『アニメシナリオ大賞』とは、『少年ジャンプ+』と『アニマックス』が主催するシナリオ賞だ。
大賞受賞作品は少年ジャンプ+でコミック化、さらにアニマックスでアニメ化される。
賞金は200万円。郵送だけでなく、公式WEBサイトからのオンライン応募も可能だ。
この賞の特徴はなんといっても応募テーマを『少年ジャンプ』と定めていることだ。
募集要項には
少年ジャンプからイメージする、あなたのオリジナルシナリオを募集。
とある。
ジャンプをテーマとしたアニメシナリオ賞の創設。これは何を意味するのだろうか?
本来、受賞作品が即アニメ化されること自体は費用に見合った効果が得られるか不明な冒険的な企画であろう。文芸賞であるため比較にはならないかもしれないが、古くは1989年に創設された『日本ファンタジーノベル大賞』が存在した。酒見賢一の『後宮小説』や、鈴木光司の『楽園』といった良質な文芸作品が受賞。ジブリスタッフのアニメーターといった豪華なスタッフを起用しアニメ化された。企業協賛の賞であったため、バブルの好景気が受賞作のアニメ製作を可能とした。当時、アニメ製作はアナログ主流であり、現在より遥かにコストのかかる仕事であった。
しかし、デジタル産業の技術の促進された近年では、アニメ化における背景事情は当時と異なる。最初からアニメ化を目的としたアニメシナリオを募集する賞も少なからず存在する。
洗練されたものとしては、京都アニメーションの募集する『京都アニメーション大賞』のシナリオ部門が代表例として挙げられるだろう。ヒットアニメ『Free!』は同賞第2回の奨励賞受賞作であるおおじこうじ作・『ハイ☆スピード!』を原案としている。
また、2014年にポニーキャニオンの創設した『アニメ化大賞』も挙げておきたい。表現手法をテキストに限らず漫画や音楽での応募も可能といったフレクシブルな賞だ。
ジャンプには、既に『ジャンプ小説新人賞』が存在する。受賞作家はジャンプの小説ブランドである『JUMPJBOOKS』の作家として活躍している。同ブランドは良質なオリジナルシリーズを提供する一方で、少年ジャンプ掲載作品のノベライズを礎としている。また、JUMPJBOOKSのオリジナル作品のメディア化は殆どない。
ジャンプ関連作品のアニメ化といえば、『週刊少年ジャンプ』本誌において人気を得た作品のアニメ化が定石だ。少年ジャンプで一定数のファンを得た作品こそ、メディア化におけるリスクは低い。しかし、この賞では漫画でも小説でもなく即アニメ化を前提としたシナリオをダイレクトに募集している。あくまでも少年ジャンプという漫画世界を意識しながら、アニメ化をメインに据えたシナリオだ。
ジャンプファンにとって注目すべき点は、アニメ化よりも、コミック化に際して週刊少年ジャンプ編集者が担当に付く点ではないだろうか。週刊少年ジャンプを作り出している編集者がアニメのシナリオ大賞に携わる。この企画の意図は何であろう?
漫画製作とアニメ製作では問われる経験もノウハウも能力も異なるだろう。アニメシナリオ大賞と銘打っているが、コミック化も特典として売り出している賞であることに着目したい。
集英社は2014年にマンガ雑誌アプリ『少年ジャンプ+』を創刊したばかりだ。
デジタル版ジャンプを世に打ち立てることで、ジャンプの更なるブランディングに成功している。アニメシナリオ大賞の狙いは『ジャンプ+』オリジナルのヒット作品を生み出す才能の検出であろう。しかし、本家本元はやはり『少年ジャンプ』なのだ。コミック化に際して漫画編集者の担当が付くという特典から感じられる主張はそこにある。
ジャンプといえば『ONEPIECE』や『DRAGON BALL』といった壮大なスケールで描かれる冒険活劇が想起される。鳥山明、尾田栄一郎、 荒木飛呂彦といった天才漫画家の牽引する男気溢れる少年誌というイメージもある。一方で『北斗の拳』や『DEATH NOTE』といった「原作者付き」のシリーズもアニメ化されている。作家・西尾維新が原作を担当した『めだかボックス』も記憶に新しいところだ。
ストーリー製作と作画担当が分業することで、安定したエンタテイメントを供給する「原作者付き」漫画の存在感はジャンプにおいて重要性を増しつつある。
例え漫画が描けない者であっても構わない。
これはまさしくシナリオ賞の名目を借りたジャンプ魂を引き継ぐ者の選抜試験なのかもしれない。
締め切りは2015年3月31日(火)必着。興味のある人は公式サイトを覗いてみよう。
アニメシナリオ大賞
http://anime-scenario.com/ 【リンク】
京都アニメーション大賞
http://www.kyotoanimation.co.jp/kyoani_award/ 【リンク】
アニメ化大賞 powered by ポニーキャニオン
http://animeka.jp/ 【リンク】