東京ビッグサイトで開催されている『日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」に取材に出向いた。
報道用資料によると、オリンピック開催の2020年を視野に「安全・安心」「少子高齢化への対応」「環境への配慮」「省エネ」等、様々な課題にを解決する先進的なデザインや最新技術が集まる総合展だ。
プレスルーム掲示の速報値によると3月3日現在全6展で36,090人の入場者数を数え、全期間で21万人の来場を見込んでいるそうだ。今回はそのごくごく一部を消費者とのかかわりを視点に紹介する。
いきなり現れたカジノのような電飾。トキコーポレーションは、ラスベガスの有名ホテルにあるカジノの照明を担当しているそうだ。元は間接照明を主に扱うメーカーで白熱球からスタートしたという。しかし時代の流れとともにLED化が進む中、やさしい光、心地よい光の空間とは何かを追求した結果、それは白熱球であるとの結論に達しLEDで白熱球の光を作り出すことに苦心したそうだ。写真のカウンター下の電球はすべてLEDだ。光源は上にありフィラメントを模した球で反射させて白熱球の感じを出したという。電球そのものはガラスではなくアクリルというから驚きだ。LEDは熱を発しないのでアクリルでも問題はなく、落として割れる心配もないそうだ。ラスベガスに行った際にはぜひ照明を見てほしいと広報担当者。しかし、よく聞くと東京駅丸の内口の有名なドーム、あの照明も同社の製品だそうだ。
実はこの展示会に著者を招待してくれたイタリアの照明器具メーカーLCI JAPAN。前回の展示会取材の際にインビテーションをいただいたのだが、日本の竹を模した照明器具はやはりインパクトが強い。
イタリア人の社長をお見かけしたが、日本で勉強した経験もあり日本語は堪能、現在は多摩美術大学の客員教授をしているそうで、企業の社長というよりもデザイナー、芸術家といった様子だった。
ご存じない方も多いだろうが、今シーズンから横浜スタジアムのナイター照明はすべてLEDになる。この巨大なLED灯光器を開発したのが岩崎電気。これまでは水銀ランプやHIDを使用していたがLEDにすることによって即時点灯ができる他、消費電力も大幅にカットされるメリットがあるそうで、まさかナイターが開催できるほどのLEDがあるとは思わなかった。日本は電気代が高いので省エネに注目が集まり、結果的に技術の向上につながっている背景を教えてくれたが、オリンピックは全部の照明をLEDにしたいと技術者は語ってくれた。なお、目の前での点灯は「明るすぎて直視は危険ですので上からの小型灯光器で勘弁してください。」とのことだった。
続いてフランチャイズ・ショーなのだが、なぜかルーレット台が現れた。話を聞いてみると、なんとカジノディーラーを養成する学校を開設しているとのこと。よくわからないのでCEC社に詳しく聞いてみた。「カジノが合法化されるとかされないとか議論されていますが、将来的にはされるでしょう。しかしその時にディーラーがいなければ何もできません。現在は養成したディーラーをお金を賭けないアミューズメントカジノで雇用する形を取っていますが、本物のカジノができたときには日本で養成した日本人のディーラーが必ず必要になってきます。そのための先行投資です。」と、目の付け所が面白すぎるビジネスもあるもんだと感心した。カジノは45兆円の市場規模が見込まれるらしいが、その是非はともかく、数字一点張りで当たったらステンレスボトルをくれるというので、チップをもらって23に張ってみたが、球は20に入り残念ながら外してしまった。一流のディーラーにやられたのか、著者の運がないのか、未だにわからない。
最後は徳島県のベンチャー企業。UVランプを手掛けているナイトライド・セミコンダクター。UVランプそのものは殺菌灯でおなじみだが、それをLEDで作ってしまった。波長の短い紫外線をLEDで作り出すことは技術的に難しいそうで、このベンチャー企業も徳島大学の研究所と連携で2000年に発足したという。現在の用途は印刷や、紙幣の鑑別、センサー、樹脂硬化などだそうで、日本では2社、世界でも5社くらいしか作っているところはないそうだ。ちなみに殺菌灯用途でのLEDはまだ実用化されていないらしく、5-10年はかかるらしい。
オリンピックを見据えて産業界も活気づいてるが、全体として消費者が考えている以上にLEDへの置き換えが進むような印象を持った。それも見てわかるようなところではなく、これも、あれも、それも、気が付いたら全部LEDだったという時代がもうすぐそこまでやってきているのかもしれない。そうなれば電気代に占める照明が消費する電力の割合はぐっと減るだろうし、消費者にとっても国にとっても、文字通りの明るい未来が待っているのかもしれない。そんな予感がする展示会だった。
※写真はすべて著者が撮影したもの。場内での取材および写真撮影はプレスパスにより主催者許諾済み。取材内容及び人物についても個別に承諾を得て掲載。