前回は、動物病院の選び方を究極の選択っぽく、対極の選択肢を提示して書きました。今回からは、選択肢を示すのではなく、
獣医師として見た本音を書きます。そして、皆さんが参考となるかもしれないという情報をセレクトしてお届けします。
これは、あくまでも一獣医師の意見ですが、参考になればと思います。
動物病院を選ぶのは、結局は、飼い主さんであり、動物病院は、来院までは選ばれる立場にあります。しかし、選ぶ方の飼い主さんにはあまりに情報がないというのも事実です。
さて、何を基準にして通うことになる動物病院を選びましょうか?
1、友達が行ってる動物病院へ行く。友達からの口コミ情報を参考にする。
2、動物病院のホームページでの検索で、近くから探す。
3、口コミをネット上で探す。
4、直感を信じて、飛び込む。
どれも方法としては、間違ってないです。ただ、言われるがままの通院というよりも、
生涯通じて健康面の面倒を見ていただける動物病院を探すのは、ペットと暮らしだした飼い主さんの最初の仕事になるということが忘れないでください。
では、上の1~4の個々の方法で、みられるメリットデメリットを比較してみましょう。
ただ、最初に今日の結論を書いておきます。
「その先生の治療に愛はある?」
という一言に尽きると思います。
では、いきましょう。
1、友達が行ってる病院。今回は、これを見てみましょう。
これは、どんな先生かまで詳細に友達に聞けるので、いいですね。そして、自分に合うかどうかもわかります。周りの犬友達、猫友達が全員同じ病院へ行ってるというところはないので、比較する意味でも慎重に聞いてみてください。犬や猫以上に、エキゾチックアニマルにおいては、飼い主さんが非常に熱心で、時にこの友達からの口コミ情報は役に立ちます。
ここで大切なことを一つ。
獣医師(動物病院)との付き合い方が、ペットライフを大きく左右します!
だからこそ、あなたのペットの生涯を任せる獣医師探しに最も時間をかけていただきたいのです。基本は、かかりつけの先生を持つこと。です。そして、そのかかりつけの先生から、必要に応じて専門性の高い先生の紹介を受けられたらいいのです。
今の時代、科学の進歩は日進月歩です。それにすべての分野でついて行けるかと言えば、無理なのです。獣医師は、骨折の治療もすれば、胃腸障害の内科療法もやります。すべてにおいて精通しているとは限りませんし、そこまでは到底無理です。すべての分野を幅広くできるけど、自分の限界を知っている先生が理想じゃないかと思います。
「ここまでは、わかりましたけど、ここから先は、この検査が必要になって、うちではできません。検査のできるところをご紹介いたします。」
と、素直に言える先生がいいです。
「わかりません。」と、言えるのもまた、知識です。
「俺が言うんだから間違いない!」って、そういう先生で、獣医の世界で権威と呼ばれる先生はいません。
少々変わった先生方が多いのも獣医師の世界ですけど、この業界に染まると、動物的本能に忠実になり、そして、動物なみに素直になります。
(意外と獣医師って、素直な人が多いので、感情が素直に顔に出たりするので観察してみてください。)
そして、ひたむきになり、知識を深めていき、、、、そう言った先生は、短い言葉で、はっきりと物事を伝えたりします。
どのようなことでもそうですけど、長々と語られる言葉であっても、短い言葉であっても、大切なことは同じ文章の長さです。
「現段階ではこの病気(進行状況により、変わりますが)の治療法はないのです。」
と、はっきりと断言できるのも、その先生の知識の深さでもあります。
政治の街頭演説みたいに、長い言葉で洗脳するように、勢いと、甘い言葉に騙されないでくださいね。(怒られますかね?この表現。)
もしくは、不安を煽るような言葉を連呼する場合にも注意が必要です。
「このまま放置すると、もう長くないかもしれない。」とか、たいした検査もしてないし、納得いく説明もないのに、
こう断言された場合には、即、セカンドオピニオンです。
そんな簡単に死ぬ診断を下してあきらめられてたまりますか!と思いませんか?
もし、「もう、うちではだめかも。」と言われたら、飼い主さんは、「セカンドオピニオン」を求める権利がありますので、
他の病院で診断を仰ぎ、やはり、同じ診断であるかを見ていただけたらいいと思います。
セカンドオピニオンは飼い主さんの権利です。堂々と、担当の先生に言ってみたらいいでしょう。
そして、大学病院などを紹介していただけたらいいのではないでしょうか?
そんな簡単に、家族の一員でもある彼らをあきらめていいのですか?
その際に
「なに~!俺の診断が違うとでも言うのか!」
なんて、怒るようでは、いけません。そういうような先生は、自分LOVEなのでしょうか?また、飼い主さんが、怒らせるような言い方で、セカンドオピニオンの紹介を依頼してもいけません。言葉には、「相手への愛」は、不可欠です。その辺は、少し獣医師たちへのご配慮を・・・・。獣医師も配慮を・・・・。関係ないですけど、漢字の「受」という真ん中に「心」という文字を足すと、「愛」って漢字に似てませんか?「愛」は、心の真ん中で受け止めるものだと思います。
話を戻します。やはり言いづらくて、こっそりとセカンドオピニオンへ行く方もおられると思います。それはわかりますし、うちにも来られます。
ここで大切なことがまた、あります。
「セカンドオピニオンに行った先の獣医師が、前の獣医師を否定したら、その病院は×。」
です。前回も書きましたが、獣医師それぞれいろんな情報源で勉強をしています。
そして、得意分野も違います。できることをやってる病院がほとんどです。
いきなり、人を否定してはいけません。同様に、転院してきた方で、前の病院の悪口を聞きもしてないのに、語られることがあります。
きっとよほど、つらい経験をされたのでしょうけど、私は、そんなことはどうでもよく、気持ちよく治療したいのに、
すごく気分を悪くしてしまうので、「もう、その辺でいいですか?」と聞くようにします。
前の先生も一生懸命だったはずです。だから、簡単に一方的に聞いた話に流されないようにしています。
もう一つ。セカンドオピニオンを求めて行った動物病院が優れているわけではありません。
(検査機器が優れている場合などは、その分検査精度が上がるので、除く。何やってもわからなかったけど、MRIの検査で一発診断ということもあります。)
その理由はシンプルです。
前の病院での検査のデータなどが存在することにより、
そのデータを見せていただくことで、前の先生がどのような疾患を疑い、そして、投薬内容を見ると
どうやってそれを治そうかとして戦った記録があるから、次の病院では、疑うべき疾患のリストが絞られます。
ここを忘れていると、
「うわ~、前の病院は検査いっぱいしたのに、わからなかったのに、今回の病院は、検査も少なくてすぐに診断できたよ。」
となります。
時には、前の先生の治療が効果を出すまでの間に、耐えきれないで転院して、
転院後すぐに治療が効果を表し始めた、、、、なんてこともあります。
なかなか普通では、こんなことわからないのです。したがって、時として、友達からの口コミで
「あの病院へ行ったら、○○動物病院では治らなかった病気がすぐに治った。」
といったものがありますけど、これは、本当かどうか、きちんと疑う必要があります。
前の先生が必死で戦った薬の処方暦が、役に立ってることは実は多くあります。
あぁ、次は、この先生は、この薬いくだろうなぁ。。。と思いながらその薬にすると
治るということも珍しくありません。
私は、そのような場合には、正直に
「前の先生も次は、この薬に行く順番だったと思います。もう、大丈夫なので、いつもの先生のところに戻ってください。」
と言います。
戻るかどうかは、飼い主さんの判断ですが、できるだけ、必死で一緒に悩んでくれた主治医の先生に敬意を表すのが
セカンドオピニオンを語る医師のすべきことじゃないかと思っています。
実は、多くの先生がこうやっていたりします。夜間で診療をやっている先生も
朝には紹介状や治療経過証明書を作成して主治医に返す先生が多いです。移動によるリスクがない場合には、、、、ですが。
ここで、患者さんを引き込もうとする病院かどうかも、飼い主さんはわかりますね。
動物病院は、患者さんを奪い合うことは本来いたしません。
選ぶのは飼い主さんですから・・・・。
では、夜間まで診療してくれる病院がいい病院か?という話も出れきそうですけど、
その話はまた後ほど。
このようにいくつか例を挙げていくと、友達の口コミを聞く場合にも参考になると思います。
そして、何が真実かわからなくなったと思います。だからこそ、そろそろ混乱する前に結論に入ろうと思います。
医は仁術。
愛のある治療には、不思議と結果はついてきます(とは、私の言い訳)
私の尊敬する大学の先輩獣医師のモットーは、
「治りたいと思う患者さんに、治したいと思う気持ちで接する獣医師でありたい。」
です。
治療に必要なものって、なんでしょうか?
と聞かれたら、その子の苦痛を共有して、そしてそこから救おうとする執念と、愛情です。
では、今日の結論です。
ぜひ、友達に聞いてください。
「その先生のところに行きたいんだけど、その先生は、治療に愛はある?」 ってね。
実は、これだけでいいのです。
愛のある生活から、笑顔が生まれますからね。すべてが愛のあるものに包まれることが、どんな場合にも大切ですよね。