レンタルビデオ大手のTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブに管理運営を委託した全国初の図書館として2013年に鳴り物入りで開館した佐賀県の武雄市図書館で改装前の郷土資料を廃棄した後に『ラーメンマップ埼玉』や2001年版の公認会計士試験対策問題集などの選書の意図が不明確な蔵書が大量に納本されていた問題が連日報じられていますが、神奈川県にあり武雄市と同様にTSUTAYAが指定管理者として図書館流通センター(TRC)と共同で管理運営に参加して10月1日に新装開館する予定の海老名市立中央図書館でも武雄市と同様の「疑惑の選書」が開館を目前にして発覚したと話題になっています。
9月17日に行われた海老名市議会の一般質問で市教育委員会が提示した資料によれば、同館は10月の新装開館に向けて8343冊の書籍を購入したとしておりその内4分の3に当たる6500冊が「工学・工業分野(料理、建築関連等)」に分類されています。ところが、その6500冊の内訳には『アイミクロンメガネクロス』『スピードサラダおろし』『シリコン製タジン鍋』などのとても書籍とは思えないタイトルが並んでいたと言うことでした。
一見すると書籍とは思えないこれらの商品ですが、例えば『アイミクロンメガネクロス』は実用書や児童書を出版している永岡書店がISBNコードを付与して書店流通で販売しているためAmazonや楽天ブックスなどのネット書店でも「単行本」のカテゴリに分類されています。同様に『スピードサラダおろし』は主婦の友社が、『シリコン製タジン鍋』はコスミック出版がそれぞれの調理器具の使用例として料理のレシピを掲載したブックレットを付けて書店流通で販売しており、流通経路上は確かに「書籍」と言えなくもありませんが公立図書館の蔵書としてふさわしいものとは考えにくいと言わざるを得ません。
武雄市の場合は「目標冊数を揃えるためにTSUTAYAがフランチャイジーとして加盟している古書店から不良在庫を大量に買い取ったのではないか」という指摘がありますが、海老名市でも同様にカルチャー雑誌『STUDIO VOICE』が7冊、女性誌『Olive』が11冊などいずれも1990年代発行のバックナンバーが細切れで購入されているとのことで武雄市と同様に冊数優先で古書店から不良在庫を買い取った可能性を指摘する声が『Twitter』などで挙がっています。
海老名市で武雄市と同様の杜撰な選書が新装開館の直前に発覚したことは、全国3番目の『TSUTAYA図書館』として来年3月に新装開館を予定している宮城県多賀城市や市が推進する計画の賛否をめぐって住民投票が決定した愛知県小牧市の図書館運営にも影響を与える可能性がありそうです。
画像‥海老名市立図書館公式サイト(改装中のお知らせ)
https://webebina.ebinachu-lib-unet.ocn.ne.jp/ [リンク]