暗闇効果で、人がケモノになる瞬間に遭遇!

  by 青木ポンチ  Tags :  

現代人の皆さん、ストレス解消できてますか?
日々の面倒なことを忘れ、好きなスポーツやホビー、レジャーで発散するのもいいですよね。とは言っても、行く場所、見る風景、会う人、話す言葉、食べる物…何かしら日常の延長線上にあります。たとえ外国を旅したとしても、完全な非日常に身を置くことは難しいでしょう。
でももし、それら日常を受け止めるあなたの「感覚」が違うものに入れ替わったら、まったく新しいものを感じるようになると思いませんか? そうなる要素が「暗闇」にはあるのです。

 

昨今、暗闇の中で語り合ったり演奏したりといった、新感覚のワークショップが増えています。僕も昨年、「暗闇の発酵食堂」なるイベントで、暗闇で食べ物を食すという非日常体験を通じ、身体感覚をアップデートすることができました。その主催者「クラヤミノtones」が、今度は暗闇でボイストレーニングをするというのです。闇に誘われ、ワークショップにもぐり込んできました。

 

ところで、日常の中で完全な「真っ暗闇」って、体験することはあるでしょうか? たとえ真夜中でも、窓の外では自販機の明かりがこうこうと灯っていたり、室内でも家電の赤いLED球がつきっぱなしだったりと、どこかしらで人工的な光が目に入るのではないでしょうか。
このクラスでは携帯のバックライトなど、どんな小さな光源も完全オフ。視覚情報を遮断してしばらくすると、ここがどこなのか、何時何分なのか、空間・時間の感覚もぼやけてきます。かわりに「暑い、寒い」「匂い」「空気の流れ」など、ふだんはさほど意識しない、視覚以外の五感が研ぎ澄まされていきます。

 

もうひとつ、暗闇と引き換えに「羞恥心」を捨て去ることができます。ボイストレーニングで付きまとう感覚に、「大声を出すの恥ずかしい」「うまく歌えるか不安」「他人の声に引っ張られる」といったことがあるかもしれません。
でも、人の顔が見えない=「人の目が気にならない」、そして、余計な情報が入らない=「自分の意識だけに集中できる」ため、ボイトレには最適な環境が整えられるのです。

 

もちろん、完全な暗闇で無心になりきれるかというと、そうでもありません。自宅ではなく外にいるというアウェー感、見えなくても人が存在するというほどよい緊張感も、ボイトレではプラスに働きます。
言い換えれば、暗闇は人間がふだんまとっている「情報」という衣服をひっぺがし、ケモノに戻る効果があるのです。ケモノが周りを気にして、空気を読んで行動するでしょうか? ケモノは周りに仲間(や敵)がいることは知りつつも、自分の思うがままにふるまいます。「緊張に身を置きつつも、あるがままの自然体」なのです。

 

実際のワークショップでは、まず「深くゆっくり」な呼吸から始め、リラックスしながらも全身に意識をめぐらせていきます(この時点ですでに、ケモノとして覚醒しはじめる感覚が)。

そして、課題曲とされるモンゴルの伝統歌唱、これを腹の底から「オハエ~♪」と発声すると、あら不思議、都内のカビ臭い雑居ビルの密室にいるはずなのに、モンゴルの大草原にいるような感覚が!(エアコンの送風すら、草原を吹き抜ける風のように感じます)

 

 

クライマックスでは、暗闇で「声の森」を作るという実験が行われます。本当に森の奥深くにいるように感じられ、真夏にもかかわらずひんやりとした湿気が身を包みます。始めのころこそ「どんな声を出そうかなー」と人間らしい思いが頭をめぐりますが、次第に

「コロコロコロコロ」

「クエッ、クエッ」

「ギャース」

など、(行ったことはないですが)ニューギニアの密林でしか耳にしないような怪音が、渋谷の雑居ビル室内に響き渡るのです。

 

ワークショップが終わり、ぼんやりと明かりがともっていくと、そこには溜まっていた老廃物を出しきったような、風呂上がりのような参加者全員のほっこり顔が現れました。こんなフツーの女の子たちが「ギョエー」とか言ってたんだなあ、と思うと感慨もひとしおです。

編集・ライター業を営んでおります、「株式会社 スタジオポケット」の青木ポンチと申します。 大学卒業後、漫画系の編集プロダクション→情報誌編集部を経て2009年に独立、PN「青木ポンチ」として本格的に取材・執筆活動を始めました。メディア・出版業でのキャリアは16年になります。 より広く、深く社会に情報を発信していきたいと思い、ウェブライター活動を始めました。得意分野は社会・エンタメ全般(テレビ・芸能、格闘技、街ネタ、自然食、社会問題など)。面白く、ためになる情報を皆さんにお伝えするのが、みずからのライフワークと思っております。

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