「どうしてワタミを候補者にするんだ?」 過労死した社員の両親、自民党に抗議
田中龍作ジャーナルより引用
http://tanakaryusaku.jp/2013/06/0007454
ブラック企業の代表選手とされるワタミの元会長渡邉美樹候補への風当たりが強くなっている。
ネット上で自民党支持者を対象にとったアンケートでもその傾向ははっきりと出ている。
ワタミの渡邉美樹会長が7月21日に投開票される参議院選挙で自民党から公認されているが、28日深夜からオンエアされた『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)で、自民党の平沢勝栄氏が「公認に関し苦情がかなり来ている」「擁立をやめる形に持っていきたい」などと発言した。また、石破茂幹事長は週刊文春の取材に対して「党や私のところにも批判のメールや手紙が山ほど来ています」と答えている。
こんな状況を受けて現在「政治ブログ村」では「自民党支持者に質問です。元ワタミの渡邉美樹氏の擁立を続行した場合、あなたは自民党に表を入れますか?」という質問がされている。
自ら進んでこのアンケートに答えているだけに元々自民党の公認に違和感を覚えていた人や、昨今「ブラック企業」と言われるワタミ(渡邉会長はブラックであることを否定)に違和感を覚える人が投票者の多くを占めるであろうが、30日14時28分現在の暫定結果は以下の通り(総投票数404票)。
「自民党に投票する」:2.0%
「別の党に投票する」:87.9%
「棄権する」:10.1%アメーバニュースより引用
自民党支持者の中ですらワタミに対するイメージは最悪のようだ。さすがにのイメージダウンはこたえたのか、参議院選挙での大勝を狙う自民党内でも、記事内の平沢氏の発言にもあるように、擁立をやめようという動きが一部出てきていることが伺える。この状況に対して動揺をみせないのは当の渡邉美樹候補だけなのかもしれない。
さて、それほどまでにブラック企業というものへの批判が高まっているわけだが、ワタミは本当にブラック企業なのだろうか。最初に引用した記事をはじめ、各種の報道を見るかぎりはブラック企業である疑惑は極めて高いようだが、実際のところは内部を知らない人間にはわからない。渡邉美樹候補が各方面からの批判の渦中でも「ワタミはブラックではない」と堂々と主張できるのも、内部事情については未だ明らかにされていない部分が多いからだろう。
では視点を変えてみよう。どんな企業ならばブラック企業にあたるといえるのだろうか。これは実は簡単である。一言で済んでしまう。
労働基準法を遵守していない企業だ。つまり労働者の権利を保証せずに、不当に低い扱いをしている企業全般がブラック企業といえる。もっとも大きな特徴として挙げられるのが以下の3つ。
・法で定める休日や休憩が与えられない長時間労働
・サービス残業を含む労働時間に見合わない低賃金
・手当や福利厚生の低さ
ワタミがこれに該当する企業であるとするならばブラック企業と呼んで差し支えないということになる。だがしかし、こういうブラック企業が生まれてきた背景を考えたい。なぜ労働時間や賃金といった当たり前の労働者の権利が守られてこなかったのか。ブラック企業と呼ばれるものが跳梁跋扈することになったそもそもの原因。単純な話、政府が企業に対して労働基準法の遵守させることに積極的では無かった事に尽きるのではないか。労働基準監督署の対応も極めて鈍い。つまり戦後から長く政権を握ってきた自民党が企業と結託し、労働者の権利を保証するという政策をまるで推進しなかったことが現在の事態につながっている。
派遣労働という格差を作り出したのも当時の自民党の小泉政権だ。そして現在の安倍政権においては以下のような議論もなされている。
「準正社員」採用しやすく 政府がルール
企業が正社員とパートの中間的な位置づけで地域や職種を限定した準正社員を雇いやすくなるよう政府が雇用ルールをつくる。 人事制度上の扱いや雇用契約、事業所閉鎖時の対応で一定の基準を示し、解雇の際の訴訟リスクを減らす。日本経済新聞より引用
自民党政権下においては非正規雇用推進なのである。これではますます労働者の権利は剥奪され立場が弱くなるばかりだ。ブラック企業を生み出しているのは自民党の政策に他ならない。つまり自民党がブラック企業の代表を公認候補として担ぎ出すのは、歴史的にも党の方針としても必然といえる。今回についてはイメージダウンを恐れて渡邉美樹氏への公認候補の取り消しという結果になるかもしれない。しかしブラック企業と結託することを理由に自民党に票を投じない、ブラック企業と手を結ばないならば自民党を支持する、などという有権者の方々は、いまいちど冷静になって今回の件について考慮するべきではないだろうか。あなたの一票が新たなワタミを生み出しかねないのだ。
「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」とは歌舞伎の石川五右衛門の有名な辞世の句である。いくら世が変わろうとも、労働者の権利を奪い取るブラック企業の種も尽きないのかもしれない。しかし少なくとも自民党政権下では、これらのブラック企業が淘汰されることはありえないだろう。むしろ企業有利の新たな制度の導入によって、ブラック企業の合法化という方向へ進んでいくのは容易く予測可能だ。国民としてはこの状態を指をくわえて見ているしかないのだろうか。
「今までも自民党だったからこれからも自民党」そんな安易な気持ちでは日本の労働者がこれから先生き残っていくのは難しいだろう。日本国民は大きな岐路に立たされていることを知るべきだ。