鉄道ファンならだれでも知ってるけど、知らない人は驚く秘境駅が都心にある。
秘境駅の定義は様々あるが、この駅は”一般人”は鉄道でないと到達できない。車があろうと自転車があろうと徒歩でも駄目だ。ホームの後ろはすぐ海なので断崖絶壁とまではいわないが、それなりに秘境度はある。極めつけは、鉄道に乗って駅には到達できるが、”一般人”はきっぷを持っていても改札の外に出られないのだ。無人駅なのにである。
件の駅の所在地は神奈川県横浜市鶴見区。JR鶴見線海芝浦支線の終着”海芝浦駅”である。では早速、JR鶴見駅から出発しよう。
これは鶴見駅だが、改札口ではない。改札内の改札、つまり中間改札だ。鶴見線の駅は全駅無人駅なので鶴見駅で当駅までの運賃を精算して目的地の駅で再度清算する形をとる。もっともIC乗車券はタッチするだけで運賃計算は自動的に行われる。
鶴見線のホームは行き止まりになっていて屋根はアーチ形で古さを感じさせる。
こちらは出発側。東海道本線や京浜東北線は地上を走るが、鶴見線は高架だ。
折り返しの電車が到着し、10分程度停車する。出発信号機が進行現示に変わった。出発だ。
15時20分、鶴見発、海芝浦行の1509列車は定刻通り出発した。国道、鶴見小野、弁天橋、浅野、新芝浦と停車して次が終点海芝浦だ。
新芝浦を出発した直後から、電車は私有地に入る。後述するが、これが駅から出られない理由だ。ちょうど写真のこのあたりから私有地敷地内になる。
鶴見つばさ橋が見えてきたら右に大きくカーブする。もうすぐ終点だ。
終点の海芝浦に15時31分、定刻で到着。鶴見から11分のショートトリップだった。
当駅は当然のことながら行き止まりになっていて、単線ホームひとつしかない。
駅舎かと思いきや、実は東芝京浜事業所の入り口、つまり守衛所だ。ここは東芝の敷地内にあり、工場で働く人のための駅であるから、駅を出たらもうそこは東芝の工場。だから一般人は徒歩でも自動車でも用務があって東芝に入場を許される以外は行くことはできないし、鉄道で当駅に到着しても駅からは出られないのだ。だから、簡易Suica入出場機で、出場、入場と連続タッチするしか戻る道はない。ちなみに紙のきっぷで到着した場合は、守衛所内の自動券売機で戻る切符を買って乗車することになる。あくまでも駅からは出られないのだ。
しかし、駅のすぐ横は京浜運河で眺めもよく憩いの場所として訪れる人も多いことから、清涼飲料水の自動販売機やトイレは完備している。さらに、東芝が自社の敷地を提供して駅から出なくても憩える海芝公園を整備して開放している。
ホームから工場の方に行かずに、直進すると遊歩道のようになっていて、ベンチもある。ここからは京浜運河や鶴見つばさ橋、対岸の工場群が良く見えなかなか眺めの良い場所である。
海芝公園から海芝浦駅を眺めると運河に沿ってぽつんと電車が止まっているのが不思議な景観だ。
残念ながら折り返しの電車が14分後に発車なので、ホームに戻った。なお、工場側の撮影は禁止されているので海側の写真しか撮影はできない。私有地だから当然だろう。
電車の中からも運河が一望できる。15分程度なら折り返しの電車に座ったまま海を眺めるのもいいが、IC乗車券の出場、入場のタッチはお忘れなく。
鶴見つばさ橋もきれいだ。
折り返し、15時45分発鶴見行きとなる1508列車。ちなみにこの3両編成の205系電車は、以前は埼京線で活躍していた車両だ。
ホームの先端から対岸の工場群を眺める。
この電車を逃すと1時間ほど海芝公園にいなければならないので、名残惜しいが14分間のショートトリップを終えた。この電車には20名ほどの家族連れ、カップル、写真を撮っていた若い女性、友達同士と結構な訪問客がいたようだ。土日は東芝京浜事業所が休業なので電車の本数もぐっと少なくなるので、あらかじめ折り返しのダイヤを確認してから訪問するといいだろう。
※写真はすべて筆者が撮影したもの。