開創1200年の世界遺産・高野山にジブリアニメのあのキャラのモデルが?

  by 松平 俊介  Tags :  

(高野山・南院の吉田高嶺作『浪切龍天井』)

 

来年開創1200年を迎える世界遺産・高野山金剛峯寺。このお寺の一角にある絵がネットで話題になっている。スタジオジブリのアニメーション「千と千尋の神隠し」に登場する「ハク」の化身のような「血の涙を流す白龍の神」がいるというのだ。それ以外にも、舞台となった「油屋」に似た建物や、ストーリーに似た伝説もあるという。

 

「血の涙を流す白龍の神」の絵が天井に描かれているのは高野山内の「南院」(なんいん)という塔頭寺院(たっちゅうじいん:本山金剛峯寺に付属する寺)で、吉田高嶺という画家が龍神を描いた「浪切龍天井」という絵。

上の絵がそうだが、たしかに天井部分の剥落が「目が血走っている」ように見えなくもない。あるブログでは「血の涙を流している龍神様。映画『千と千尋の神隠し』のシーンを思い出しました。」(http://ayumi8photo.blog.fc2.com/blog-entry-94.html)としている。

 

この龍は手をこの絵の下で叩くと龍の鳴き声のように聞こえることから「鳴龍」と呼ばれ、仏典に登場する「八大龍王」という龍神を描いたものである。

 

「南院」はそもそも弘法大師空海が師匠の恵果から授かったという、空海の守り本尊・「波切不動明王」(旧・国宝、現在重要文化財、秘仏の為毎年6月28日のみ公開)を祀る寺で、白龍の神・八大龍王は不動明王のしもべである。

 

高野山・熊野に多数残る、「千と千尋」類似の建物・昔話・伝説。

 

そもそも熊野・高野山・伊勢地域の神話は宮﨑駿氏の創作活動にかなりの影響を与えているという説もあり、熊野や高野山に祀られている神仏がキャラクターの原型ではないかという考察もある。ネット上で言われている話をまとめると、

 

・高野山の麓、高野口駅近くにある旅館「葛城館」は千と千尋の神隠しに登場する「油屋」に外観が似ている。

・高野山の別の寺、「福智院」には「高野山温泉」があり、温泉の内装が「油屋」内部に似ている。

というのである。

 

(「千と千尋」に登場する「油屋」に似ているといわれる、元旅館・「葛城館」)

(高野山温泉・福智院の内装。確かに豪華だ)

高野山に伝わる伝説と「千と千尋」のストーリーとの類似。

 

これだけではない。高野山に伝わる伝説の中には、「千と千尋」に似たものもあるのだ。

 

・高野山には「刈萱(かるかや)伝説」という、行方不明の親を子供が探す話がある。

・この白龍が描かれている寺院の隣のバス停には「女人堂」というお堂があるが、そこには「小杉明神」という、いじわるな継母にいじめられたあげく、手を斬られたが、若者と弘法大師に救われ、弘法大師の霊験で斬られた手が生えてきた女性「紀の国屋小杉[おすぎ]」(民話「手なし娘」の主人公)を祀る社が有る。「千と千尋の神隠し」では、千尋は意地悪な老婆にいじめられたあげく、おじいさん「釜爺」と、龍神の精の若者「ハク」に救われる。釜爺=弘法大師、ハク=浪切龍、老婆=継母、千尋=小杉明神と考えるとかなり似ている。「千尋」の苗字は「荻野(オギノ)」で、「オスギ」に似ている。

・宮﨑駿氏に影響を与えた作家の司馬遼太郎氏はライフワークとして熊野・紀伊・高野山地域を扱った作品を残している。

 

「女人堂」を過ぎると南海高野山駅、そこからケーブルカーと単線の鉄道でトンネルを抜けていくと繁華街の大阪・難波にたどり着くというのも、「千と千尋の神隠し」のストーリーを思わせるものがある。偶然の一致としては驚くべきことではなかろうか?

 

ただ、「千と千尋」については、様々な考察が有り、台湾九フンの町のように、ジブリ側がモデルとなっていることを否定しているものもある。高野山・熊野地域は果たしてどうか?今後も取材と考察を続けたい。

 

(龍神の画像はhttps://www.flickr.com/photos/rooney444/4344419484/in/photolist-7BUhyd-bLqEG-bLr93-ebfjSh-bLqSF-4svguF-cXcqoC-3X2ZP8-3X34nt-4ENeHs-bLqMR-q3geaE-7i3h61-2dWyaQ-4gjtDM-8FYbUC-dVgCuo-e5oH7p-dVgChj-eK3AcW-4EJ8QM-4ENpaw-egZHaN-fZH9M-9ihy8i-dVgCY1-xwUwU-9oRvo3-8TWojL-72q31z-6GCVfc-4aL1bV-3MQ1dS-Aybmp-dVb2PZ-mZidxp-H1W3F-4HMoD4-4HMorM-bLrd9-3fjG2w-8TTkmP-dVgziA-p1LLH-6UFG2A-6UBCgr-e3Fxgf-dLr7n-dVgBLd-dVb1gBより)

(「葛城館」は橋本市観光協会のサイトからキャプチャー http://www.hashimoto-kanko.com/detail/index.php?%B3%EB%BE%EB%B4%DB)

(「福智院」は福智院公式ページよりキャプチャー http://fukuchiin.com/shukubo/)

 

企業のニュースリリースライターを足掛け4年経験。現在はライターのみならずwebディレクターやテレビ番組の企画にも関わっている。タウン誌や飲食関係の媒体の制作にも携わる。 大学時代は書家や歴史作家について修行をしていたことも。(雅号:東龍) 地域の埋もれた歴史を掘り起こしたり、街歩きをするのが好き。これまで関わってきた雑誌は「散歩の達人」「週刊SPA!」、放送局では主に関東ローカルテレビ局の企画を担当。

ウェブサイト: http://touryuuuan.blog.jp/