅行書」に扱いで並んでいた」などかなりのカオス状態になっていることがうかがえます。
このような意図が不明確な分類が大量に発生している原因は図書館の書架分類に際して使用される日本十進分類法を無視して書籍のタイトルを機械的に判別したことにあるとみられますが、図書館運営の最低限の常識を逸脱したと批判されても仕方がない混乱ぶりが武雄市に続いて海老名市でも露呈してしまったのはTSUTAYAにとって「痛恨の極み」と言えそうです。
画像‥海老名市立中央図書館の蔵書検索
https://ebina.city-library.jp/ ※「無断リンク禁止」のためURLのみ記載