触れられない脱法ドラッグの真実

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法的規制外の薬品を用いる事で、裁きを受ける事無く売買や使用ができる脱法ドラッグ。

それらの類はハーブ、アロマリキッド、フレグランスパウダーなどと称され、あくまで『お香』として販売されている。

政府はそのような脱法ドラッグを取り締まる対策として厚生労働省による薬事法改正を繰り返すが、製造業者側も使用薬品の構造を変化させては法を逃れるイタチごっこが繰り返され、いよいよ2013年には包括規制が施行され、更に今年4月には業者ばかりでなく購入者及び使用者まで罰則の対象となってしまった。

しかし今もなお、脱法ドラッグという類の商品や販売店が存在するというのが現状である。

私はそういった脱法ドラッグに関する事情に様々な疑問を抱き、そこで関東の某所にて、昨年末まで脱法ドラッグの販売店を営んでいた男性から話を訊く事した。

まず私がその男性に尋ねたのは、脱法ドラッグ販売店を始めたキッカケと経緯である。

すると男性は「当初、何か自営で商売を始めようと思ったのですが、こんな世の中だから必ずしも儲かるといった固い業種がなかなか思いつきませんでした。そんな時にたまたま知り合った人間が脱法ハーブ店で働いている奴だったので、彼に勧められて自分も始めようと思いました」と語った。

では実際に脱法ドラッグ販売店を始めてみて、どうだったのかと尋ねると「やはり最初の3ヶ月は客も殆ど来なくて赤字続きでしたが、それ以降は日に日に客が増えていき、毎月それなりの利益にはなりました」のだという。

しかし脱法ドラッグというものは、そこまで需要があるものなのか?また脱法ドラッグの使用者というのはどういった人達なのか?

私がその事を尋ねると「使用者は実に様々で、20前後の若い男女から中年層のサラリーマンや人妻、ごくたまに高齢の方も買いに来ていましたね。年齢だけじゃなく見た目的にも様々で、見るからに不良みたいな連中もくればオタクっぽい奴も来ていましたし。とにかく思った以上に需要があるみたいです」と男性は語った。

そういった男性からの回答を訊き、私はこの国内でドラッグという類のものがそれほどまでに求められているという事実に驚きを隠せずにはいられなかった。

そんな私の驚きを察してか、男性は「正直ドラッグを求めるというのは人間に組み込まれた本能の一部じゃないでしょうか?考えてみればドラッグで快楽を得るという行為は随分昔からあります。例えばアンデス文明の頃のマチュピチュにしたってコカの葉を噛むという趣向があった訳だし、その他にも大麻やアヘンによって快楽を得るという文化は昔からありましたからね」と告げる。

さらに男性は「しかし現在の日本では、そういった麻薬の類は全て悪とされており、身体に取り入れて精神状態に作用させるといえばアルコールくらいしかありませんでしたからね」と付け加えた。

私はそこで男性の回答を少しばかり納得しかけたのだが、しかし私にはどうしても現存する脱法ドラッグに賛同しきれない事情があった。

なぜなら脱法ドラッグという類のものは大変有害なものが殆どで、吸引する事によって倒れる者や場合によっては死亡する者も多く、また脱法ドラッグの吸引によって様々な意識障害を引き起こした挙句、公衆で暴れまわったり交通事故を起こすケースも多々あるのが現状だ。

そういった現状をどう考えるのかと男性に問うと「実際にそういった事件等があるのは分かります。また現存する脱法ドラッグがいかに危険なものかという事も理解できます。しかしこういった背景には様々な事情があるのです。まず現存する脱法ドラッグの危険度についてですが、脱法ドラッグが世の中に出回り始めた当初はそこまで危険度はありませんでした」と答えた。

更に男性は「脱法ドラッグって元々はセレブの間で流行った遊びだったし、製造側も人体への影響には気を遣っていたと思います。でも度重なる規制を逃れる為に製造側が薬品の構造を変化させ続けた結果、現状のような危険な脱法ドラッグばかりが出回るようになってしまったのです」と話を続けた。

また男性いわく「結局、脱法ドラッグ吸引で引き起こされた交通事故なんかにしたって、別にそういった類の事故は脱法ドラッグに限らず、飲酒運転でも考えられます。要はアルコールなんかと同じで、モノ自体がどうこうというより使用者の節度という問題じゃないでしょうか?」との事。

確かにそう考えれば、脱法ドラッグなどもアルコールと同じで、使用者の節度が問題だという男性の考えも十分に納得できる。

では一体なぜ、世間はこれほどまでに脱法ドラッグというものに対して寛容さが無いのだろうか?男性の見解どおりに考えるのであれば、脱法ドラッグの一切を否定し薬事法改正を繰り返すより、ある程度のものを許容した上で使用法などを指導した方が、様々な事故なども防げるのではなかろうか?私はそのような疑問を尋ねてみた。

すると男性は「これは僕の憶測ですが、一部のものでも世間的にドラッグが合法化されるというのは、どうやら国家やアウトローにとって都合が悪いのでしょう。何故なら僕達のような脱法ドラッグ関係の業者にはヤクザ絡みの人間関係が一切無いのです。要するに脱法ドラッグが幾ら売れてもヤクザの利益に繋がる事はなく、そればかりか脱法ドラッグが普及する事によってシャブなどの違法なものに手を出す人間が減る訳です。そうなると違法ドラッグで利権を得ているアウトロー業界からすれば迷惑な話だし、警察にしたって違法ドラッグに手を出す人間が減れば奴等の検挙数も減ってしまう。またアウトローと裏で繋がっている政治家や警察の生安なんかもウマ味が減るという事でしょう」と語った。

そういった訳で今回の取材を通し、私はますます分からなくなってしまった。

それは脱法ドラッグについて云々は勿論の事ながら、それ以前に“世の中一体何が正しくて何が悪なのか?”という疑問までも持たずにはいられない。

それなりにリベラルな人生を歩んできた故、良くも悪くも世間の色々な顔を見てきました。ライター経験は月刊誌連載を数ヶ月ほど…ネタは豊富です!