少し前まではリアルなアイドルに会いに行き、ライブやトークショーを楽しむというのが当たり前の時代だった。もちろん現在でもそうなのだが、技術の急激な進歩やコロナ騒ぎでの生活様式の変化を通じて、様々なメディアが発達しリアルとバーチャルの垣根が取り払われようとしている。
そのうちの一つがVTuberの世界だ。そんなVTuberのイベントを取材した。
VTuberとはバーチャルYouTuberのこととされ、二次元のバーチャルキャラクターが配信する動画を指すことが多い。最近はこれらのキャラクター自身が人気を集め、リアルなアイドルのようにイベントで人を集めるまでに成長した分野でもある。
今回取材したのは、東京都調布市にあるJAPAN NEXT BANQUETで行われたVTuberイベントで、5部制になっていて1部当たり1名、計5名のVTuberが登場して「推しと直接会って話せる」をコンセプトに、人気VTuberとファンで「ビンゴ大会」や「1on1トーク」が楽しめる。あらかじめ好きなVTuberのチケットを購入して入店するが、チケットの購入決済、券面もすべてデジタルで完結するところが最新のメディアと技術を駆使した新しい分野らしい。
記者は第1部の「甘使もちな」さんのイベントに参加した。ちなみにこの名前は「あまつか もちな」と読む。名前の由来を聞いたところ、お団子モチーフで「甘」、メイドの設定なので使用人ということで「使」、海外や日本在住外国人にも人気が高いので、お団子は外国人には「もち」の方が知名度たかいから「もちな」ということになったようだ。
店内にはリアルな紙ポスターやデジタルサイネージが並び、1部が始まる時刻が迫るにつれて「甘使もちな」色になっていく。リアルなアイドルだと、ステージに登場してライブが始まることころなのだろうが、VTuberなので本人はネットの向こうからリモート出演だ。しかし現在の技術ではリアルタイムで表情や動きに変化を付けることができるため、あらかじめ収録しなくても、まるで目の前で話しているかのような雰囲気になる。
このイベントでは観客は大きなディスプレイで「甘使もちな」さんを見て、トークを楽しんでいるのだが、実は双方向通信が実現している。本人にはテレビカメラを通じて会場の様子が見えている。よってトークショーやビンゴゲームでは会場の雰囲気や推移をリアルで見ながら、イベントを進めていく。
よって、「甘使もちな」さんからの質問をテレビカメラを通じて回答者を指名してきて直接話すことができるようになっていた。これらは高速大容量通信が手軽に行えるようになったことと、映像や音声配信の遅延がほとんど発生しない技術に由来する。こうしてトークショーやビンゴゲームが進められていった。
「甘使もちな」さんは、配信で海外の人に日本語や日本文化を教えているため、外国人に対しても楽しんでもらえるようにトークショーでは英語も織り交ぜて話しかけられていて、母語を問わないちょっと不思議な空間になっていたのが楽しかった。しかもそんなに難しい英単語を使わずとも日本人にも聞き取れる理解しやすい英文だったので、聞いている記者でもわかって外国人といっしょに笑えるトークセッションだった。
さて、ビンゴ大会ではなかなかビンゴになる人が出ず、「甘使もちな」さん曰く「ビンゴってこんな空気でしたっけ?」と観客を笑わせる一幕もあったが、記者も当選してしまい日付・直筆サイン入りのポスターをゲットすることができた。
会場ではそれぞれのVTuberが企画したドリンクの販売も行われており、トークショー後の1対1でのトークやチェキ撮影(いずれもオプション)を済ませた観客が注文していた。
缶バッジ付きのオリジナルドリンクは「もちなのもちもち苺ミルク」で、本人にこだわりを聞いてみると「底にタピオカではなく粒わらび餅をいれたこと」「三色団子をのせたこと」「ホイップとフリーズドライベリーと抹茶ソース、苺ミルクの全体で花見団子を表現したこと」ということらしい。注文して自身のコラボチェキと撮影していた米国人に声をかけて記事用に撮影させてもらった。
リアルアイドルのライブのような熱気はまったくないが、むしろそれぞれが静かに自分の楽しみ方で過ごしているように見えたのが面白い違いだと感じた。またトークショー後には、同じVTuberのファンとして和気あいあいとこちらはリアルな交流を楽しんでいて、「甘使もちな」さんはバーチャルなのにファン同士がリアルなのが印象的だった。これまでにはなかったまったく新しい分野の本来の英語の意味での「talent」として活躍しそうだ。
最後に「甘使もちな」さんを以下に紹介する。
・日本語や日本のオタク文化を海外の人に教える日本語教師VTuber
・花見だんごの妖精
・公式の日本語教師の資格を2種類持っている(420時間養成講座修了、日本語教育能力検定試験合格)
・英語圏の人気Vtuberの配信にもゲスト講師として呼ばれるなど活躍
・先生になる前はゲーム会社で役員秘書をしていたり秋葉原でメイドさんをしていたらしい。
・基本は日本について知りたい外国人向けだが、英語を勉強したい人や海外のゲームが好きな人など日本の人にも楽しんでもらえる配信や動画作りを心がけている
・日本語教師になりたい人や日本語教師の仕事について知りたい人への個別セッション、そして企業に在籍する海外の従業員への日本語レッスンについてなどの問い合わせも受付中。公式サイトのフォームから日本語で問い合わせが可能。
・イベント出演のお問い合わせも受付中。今週末にはフロリダの人気イベントHoliday Matsuri 内Oshi OasisというVtuberセッションにも出演した。
※参考
公式サイト(英語)
https://www.mochijapa.com [リンク]
※写真はすべて記者撮影