
[筆者コラージュ作成]
2025年2月25日、都内で超党派の「人道外交議員連盟第8回総会」が開かれた。
これまでに議連総会のトップだった石破茂氏は昨年末総理に就任した。議連事務局長「立憲民主党」阿部とも子 衆議院議員は「人道外交議連の会長職だった石破茂現総理がこのまま会長職を継続されることは不可能である。議連顧問になって頂き見守ってくださるようお願いした」と挨拶した。当初、呼びかけ人は阿部氏含め4人だった。中谷元現防衛大臣、「立憲民主党」中川正春元衆議院議員、「立憲民主党」近藤昭一衆議院議員。
外務省「中東アフリカ局中東第一課」反町将之ガザ復興支援交渉官は2025年1月15日にイスラエルーハマス間の人質解放と「停戦」に関する3段階が成立し、同月19日に発効した。第1段階で約30名弱の人質が解放されているが、現地労働者が約60人残留している。中には生存している人質だけではなく遺体で返還される人質もいる。残る対象者は4名で全て遺体だという。第2段階に入れば男性の人質の釈放も見据え恒久的な敵対関係の停止とイスラエル軍のガザからの完全撤退も実現性が出てくると見ている。
元々停戦発効は1月19日から40日後にあたる3月2日に停戦することが謳われた「合意」だった。だが現時点では第2段階に移行するためにあらゆる条件を巡って交渉しなければならないが「間接交渉」は未だ着手されていない。それでは3月2日にスムーズに移行することは可能なのか?イスラエル軍のガザからの全面撤退を条件に第2段階では人質を一括で解放するよう提案をしているという。
「停戦合意」発効後約2週間で人道支援の物資を運搬するトラックが1万台以上出入りを許可された。それでもガザ全体の復興に関しては世界銀行などの協力があり500億ドル(日本円にして約7兆円)もの凄まじい額の人道支援ニーズがあると見做されている。
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<リード>
【1】日本における「パレスチナ国家承認」を含むパレスチナの国家樹立への貢献に向けた道筋
【2】「UNRWA活動禁止法」施行後、ポリオワクチン支援に多大なる支障
【3】「2国家解決」を実施する「世界連合(グローバル・アライアンス)」の動向
【4】ラザリーニ事務局長「UNRWA攻撃目的はパレスチナ難民の資格剥奪」
【5】平和に生きる権利と「正義」のために求める5つの提言
【6】UNRWAを「テロ行為」と非難する広告プロパガンダが世界中に出回るー背後にイスラエル外務省からの賄賂か?
<結び>
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【1】日本における「パレスチナ国家承認」を含むパレスチナの国家樹立への貢献に向けた道筋
ドナルド・トランプ米政権のスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使は「イスラエルとパレスチナのイスラム過激派組織ハマスによる『停戦合意』の第2段階に関する協議が今週再開される」と述べた。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相、カタールのムハンマド・ビン・アブドゥッラフマーン・アール=サーニー首相兼外相、エジプトの情報トップと同月16日に「非常に生産的で建設的な」電話会談を行ったと「FOXニュース」に語った。ウィトコフ氏は「電話会談では(停戦合意)第2段階の順序と双方の立場表明により現状を理解することを話し合った」とし、「場所は未定だが今週から協議を再開する」と述べた。
翌17日、米国務省のタミー・ブルース報道官は記者団に対し、「マルコ・ルビオ国務長官が、ホワイトハウスで安全保障政策を担当するマイク・ウォルツ大統領補佐官やウィトコフ中東担当特使とともに、18日にサウジアラビアの首都リヤドでロシアの代表団との会合に出席する」ことを明らかにしていた。
去る2月4日、米国のトランプ大統領は「米国がガザ地区を保有し住民が退去した後、経済開発を行う。ガザは中東のリベエラのような素晴らしい保養地となるだろう」というガザ構想を発表した。
この発言に対してアラブ系を除くイスラエルの全ての政党指導者から、この構想に反対する意見が表明されなかった。イスラエルの政治的風土において、その座標軸が極右からさらに一層の極極右にシフトしたことを意味する。トランプ構想ではガザ住民の受け入れ先としてヨルダンとエジプトを想定している。ヨルダンの国王アブドッラー2世は2月10日に訪米し、2,000人の傷病児の受け入れは表明したが、トランプ大統領のガザ構想には全面的に反対している。同じく親米国家として知られるエジプトのシーシー大統領は、ガザ住民受け入れが主題の会談であればとして訪米要請を拒否し、新たなエジプト側の対案を準備している。

[筆者撮影]
一橋大学元教授の清水学氏は「トランプ氏の提案は住民受入れと援助の取引と考えているかもしれない。ヨルダンにとっては現在の人口の過半数がパレスチナ人である状況から、これ以上のパレスチナ人の受け入れは体制そのものの危機につながる可能性がある問題である。エジプトにとっても現体制が警戒しているムスリム同胞団とガザのハマスとの関係が強まることを警戒している」と指摘した。
イスラエルではかつてアリエル・シャロン首相の名前がなぞらえた「シャロン・プラン」という言説が流されたことがあった。それは占領地のガザ・西岸をイスラエルに併合する場合に想定される、イスラエル・占領地の人口構成に関わるものである。ヨルダン川西岸とガザを併合する場合、そこの住民にイスラエルの市民権を供与しなければならない。当時の「人口構成」をベースに想定すると「拡大イスラエル」ではユダヤ系900万人、パレスチナ系(イスラエル・ガザ・西岸に住む)600万人程度である。しかしパレスチナ人の人口増加率が高くシミレーションによると30〜40年後にはアラブ・パレスチナ系の方がマジョリティーになると考えられ、それはユダヤ人国家としてのイスラエルの存立基盤に関わる危機となる。それを避けるためには占領地のパレスチナ人をヨルダンに移住させるという構想である。この発想をヨルダン国王が体制への脅威として捉えるのは当然である。
なおパレスチナ国家承認に関していえば、国連加盟国のほぼ4分の3ほどの少なくとも136か国がすでに承認している。承認していないのはG7など欧州諸国の一部である。未承認国はアジアでは日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ミャンマーなど少数である。ちなみに、アジアでイスラエルを承認していない国はマレーシア、インドネシア、ブルネイ、パキスタン、バングラデッシュ、モルディヴでムスリム多住国家である。
逆に2024年5月末に新たにパレスチナ国家を承認した欧州諸国としてスペイン、アイルランド、ノルウェイがある。アジアでもシンガポールが独立国家承認を検討してみる用意があると表明した。日本がパレスチナ国家承認を行う政治的意味は大きい。
「イスラエル・パレスチナ2国家解決の承認の道筋として、独立国家の実態を備えているがどうかが議論となる。西岸における70万人のユダヤ人の入植地の存在(国際法・安保理決議違反)は国家としての基盤への深刻な挑戦である。フランスのマクロン大統領は『実態を伴う承認でなければ意味がない』という立場だ。しかし重要なことは実態を作り上げていくためのステップとしての承認という考え方である。パレスチナ国家承認はまた『グローバルサウス』との関係強化という外交戦略にもつながる。」と清水氏は解説した。その上で「二国家論』に基づくパレスチナ国家承認を国家基盤の再建のプロセスと位置付けるべきで、西岸への入植地拡大を阻止・縮小に結び付けていく必要がある」と指摘する。
ガザ地区におけるハマス・イスラエル休戦合意は現在第1段階の最終段階に入っている。そのなかで留意すべきはヨルダン川西岸でのイスラエル軍の攻撃が「アイアン・ウォール(鉄の壁)」作戦の一環として展開されていることだ。イスラエル軍がジェニンの難民キャンプを「完全に包囲」し、装甲ブルドーザーが数箇所の通りを掘り起こしたと報じた。
最後に「復興支援」が挙げられる。サウジアラビアを筆頭に復興支援計画がある。しかし復興プロジェクトを実施してもまた直ぐ破壊されては仕方がない。復興にはイスラエルの破壊を阻止するための枠組み・条件などが必要だ。
日本の「国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)」がガザに工業団地の建設など有益な協力の実績がある。当面はパレスチナ人の地元産業を育成するためであるにしても、将来的には二国家共存のなかでのイスラエルにとってもプラスであるとしてイスラエルの理解を求める対イスラエル交渉などの柔軟な対応も必要となっている。日本の独自の役割の余地は決して少なくないはずだと清水氏は語った。
【2】「UNRWA活動禁止法」施行後、ポリオワクチン支援に多大なる支障

[筆者撮影]
◆「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA:United Nation Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East)」は1949年に登録されたパレスチナ難民への人道支援と保護の提供を苦境に対する公正かつ永続的な解決策が見つかるまで支援する任務に則り設立された。その活動国は実に幅広く、東エルサレム、ガザ地区、ヨルダン、レバノン、シリアなどを含むヨルダン川西岸で人道支援を行っている。1948年の紛争により家も生活も何もかも失った数万人のパレスチナ難民は未だ国内避難民(IDPs)であり続け、支援を必要として約75年が経つ。UNRWAはパレスチナ難民が人間開発の十分な潜在性を成し遂げることを助けている。教育、医療、社会保障、保護、難民キャンプ、インフラ、改善、マイクロファイナンスそして緊急支援といった良質なサービスの提供を通じて。活動費のほぼ全額が各国の寄付金および個人・団体の寄付によって賄われている。
2024年10月にイスラエルの国会が「UNRWAの活動に制限をかける2つの法案」を可決し、2025年1月30日に施行した。しかしながら国連本部でも本法案を巡り英仏露や欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表もイスラエルの「UNRWA活動禁止法案」に「深刻な懸念を表明する」声明を発するなど、国際社会は「パレスチナの人たちを守るためには、UNRWAが不可欠」という認識で、ほぼ一致している。
ある意味で緊迫性の高い現地状況の中で活動してきた「UNRWA」清田明宏 保健局長はその功績を讃えられ読売新聞社の「国際協力賞」を授賞。2024年12月の第3回総会の際に招聘された清田氏は講演で、映像を使用して現地での活動状況を語った。

[©︎UNRWA清田明宏保健局長]
UNRWAの活動を広く伝える中、活動の制限にも触れた。その一つが、2024年9月のポリオキャンペーン中の移動制限だ。UNRWAはガザ北部でポリオワクチン接種キャンペーンの支援のため12人の職員を乗せた車列は、ガザ南部からガザ北部に向かって移動していた。しかしUNRWAのチームはガザ北部の入り口にあたる、海岸沿いのアッラ・シード通りの検問所で立ち入りを阻まれイスラエル軍が国連職員の運転手を質問責めにした。状況は急速に悪化し兵士たちはUNRWAの車列の周りを囲んだ。そのうち、ブルドーザー1台が最初の車列のまえに土をもり、戦車が車列の最後の車の後ろに回り、車列全体を押してきた。国連上級幹部がイスラエル当局と交渉を続けたが、検問所には7時間半後止められ、最終的に検問所の通過はできず、ガザ南部に戻ったというエピソードを紹介した。
【3】「2国家解決」を実施する「世界連合(グローバル・アライアンス)」の動向
今次の第8回総会でも清田氏はZOOMでガザの最新状況を報告した。
「停戦合意」以降、物資は週に4,200トラックの運搬で食料は入手可能になってきた。10万以上のテントなどをUNRWA職員が現地で分配。住居環境もある程度は改善されてきた。
しかし公衆衛生面で飲み水や下水は入手できておらず、プレハブや建築に使うセメントもまだイスラエル側からの搬入許可が出ていないのが現状だ。昨年に引き続きポリオ・ワクチン接種キャンペーンを今年2月22日から開始した。ガザ全土で一斉に行われ、ワクチン接種カバー率は93%に上る。
清田氏は「『2国家解決』を実施する『世界連合(global alliance)』のようなものが『サウジアラビア』、『欧州連合(EU)』、『アラブ連盟』による2024年10月にリヤドで始まり94カ国以上が参加したことを皮切りに、2025年1月には85カ国がオスロに集い、同年2月には35カ国がカイロに集った。次回は今年3月にアンカラで開催されるという。『2国家解決』を実施するにはUNRWAとガザやヨルダン川西岸地区での大きなオペレーション抜きにはパレスチナ国家の確立はうまくまとまらない。今のポリオキャンペーンでも、約3分の1の人員をUNRWAが出しており、その重要性を再認することになるだろう」と訴えた。
また清田氏は「今、一番困っているのはUNRWAの名前で物資の搬入ができなくなったことだ。イスラエル側との交渉が出来ず、人道支援機関等に相談している。また、UNRWAの国際職員の移動を厳しく制限されてしまった」とUNRWAへの更なる支援強化を求めた。
既に施行された「UNRWA活動禁止法」は依然として危機的状況を生み出し、東エルサレムでは、イスラエル軍がカランディアのトレーニングセンターと学校の三箇所に侵攻してきたが圧力をかけてきたが、UNRWAは現在も支援を継続しているという。
「米国保守連合(American Conservative Union: ACU)」が主催する保守政治行動会議(CPAC)の席で米国のエリス・ステファニク次期国連大使は「UNRWAへの資金をただ止めるのではなく、我々はUNRWAを解体する」と発言していたという。UNRWAの活動が続き、「2国家解決」ができるよう人道支援活動の継続を願っている。
【4】ラザリーニ事務局長「UNRWA攻撃目的はパレスチナ難民の資格剥奪」

[©︎UNRWA Press Briefing]
他方、UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長が、2025年2月15日にドイツで行われた「ミュンヘン安全保障会議」の記者会見で、一時停止に追い込まれているUNRWAの活動状況について語った詳細を見ていく。
ガザ地区におけるUNRWAの活動は「停戦合意」という成功に貢献してきた。「保健センター」の再開とガザ地区を跨ぐ体力ポイント数の増加を含む医療の拡大。毎日のUNRWAチームが贈る18,000人の健康相談。占領されたヨルダン川西岸でのUNRWA職員の現地滞在。UNRWAの学校に通う50,000人の少年と少女への教育の提供。また保健センターの開設と運営。協調的な努力は偽情報の拡散を通じて含まれるその機関を解体中だ。UNRWAもまた、この戦争の犠牲者なのである。
UNRWAへのこれらの攻撃の目的はパレスチナ人難民から難民の資格を剥奪することだった。パレスチナ難民の保護と援助を受ける権利はUNRWAの任務から生じるものではない。もしUNRWAがパレスチナ難民へのサービスや支援を提供することを停止してしまっても難民の権利はそのまま残るだろう。UNRWAの任務の範疇ではない帰還または再定住のような永続的な解決策により重点が置かれることになろう。
重大な強制移住と市民の苦悩が報じられる中、少なくとも40,000人が北部難民キャンプから逃げ出している。UNRWAはイスラエル軍によって行使された空爆や装甲ブルドーザー、故意に制御された爆発、先進兵器などが増え続けていくのを記録してきた”
2025年2月12日にイスラエル軍が、捜索及び逮捕作戦中にベツレヘム近郊のアルーブキャンプ医療センターを臨時収容所として使用したと公表した。この事件は、2023年10月イスラエル治安部隊とパレスチナ武装勢力双方による、ヨルダン川西側のUNRWA施設への強制侵入のパターンを踏襲している。
パレスチナ武装勢力もまたUNRWA施設と民間のインフラ近くも含めた難民キャンプ内部での即席爆発装置設置とその使用など、北部西岸地区での活動も増加している。
イスラエルの立法府「クネセト」が2025年1月末に発効した法案は2つの領域をカバーするものだ。一つは東エルサレムをも含むイスラエル当局によると、UNRWAがイスラエル領土で働くことの禁止。もう一つはUNRWAとイスラエル当局間の接触禁止政策の強化。
後者はヨルダン川西岸とガザにおけるUNRWAの作戦に強い影響を及ぼす。しかしながらそれ自体はUNRWAの活動の妨げにはならない。
世界がUNRWAに認めているのは「クネセト法案」と鍵を握るドナーによる資金援助の停止のために内部崩壊が起きるのではないかということだ。このことはしかしながら空白状態を創り出し、将来的に更なる絶望と過激主義の種を蒔く可能性があるかもしれない。
ないしはUNRWAは政治的枠組み内の任務を徐々に結論づけ、権限を与えられたパレスチナ機関への公共のようなUNRWAのサービスを引き渡すことを通じて移行プロセスに鍵を握る役割を果たしてきたのである。
[©︎UNRWA ”Press Conference Remarks by UNRWA Commissioner-General Philippe Lazzarini at the Munich Security Conference 2025” (15 Feb 2025)]
【5】平和に生きる権利と「正義」のために求める5つの提言

[筆者撮影]
京都大学のジュマーナ・ハリル准教授はエルサレム出身で日本に移住して10年が経つ。
幼少期をインティファーダの時期に占領されていたヨルダン川西岸地区で育った。故郷の街では銃声が響きイスラエル軍が襲撃してくる恐怖を常に感じながら生きてきたという。
「あらゆることがあっても、私たちは希望を失っていない。私たちは戦争のためだけでなく、尊厳のため、平和に生きる権利のために、そして故郷に帰る権利のために闘い続けている」と訴えた。そしてその精神に基づきハリル氏は5つの提言を行った。
(1)ガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ人を支援するために日本が国際舞台で影響力を行使すること。日本は戦争の被害と犠牲を知る国であり、占領の終結とパレスチナの人々の生命を守るために力強く声を上げることができると信じている。
(2)日本には人道支援の長い歴史がある。日本による負傷したパレスチナ人への医療支援の提供を求める。
(3)パレスチナ人の研究者への支援。パレスチナの学生に対する支援や奨学金などの提供。「大学間学術交流協定」において日本はリーダーシップを発揮する国であり、私自身もそれで研究をすることができる。ガザの大学は皆、全て破壊される中で学生や研究者が多数殺害されている。私たちの未来を再建し再構築する土地にすること。
(4)日本がパレスチナを国家として承認すること。パレスチナ人が「自決権」と「主権」を有するという強力なメッセージを世界に発信することになる。
(5)日本の復興支援。日本は「復興」に対するノウハウを有しているので、日本の皆さんには1年あれば、ガザの人々が自分たちの土地に留まることができて民族浄化を止めることができる。
その上でハリル氏は「単に支援を求めるだけでなく、『正義』のために皆さんの前でお話しします。日本が平和への道筋を見出したように、パレスチナ人が尊厳を持って生活し故郷に帰ることができ、平和のために夢ではなく現実となるような未来をつくるために助けたい。自由というのは個人の自由ではなく集団的なもので、パレスチナにおける抑圧や戦争が世界中の人類の平和に悪影響を与えるのと同様にパレスチナ人の自由とは全ての人々の未来を明るくするものである」と呼びかけた。
【6】UNRWAを「テロ行為」と非難する広告プロパガンダが世界中に出回るー背後にイスラエル外務省からの賄賂か?
近年UNRWAを「テロ行為」と非難する看板と広告を世界中の主要な都市で見かけるようになってきた。この悪意あるプロパガンダは、背後関係に広告業者がイスラエルの外務省から賄賂を受け取っていたとの疑惑が持たれている。「Google」の広告キャンペーンは偽情報で満ち溢れるWEBサイトにUNRWAについてのその手の情報の出力先を変更する。これによりUNRWA職員の命が危険に晒される。特にヨルダン川西岸とガザ地区で。そして現地では273人のUNRWA職員が殺害されてしまった。
[©︎UNRWA ”Press Conference Remarks by UNRWA Commissioner-General Philippe Lazzarini at the Munich Security Conference 2025” (15 Feb 2025)]

[筆者撮影]
東京外国語大学の伊勢崎賢治名誉教授は「ハマスの『テロリスト』とか『テロ行為』という言葉は使わないという風になっていない。なぜなら『テロ』という言葉を使ってしまうと本当にそこから全てが始まったかのような印象操作になってしまう。確かに10.7はイスラエル市民が犠牲になった。ハマスもその戦争犯罪は問われるべきだ。ただしかし、それを遥かに上回る戦争がそれ以前からあった。これは『奇襲攻撃』という風に言葉をよく選んで使ってください。なぜなら『テロ』という言葉を使うと『人間ではない集団が仕掛けてきたのだ。だから交渉できない』という言説に変わってしまう。これが所謂『非対称の戦争』で、これは『停戦』を遅らせる言説になってしまう。ウクライナ戦争もこれと全く同じ構図だ。本当に『停戦』を1日でも早く迎えたいのであれば、その言説を止めることから始めるべきだ」と問題提起した。
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イスラエルによるガザ侵攻は非国家主体に対する自衛権行使の問題提起となり、自衛権を援用する国家の実行に対する国際社会の反応、すなわち「第3国の声明」をいかに評価するか?という問題認識も重要である。EUを含む多くの諸国が非国家主体に対する自衛権行使を承認し、2023年10月18日開催の国連安全保障理事会においてEUの代表は「我々は、この暴力的、かつ、無差別の攻撃に直面して人道法と国際法に沿って自国を防衛するイスラエルの権利を支持する」との声明を発表している。こうした「第3国の声明」の及ぼす戦闘行為への支持や先のプロパガンダは、それ自体が間接的に戦場に生きる人々の生命を奪っていくことに繋がる悪因となる。
米国のジョー・バイデン政権から引き続きイスラエル、米国とが「シャトル外交」を行っている。「シャトル外交(shuttle diplomacy)」とは、紛争の当事者同士が直接接触することなく、第三者が双方の当事者の仲介役を務める外交のことを指す。またアラブ諸国のうち7カ国の首脳、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、クウェートなどがリヤドで会談を行った。そこでガザの復興計画ビジョンを提示すべく調整していく。エジプトでガザの復興支援会合が開かれる可能性もあるため、その動向を注視していくことを外務省は示した。