先日、気楽に愉しめる祇園祭の情報を書いた。今回はそれに引き続き、祇園祭に関わるイベント的なお話をしよう。といってもやはり肩肘張るものでもない。神事とも関係がない。娯楽映画を見ようというのだ。
その映画の名前は『祇園祭』。こんな映画の存在すら知らなかった。が、出演俳優をみてみて仰天した。
主演の中村錦之助をはじめ、岩下志麻、田中邦衛、志村喬、三船敏郎、北大路欣也、高倉健や美空ひばりに渥美清と、ちょっと信じられないくらいビッグネームが並ぶ。劇場公開が1968年。ご覧のとおりの大作であるから、かなりヒットしたようだ。しかしその後にまったく話題になっていない。それには理由がある。この映画は劇場公開の後に、ビデオソフトにもDVDにもならず、毎年の祇園祭のシーズンでしか観ることが出来ない映画になっているのだ。しかもその貴重な情報があまりに知られていない。これは文化的な損失ではないか。
当初は1961年、映画監督の伊藤大輔が中村錦之助主演を前提に東映に企画を提出したが、製作費が莫大になることがネックとなり、お蔵入りとなった。その後、映画界の斜陽や東映の任侠路線への転換などの影響から、1966年に錦之助は東映との専属契約を解消、最終的には京都府政百年記念事業として京都府の協力と京都市市民のカンパを得て、「日本映画復興協会(代表は中村錦之助)」の名の下、1967年、製作が開始された。しかしこの間、構想・企画段階からのスタッフの降板、監督の交代、錦之助自身の離婚や東映との労働争議、政治的妨害、関連団体からの圧迫、さらには経済的な曲折と、艱難辛苦の末、完成まで実に7年を経た労作である。映画会社主導でではなく、最終的な製作を日本映画復興協会が行ったため、映画会社の枠にとらわれず、東映 東宝 松竹のトップ、それにフリーの大物俳優が集結した豪華な配役となった。
封切りは1968年年11月23日、通常の邦画系映画館ではなく、洋画系映画館にてロードショー公開され、大ヒットを記録した。
作品の上映権は京都市が所持しており、その他権利関係が絡み、ソフト化の機会は得られておらず、祇園祭のシーズンに京都文化博物館・映像ギャラリーで行われる上映会が唯一の一般公開である。Wikipedia『祇園祭 (1968年の映画)』項目より引用
紆余曲折のあった制作経緯がその原因になっているようだ。
映画の内容は、応仁の乱で荒廃した京都を舞台に、様々な妨害にへこたれずに乗り越え、ついに祇園祭を復興させる人々を描いた話……らしい。らしいというのは、僕もこの映画を観ていないからだ。しかしあらすじだけ聞いていると、映画の制作までの道のりがそっくりそのままに思える。なにせ企画から7年もかけて公開にこぎつけた執念の労作なのである。それがまた現在での足かせにになって、観賞の機会が制限されてしまっているというのは皮肉なものだ。
しかしとはいえ、全く観れないわけでもないのが不幸中の幸いだ。祇園祭の期間の中で、先の記事で紹介した宵山の日程とかぶるように、京都文化博物館において3日間6回の上映がある。詳しいスケジュールは以下のとおり。
7月15日(月・祝)13:30~・17:00~
7月16日(火)13:30~・18:30~
7月17日(水)13:30~・18:30~
しかもたった500円で観れるのは嬉しい。大学生は400円。高校生以下はなんと無料である。15日や16日に宵山に遊びにいくついでに、この伝説の映画を観てみるのはどうか。僕も今年こそは観てみたいと企んでいる。自由に観賞出来ないのは残念だけど、毎年のこの時期だけに観れる映画という存在は粋である。『祇園祭』の映画を見た後に、すぐさま本物の祇園祭に参加出来るというのも、考えてみたら随分と幻想的な体験に思える。この時期しか観れない、逃すと来年まで待たねばならないという希少性が、かえってこの映画に伝説性を付与し、価値を高めているような気もしてきた。とすると文化的損失というのは言いすぎだったか。ここまで書いていて、自分でももう今年こそは絶対に観に行こうという気分になってきてしまった。
京都市やるなぁ~。
詳しくは京都文化博物館HPを参照のこと
http://www.bunpaku.or.jp/