日本から海外への水産物の輸出量は平成22年度は56万5千トンあったが、原発事故後の23年度は42万4千トンと激減。24年度は前年より若干持ち直したが、それでも44万トンで、事故前の水準に戻っていない。輸出額への影響はさらに大きく、22年度の1950億円から23年度は1736億円、24年度は1698億円と減り続けている。
続く放射性物質規制、風評 日本の水産物「輸出できない」(産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130715/trd13071508360004-n1.htm
日本産水産物の一部輸入停止をしている国は約10ヶ国。原発事故後に日本産の食品全体の輸入規制処置をしている国は、およそ44ヶ国にものぼるということだ。当然のことながら食品輸出産業は大打撃である。これらを我が国内では一律して『風評被害』と報道される。日本は正しく検査をしているにもかかわらず、諸外国のほとんどが認めてくれないという論調である。あるいは国内の流通の問題においても、『風評被害』という言葉は使われる。福島県産をはじめとする東日本産の食品に対する、消費者による根拠なき偏見があるという認識である。
輸出産業が打撃を受けているのは、諸外国による偏見であり日本いじめなのだろうか。東日本産の食品が国内で歓迎されないのも、すべて無知からくる偏見によるものなのだろうか。原発事故後に日本政府は放射能を完全にコントロールすることに成功しており、食品の安全性が厳密に守られているとするなら、『風評被害』という言葉も文字通りの意味をもつだろう。では、実際のところはどうだろうか。
農業用水に汚染水340トン 原子力機構が計画了承
日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(2011~12年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水340トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していたことが11日、共同通信の調べで分かった。原子力機構は、川に流すことを知りながら、排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承、地元に提出していた。47newsより引用(画像も)
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013071101002057.html
7月12日のニュースでもこういう有様である。肝心の除染作業においても、ずさんなやり方がまかり通っている。これでは諸外国の理解を得られなくても当然である。地元の信頼すら得られないのではないか。
また海産物に限っても、茨城県沖のスズキや、千葉県江戸川で釣り上げたウナギから、1000ベクレルを超える汚染個体が検出されたというニュースが記憶に新しい。これらを厳密に管理しコントロールすることは不可能だ。また、管理するような体制も出来上がっていない。事故から2年4ヶ月経過したからといって、汚染状況が改善されているということは言いがたいものがある。ますます悪くなることも予想される。事故後から一貫して予断を許さない状況にあるのだ。
『風評被害』や『食べて応援』などとある程度の意識のすり替えをすることは、国内ではそれなりに可能かもしれない。しかし海外の視線はシビアである。40ヶ国以上が日本産食品に厳しい輸入制限をしいている事がそれを証明している。