「『物語(ナラティブ)』戦術でテロ脅威を「脱過激化」!『パリ五輪休戦』を守れ‼︎」

  by tomokihidachi  Tags :  

[筆者コラージュ作成]

<リード>

2024年6月15日に「ウクライナ平和サミット」を主催する。国連で採択された2024「パリ五輪休戦」決議を以てしても、主催地パリが「ウクライナ戦争」「ガザ戦争」の地政学的「戦場」に変えられる脅威。1972年「ミュンヘン夏季五輪大会」中に起きたパレスチナ・ゲリラ「黒い九月」がイスラエル代表選手団を襲撃したテロ事件が今日の「ガザ戦争」にリフレインする。テロの脅威とは今や第4空間と呼ばれる「インターネット」を棲家とするフランス国内外の過激派テロリストの思想の脱過激化こそがパリ大会の治安脅威の根源的な対策に繋がる。ロンリーウルフ型のテロリストには「マクロン氏暗殺」を謀った者もおり油断大敵だ。その対策手段として「物語(ナラティブ)」戦術が効力を発揮する。「暴力的過激主義対策(CVE)」研究部門のコミュニティ構築力に焦点を当てたインド人初の米特使を務めたパンディッシュ氏の取組みがある。「メタ(前身Facebook)」に見られるコミュニティは特に若者に力を与える。彼らは「オンラインの過激派コンテンツ」の立場を弱め、それに代わる「ナラティブ」を大量に表示する、信頼できる「声」で埋め尽くすことができることによって「脱過激化」に有効に働きかけられたという。今も続く2つの戦争は、A.I.が仕掛ける「認知戦」であり「いいね!」で「全ての人を兵器化する」目的がある。一方、スポーツは「安全弁」として不平や鬱憤から逃避させる名目があった。スポーツの力とは、戦争当事国双方の緊迫感を少しでも緩和することに果たして繋がるのか?今も続く2つの戦争は「ソーシャルメディア(SNS)」がその新たな独壇場だ。人々を納得させ動かす「ナラティブ」の多くは戦死者を英雄視するヒロイズムや弱者の被害者意識に働きかける。ロシア帰属の国家主導型敵対サイバー攻撃者「ハクティビスト」も過去「『ソチ』『平昌』冬季五輪パラ」を狙い撃ちした。だがマクロン政権は「外国デジタル介入監視・防止機関(ビジュニム :Viginum)」の偽情報撲滅を伴う情報セキュリティーを充実させた。同氏肝煎の五輪パラ史上初のセーヌ川下りという「開会式野外観戦」に向けて治安脅威へ最大限の警戒レベルまで引き上げたフランス。「パリ五輪パラ休戦」決議に則りあらゆる脅威想定シナリオによる治安当局の警備磐石体制でマクロン氏の「平和」への願いは叶うのだろうか?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
<リード>
【1】「ウクライナ戦争」和平交渉の立役者マクロン仏大統領 鍵を握る中国の習近平国家主席
【2】「ミュンヘン五輪大会」テロ事件は現在の「ガザ戦争」にリフレイン
【3】「モスクワコンサート会場銃乱射テロ事件」が脅かす「パリ五輪パラ」
【4】「ソチ五輪大会」の際もサイバー攻撃に狙い撃ちされたロシアの過激派組織対策
【5】第4空間「インターネット」を居場所にするフランスのテロ傾向 「マクロン氏暗殺計画」も
【6】「スポーツの力」は戦争当事国双方の緊迫感をガス抜きし僅かでも平和を導くか
【7】「物語(ナラティブ)」戦術がテロ脅威の「脱過激化」を可能に
【8】「権力」の変遷「指導者」から「素人」の一般市民へ
【9】戦死者を英雄視し被害者意識を操る『ナラティブ』は『不可欠な兵器』
【10】仏「サイバーセキュリティー戦略」『ビジュニム(Viginum):外国デジタル介入監視・防止機関』は磐石か
<結び>
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【1】「ウクライナ戦争」和平交渉の立役者マクロン仏大統領 鍵を握る中国の習近平国家主席

 2024年6月15〜16日、スイス政府がビュルゲンシュトック (ニトヴァルデン州)で「ウクライナ平和サミット」を主催する。
同年先月の5月6日にフランスのエマニュエル・マクロン大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デ・ライエン委員長が欧州初訪問となった中国の習近平国家主席をパリのエリゼ宮殿に出迎えた。その席でウクライナ戦争を終わらせるよう、習氏に中国の影響力を行使してロシアのウラジミール・プーチン大統領の説得を促すよう誘い水を向けていたのだ。これに対し習氏は国連安保理決議に則り、パリ夏季五輪パラ開催期間中の「オリンピック休戦」決議を棄権したロシアのプーチン氏にもグローバルに呼びかけてみようとマクロン氏に応じた。実はマクロン氏はこれまでにもプーチン氏のウクライナ侵攻を翻意させるべく20回以上も訪中を繰り返し、首脳級トップ会談の和平交渉を辛抱強く続けてきた。欧州の中で最もウクライナ戦争の終焉のために体を張ってきた首脳だと言える。
 財政の結びつきを超えて、西側諸国の権力が特に頭を悩ませてきたのは、中国がロシアへ武器輸出し、民生用と軍事用双方に使うことができるようになってしまう機材に現存する制裁を回避しようとするのではないかと言う危惧だ。
 マクロン氏は「この危機を第三国に責任を負わせてそのイメージを汚したり、新冷戦を煽動するような用途に利用することには反対する」とあらかじめ習氏に釘を刺した。
 この時習氏は「中国は軍事支援を行なっていない」と述べたが、同年5月16日にロシア大統領として再選を果たしたプーチン氏が、通算五期目を務める初の訪問先として選んだ中国の北京で、習氏と首脳会談を行った。その際、ウクライナ情勢について習氏はプーチン氏と「政治的解決が必要」との見解で一致した。また習氏は「この問題について、中国の立場は明確かつ一貫している。それには国連憲章の目的や原則の順守も含まれている」とし、「中国はヨーロッパの平和と安定の早期回復を望んでいる」と記者会見で語り、プーチン氏も、ウクライナでの戦争が首脳会談で議題になったと認めた。「(ロシアは)ウクライナ危機を解決するための中国の努力に感謝している」と述べた。結果的にマクロン氏のウクライナ仲介和平交渉が表向きには実利を得た格好だ。

 だが、スイスが呼びかけて6月中旬に行われる予定になっている「ウクライナ平和サミット」には70カ国もの参加意思がある諸国の確認が取れているものの、
肝心のロシアには招待状さえ送っておらず、ウクライナのウォロディミフ・ゼレンスキー大統領も参加に難色を示している現状が各国の頭痛の種になっている。

 予てから懸念されてきたのは、たとえ「パリ五輪パラ休戦決議」が可決していても、その主催国フランスの首都パリが、ウクライナとロシア戦争、そしてイスラエルとハマス、パレスチナの繰り返される「ガザ戦争」によって地政学的な戦場に変えられてしまう脅威に晒されている現状認識をもっと強める必要性があるという焦燥感がある。

【2】「ミュンヘン五輪大会」テロ事件は現在の「ガザ戦争」にリフレイン

[筆者コラージュ作成]

 1972年9月5日に西ドイツで主催された「ミュンヘン夏季五輪大会」中にパレスチナ・ゲリラ「黒い九月(Black September)」がイスラエル代表選手団(コーチ、監督、審判含む)の宿泊する選手村を襲撃したテロ事件が起きた。映画「ミュンヘン」の導入部場面と専門家の方から提供を受けた事実に基づく資料から、当時何があったのかを振り返る。
 それは早朝5時前ごろ、入り口のゲートが閉鎖していた選手村の手前。黒にストライプの入ったスポーツウェアや、ラフでカジュアルなジーンズ、黒づくめの上下を着たアラブ系の髭を生やした青年たちが8人程、スポーツバッグやボストンバッグを肩にかけたまま中に入ろうと寄宿舎に帰ってくる通りがかりの五輪代表選手らを待ち伏せていた。イスラエル五輪チームはコノリー通り31番地に宿舎を構えていた。この家から外側のゲート25aフェンスまでの最短距離は約80mだった。同じ敷地内には、香港とウルグアイのチームも収容されていた。
 「手を貸そう。中に入るんだろう?」不意に通りがかりの飲み屋から朝帰りしてきた五輪代表選手らに外部から選手村を遮断していた高さ2メートルの金網フェンスによじ登るのを支えられアラブ系青年たちは集団でゲートを乗り越えなんとか寄宿舎に入ることができた。二人一組になり、互いの後を追って、地下通路を通過しイスラエル人選手の家に向かった。中庭を小走りに抜け、通路から建物敷地内に侵入すると、着ていたスポーツウェアのジャンバーや皮のジャケットを脱ぎ捨てた。寄宿舎の表玄関から慎重に慎重を期して音立てず建物内に続く表玄関を開けて入ると、両眼しか見えない覆面を被ったり、ニット帽を深く被り直した。バッグを持ってきた数人がジッパーを開けると、そこから覗く分解されたAK-47や自動小銃、ライフル、マシンガンを取り出して弾丸や弾倉を込め激鉄の感触を確かめた。サークルを組むと各自がお互いを軽く抱き合って囁くようにお互いの健闘を祈って鼓舞した。
 選手村のイスラエル代表選手団の各自の部屋では5時を過ぎた未明頃、テロ組織「黒い九月」のメンバーが外からドアをこじ開けようとする物音に異様だと思って様子を見に行った。寝巻き代わりの白の下着シャツと膝もとまでの白のトランクスといった就寝着のままで。イスラエル代表選手が内側からドアを開けたわずかな隙間から、テロ組織のメンバーが構えたライフル銃を差し込み入れると代表選手がすぐに気づき、撃てないようドアごと閉めてテロリストが入室できないようにドアノブを強く引き続けた。
 顎髭を生やしたミディアムヘアの彫りの深い顔つきのテロリストたちが全員でドアをこじ開けようと群がった。だが対置した隣室で尋常ではない物音を聞き、白のノンスリーブシャツ姿で眠りについていた別のイスラエル代表選手の同胞が目を覚まして飛び起き、何事かと外へ飛び出してきた。黒づくめ覆面姿のマシンピストルで武装したテロリストたちを視界に捕え、一瞬凝固した。その直後…

 立て続けに弾倉から弾き出された弾丸の銃声が耳をつん裂き、同時にこぼれ落ちて床へ転がる薬莢が乾いた音を立てた。
 
テロリストに抵抗して命を最初に落としたのはイスラエルの代表選手団のうち、レスリンングコーチのモシェ・ワインバーグ氏とウェイトリフティング選手のユセフ・ロマーノ氏の2人だった。「ミュンヘン夏季五輪」選手村の寄宿舎には警備員は確かにいた。今大会のため創設された水色のユニフォームを着た市民警備隊が選手村で特別な任務を任され特殊訓練を受けていた。だが警備隊はパレスチナ・ゲリラの侵入を酒に酔ったどこかの国の選手だと思い込み気付かず、その日の明け方4時55分頃コノリー通りの方角から、警備局の様々な巡回部隊が一斉射撃のような音を聞いた。この状況は直ちに無線で、五輪選手村の刑事警察の監視員などに報告された。警備隊と警察はすぐに現場であるコノリー通り31番地に向かった。家の中に突入後、玄関でピストルを振り翳した人物に呼び止められた。上下白の就寝肌着姿に白の色が見えないほど血まみれで穴だらけになって引きずられた血痕を残し冷たい床にうつ伏せで転がっていた遺体がやっと発見されたのだった。この時奇襲されたのは何も選手だけではなかった。標的にはイスラエルの選手に付いているコーチやレフェリー、審判も含められていた。
 
 午前5時30分頃、2階のバルコニーに顔を黒く染め、サングラスをかけた男が現れ、ドイツ語で「イスラエルチームの選手らは人質として拘束する」と言った。五輪史始まって以来の未曾有の大惨事だった。パレスチナ・ゲリラのこの時の要求は「イスラエルの軍事政権がアラブ人政治犯200名を釈放しないなら人質を殺す」という声明が出ていた。「世界の革命分子よ、団結せよ!」と。
 
 人質にされたイスラエル代表選手団の被害者は手榴弾で、守ろうと戦った警察官も、犯行に出たパレスチナゲリラのテロリストも全員が死亡した。
 しかもその直後の9月、なぜかイスラエル軍はレバノンに侵攻している。
 
 「黒い九月」の動機は「イスラエル政府の拘置している政治犯200人の釈放」だったというが、今日のガザ戦争が脳裏に引っかかってリフレインする。
 

【3】「モスクワコンサート会場銃乱射テロ事件」が脅かす「パリ五輪パラ」

[筆者コラージュ作成]

 時を戻そう。2024年3月22日にロシアの「モスクワ郊外コンサート会場銃乱射テロ事件」が起きた。「クロックス・シティーホール」の円形劇場型ワインレッドの座席の上階から階下座席正面の舞台に向かって、悲鳴をあげ、雪崩のごとく逃げ惑う観客たち。銃を乱射してくる男がホール玄関口から入り、そのまま中心部の会場席内に侵入した。まず、2発の銃声が鳴り響き、次いで3発目がやや長めに反響した。さらに4発、5発、6発、7発、9発と発砲は続き、黄色い金切り声の悲鳴が後を引くように会場内に響き渡った。左右両側にストライプの走ったスポーツウェアを着た口から顎まで髭を生やした男が複数名のテロリストと共に犯行に及んだと見られる。チケット販売所の手前、進路をスムーズに促すためにポールで仕切られている表玄関入り口付近には、周囲にあった椅子なしテーブルの下に黒いスカートの女性やニット帽にジャンバーを着た男性など4人くらいがこうべを垂れ身を隠していた。劇場の奥から全力で駆け抜けて逃げてくる観客たち。中には白旗を掲げながら走り去る少年も見受けられた。さらにコンサートホールには火の手が上がり、建物の上層部が完全に焼け落ちて剥き出しの鉄筋だけが無造作に外の風に晒され穴だらけの外観に変わり果てた。報道によると、130人以上が死亡したという。

「ISIS-KP(イスラム国ホラサン)」が「(我々への)金曜日の報復だ」と犯行声明を出した。「ISIS-KP」は2015年にアフガニスタン、パキスタン、イランで活動していた前身だった。イラクやシリアで領土を巨大に拡大させる緊急状態の最高潮の時に制御する上で「イスラム国(ISIS)」が担務していた分局として機能していた。ISISの自称「カリフ制度」とするイラクとシリアでの崩壊以来、5年をかけてその集団はテロリストネットワークへと変遷していった。中東、アフリカ、中央アジア、東南アジア含む、世界中にそのテロリズムは波及していったのだ。
ISIS-KPは中央アジアの作戦時にISISに加入されたとされており、その地域では最も残忍で凶悪なテロ集団と見做されている。
ロシア史始まって以来最悪の銃撃テロ悲劇となったこの事件を機に、フランスのマクロン氏は治安機関を司どるジェラルド・ダルナマン内務相に「最大級の警戒アラートを発出せよ」との指示を出した。パリ五輪を目の前に控えての惨劇にマクロン氏もウクライナ和平交渉のみならず、自国主催の国際行事に向けてもその全ての治安脅威に万全を尽くす必要がある。

 2024年ご当地「パリ夏季五輪パラ大会」の開会式は7月26日に五輪史上初の「セーヌ川下り」という野外開催が予定されている。開会の期日が迫る中、セーヌ川では「トライアスロン競技」や「マラソンスイミング競技」が行われる。
 約100年前からフランスではセーヌ川に下水をそのまま流すなどして水質汚濁の環境問題が長年の懸念とされていた。しかし2024年の「パリ五輪パラリンピック」を契機にその悪しき慣習を正し、下水は濾過や処理の機能がついた設備などを用いるよう国策として、セーヌ川の水質浄化を保つように法整備が図られた。
 フランスは「エコな五輪」「広く開かれた五輪」を掲げており、「選手村」にはエアコン設備もない。これは地元フランス人にとっては常態化していることだ。
 パリ五輪パラの「選手村」では「東京五輪2021」に続き、各選手にダンボールベッドが提供されている。
 「野外開会式」開催を目論む「セーヌ川」ではボートや船に選手ほか大会関係者のみならず、国際的に報道陣やフランスの治安当局からフランス警察や憲兵、フランス軍までも乗船する。公開されたイメージ画像を見ると、パリ市を訪れる観光客に人気のセーヌ川クルーズを楽しむ遊覧船「バトー・ムシュー」や公共水上バス「バドビュス」の類種もまみえる。赤・青・緑・黄とグラデーションで鮮やかに色彩豊かな類種のボートやカヌーのような乗り物が連なっている。パリ五輪代表選手らは入場行進の代わりに、このセーヌ川でおよそ160隻の船に乗り、ノートルダム大聖堂や、ルーブル美術館などの観光名所の近くを臨みながらアレクサンドル三世紀橋方面へ約6キロ下っていくという。

 中にはエリート将校がフランスの街並みなどを形作る建物の屋根などに狙撃手(スナイパー)として潜む「テロ対策」もあり得るとの報道もある。だが、「ウクライナ戦争」や「モスクワコンサート劇場銃乱射テロ事件」を受けて、緊迫しているフランスとロシア間の外交関係を修復する狙いもある。マクロン氏はテロ対策も視座に「(野外開催には)プランBやプランCの用意もある」とし、「フランス国家情報セキュリティーシステム庁(ANSSI)」のヴィンセント・シュトルーベル長官も同様の発言を示した他、「最悪な場合のシナリオ」とは「小規模な攻撃が殺到しており、パリ五輪中に重要な役割を果たす重要な交通機関やエネルギーインフラを狙うより深刻な攻撃は予想されていない」と楽観視していると語った。
 だが他の専門家の中にはパリ五輪のための電子チケットシステムあるいは大会スポーツ会場のためのITネットワーク、ないしは(試合)の得点結果を表示するシステムこそが標的にされる可能性があることを示唆した者もいる。
       

【4】「ソチ五輪大会」の際もサイバー攻撃に狙い撃ちされたロシアの過激派組織対策

 [筆者コラージュ作成]

 遡ること2014年の「ソチ冬季五輪大会」では「コウカサス・アノニマス」がDDosサイバー攻撃を行った。DDosとは、複数のネットワークに分散する大量のコンピューターが一斉に特定のサーバーへパケットを送出し、通信路を溢れさせて機能を停止させてしまう攻撃のことだ。
その「知能確信犯」でさえも、サイバー攻撃の動機として、「19世紀にツァールロシア軍の申し立てで100万にも及ぶサーカシア人(北コウカサス民族集団)の大虐殺を行なった戦争」があり、「ソチに報いを受けさせる」と宣戦布告したのである。
 ロシア当局は3つの理由から巨大な地政学的脅威として、⑴ロシア経済に計り知れない損害をもたらす ⑵サイバープロパガンダを通して即時かつ容易にグローバルな支援を得て労力を再編できる ⑶テロ指導者の手に負えない独立した何の地位もないテロに走るものが国際政治を変えられる可能性がある。と規定していた。
当時、プーチン氏は「国家テロ対策委員会」を招集。ロシア当局は、イスラム過激派のワッハーブ派による人材採掘とダゲスタン、アブハジアにおけるテロリスト養成所の調査に乗り出していた。コウカサス地域全体がサウジに資金源を持つ「ジハード聖戦士」のテロリストによって侵略されており、1991年の旧ソ崩壊から、その地で主導権を掌握してきた。それはサウジアラビア原理主義者誕生の原因となる、「ワッハーブ派」によるロシア国民のテロリスト雇用という明白な事実があった。こうしたサウジの役割には実は「英国」が重要になってくる。10年以上も英国はモスクを通じてアフガニスタンで傭兵を雇い、テロリストを養成することを促していた。シリアのアサド政権に対抗する市民軍での戦いを経験した後、南ロシアへ戻ってきたのは、チェチェンのジハード聖戦士だった。

 ロシアがこのような対過激派組織の取り締まりとして果たしてきたのは、2002年7月25日付「連邦法N114『過激派活動への対抗について』(以下、「2002年連邦法」という)」を法的根拠とする。同法は全17ヶ条から編成される。
 第17条「過激派組織対策における国際協力」、第9条「過激派活動の禁止」、第10条「活動停止を命じられた組織は集会、選挙への参加の禁止及び銀行口座の利用などを制限される。」
後に2007年7月24日付「連邦法N211『過激派活動への対抗分野における当局政策に関連した、特定の立法行為に関する改正について(以下、2007年改正法)』」を経て、2020年10月15日付「連邦法N337『連邦法『過激派活動への対抗について』」を法的根拠とする「活動制限手続きの迅速化」第9条及び第10条の改正(以下、「2020年改正法」)では裁判所が過激派と見做した場合、3日間以内に司法機関に送付しなければならない。と規定。
 さらなる「2020年改正法」では「2002年連邦法第9条『過激派組織』」に対して裁判所が活動停止を命じる権限を規定する条文を第6項の文言「連邦国家登録機関のウェブサイト上で」に改める。また第7項「この連邦法が規定する裁判所が解散または活動停止を決定した社会団体及び宗教団体などのリストを維持する手続きは、連邦国家登録機関が定める」と付加する。
 また同法第10条「過激派組織の選挙参加禁止及び活動停止命令に対する『不服申し立て』の権利」を規定する条文を第7項に付加。
「社会団体及び宗教団体の活動停止を命じる決定の写し、決定に対する『不服申し立て』に対して効力を有する裁判所の決定の写しは、法的効力発生から3日以内に送信されなければならない」と規定した。

 このような従来からのロシア史を含む世界史上で学び記憶されるような過激派組織の起こす国際テロ事件レベルの問題への対策を法的に何重にも縛りをかけた政策をプーチン政権は行ってきた。激動する世界情勢の危機に油を注ぐような「監視社会」のトップでもあるプーチン氏。果たして「ソチ冬季五輪」で俄かに焦点が当てられた対サイバー攻撃については、いかに対抗策を敷いてきたのか?

 ロシア刑法典第25条「テロ行為」における同典第205条1項「テロ活動の支援」及び同典第205条2項「テロ活動やテロの公的正当化への公共煽動」がテロ目的でサイバー空間を誤用しかねない状況にある。これを受けて、同法第272条「コンピューター情報への不正アクセス」及び同典第274条「コンピューターと情報の記憶、処理、または送信する手段と通信ネットワークの不適切な使用」によって、法規制の網をも掻い潜ることができてしまう抜け道をテロリストに与えかねないとの危惧がある。
だが、ロシアは既に次の3機関とサイバーセキュリティー対策連携を行っている。その内訳は…
⑴対サイバーテロ国際多国間提携(IMPACT)⑵欧州安全保障協力機構(OSCE)テロ対策班 ⑶国連国際電気通信連合の分派だ。
 

【5】第4空間「インターネット」を居場所にするフランスのテロ傾向 「マクロン氏暗殺計画」も

[筆者コラージュ作成]

 こうした過激派テロ組織にフランスもまた標的にされる傾向にある。
 既存のテロリズムと違い、2020年代から現在に至るまでテロの起きる場所がいわゆる第4空間と呼ばれる「インターネット」の中を居場所にしているティーンエイジャーや20代の素人がオンライン上で議論し、各自の役割を決め合う場へと変遷してきている。実際には犯行準備に銃火器を使って射撃の予行演習をするために初めてリアルな世界で顔合わせをしているという現実が浮かぶ。

 4人のネオ・ナチテロリスト集団が2017年から2018年にフランス在住のユダヤ人を標的にしたモスク攻撃を企てた。2018年に捜査が始まった頃には主犯格のアレクサンドル・ギレット(Alexandre Gilet: 22歳)は当時、フランス南東部の旧ローヌアルプ地域圏にあるグルノーブル市でボランティア副憲兵を務めていた。
 申し立てられた罪状はかつてよく使われてきた「爆破装置」を製造する用命を受けたことで、花火屋の経営者がギレットと思しき男の注文を聞いて疑念を抱き、警察に連絡を取ったことで犯行が明らかになった。
 起訴されたギレットと他3名の犯人は「ワッフェンクラフト作戦(Operation WaffenKraft)」と呼ばれる「極右のネオ・ナチプライベート・オンライン・ディスカッション・フォーラム」の一員だった。総数4人の犯人の中には、陸軍大佐の息子だったエンジニアリングの学生と同様に農場労働者も含まれていた。そこで「素早くテロリスト計画に取り掛かることを議論した。」その「ワッフェンーSS(Waffen-SS)」とはアドルフ・ヒトラー氏によって創設された党指導部に対する特別護衛組織として、軍事部門におけるエリート親衛隊「シュッツシュッタッフェル(SS: Schutzstaffel)」「トーランコープフ(TOTENKOPF)」のことだった。
 ギレットが取り調べて述べた発言の中に過激なものとして「バタクラン劇場(2015年11月パリ同時多発テロ事件)の時よりさらに最悪な大虐殺を果たしたい」という決意をしていたことが明らかになった。
 このことが参照にしているのは、前述の「パリ同時多発テロ事件」で連携攻撃をされていた間中、バンドの「イーグルス・オブ・デス・メタル」によるロックライヴの場で90人が殺害され、負傷者も出た、イスラム国(IS)による犯行声明だった。
 ギレットたち、過激派グループの「オンライン・ディスカッション」は「反ユダヤ主義」と「同性愛嫌い」だったというコメントの書き込みと同様にイスラム教徒や共産党員への憎悪が含まれていたとする申し立てられた話題だった。議論された標的の中には、混合地域やモスク、ユダヤ人グループの集会、空軍基地、「人種差別と反ユダヤ主義に反対する国際連盟(LICRA)」の事務所や、超極左党の「不服従のフランス(FI, LFI)」のジャン・リュック・メランション(Jean-Luc Melenchon)党首による再集結も含まれていた。
 
 2014年フランス政府は「テロ対策強化法(テロリズムの対策に関する措置を強化する2014年11月13日の法律2014-1353号)」を制定したが、「インターネットによるテロの拡大」を念頭においたものである。背景には「メディアによる聖戦(Djihad mediatique)」と呼ばれるインターネットを用いた広報の拡大が挙げられる。また「爆発物の作成方法」など「テロの技術」を教えるサイトもあり、国内に留まるテロ予備軍の過激化も懸念されてきた。この国内のテロ予備軍が国外のテロ組織と連携せずに「ロンリーウルフ型」と呼ばれる単独テロ犯の傾向も強まってきた。
 2015年に起きた風刺新聞シャルリー・エブドー襲撃事件などが勃発し、テロを礼賛、煽動するようなネット発言が禁じられた。これを受けたフランス政府は2020年12月9日にイスラム過激派対策の新法案を閣議決定した。個人を標的としたインターネット上の憎悪発言を取り締まる狙いがある。国の法や価値観が浸透しない「分断社会」が生まれることを防ぐためにイスラム教徒への圧力を強めるとの批判に対する配慮から、宗教名を盛り込まず、「共和国原則の尊重強化法案」と名付けられた。
最近2020年10月29日にはフランスのニース市でナイフを所持した過激派に触発されイデオロギーが先鋭化した加害者が複数名、非人道的な「ロンリーウルフ型」のテロ事件を引き起こしている。
 青い地中海とアルプスの山脈に挟まれたコート・ダジュール地方にあるニース市の教会に犯人は午前9時に入ってきた。そして10分以内に3人の命を次々と奪った。犠牲者の一人は報道によれば70歳の女性。無惨にも喉を掻き切られたか斬首された遺体で発見された。また40代の別の女性も重傷を負いなんとか教会から走り出して逃げてきたが第2の犠牲者となってしまった。目撃者は教会の反対に位置する「ホットブリオッシュ・レストラン」の経営者でデイヴィッドという名だった。デイヴィッド氏は教会へ赴き、呼び出されてやってきた市警を見たという。「大聖堂のそこには斬首された女性の遺体があるだけで、それが全てだった。私もショックを受けていまだに縮み上がっているよ」と恐怖を語った。
 加害者はブラヒム・アウサウイ。警察によって肩を撃たれ病院に搬送された。アウサウイは21歳でチュニジア国籍であり、イタリア領最南端の島「ランベドゥーザ島」を経由して10月初旬にフランスにたどり着いた。ニース市長のクリスチャン・エストロジ氏は、「アウサウイが警察によって逮捕され手錠をかけられている間にも数回、『アッラーフ・アクバル(アッラーは最も偉大なり)』を意味するイスラム教の慣用句を呟いていた」と語った。
 同日ほぼ同刻の午前9時前後、26歳で刃渡り30cmのナイフを手にしている男がリヨン市の停留所近くで目撃された。伝統的なアフガニスタンの衣服に身を包んでナイフを所持した男がフランスの旧ローヌアルブ地域圏にあるリヨン市で逮捕された。リヨン市警は犯人の男がフランス国家セキュリティー・サービスだという素性であることを「深刻視」した。
また同日、ナイフを持ち出してアヴィニョン・ストリートで通行人らを脅威に晒していた別の男が警察によって射殺されたとの報道があった。銃撃は午前11時15分に起き、ニーステロ発生から丁度2時間以上が過ぎていた。
 さらに同日、サウジアラビア人の男が、「フランス領事館」に鋭利な刃物を持ち込み警備員を負傷させたことを受けてサウジ首都リヤドに次ぐ大都市ジェッダで逮捕されている。

 その2週間前の10月16日には、中学校の歴史の教師だったサミュエル・パティ氏(47)が、「スピーチの自由」に関する議論を行う自身のクラスの授業で生徒たちに預言者ムハンマドの一例も含む風刺画を見せた。その後に、彼の勤務する中学校の外に、パティ氏の斬首された屍が置かれるという事件が起きた。
 日本でオーバーラップするのは、大阪府池田附属小学校で起きた児童斬首遺体事件だろう。
フランスでその殺害を行った犯人の計画とは、実は「マクロン氏暗殺」を想定したものだったのである。
そのマクロン氏は同29日木曜のランチタイムにニース市に着いた。そして10月16日にコンフラン・サント・ノリーヌでテロ被害者となったパティ氏の惨殺を受けた時もマクロン氏は「フランスはイスラム原理主義者に対し『実存する』戦闘に関りを持たれてきた」と述べた。

 直近のテロリズムは襲撃場所もフランス南東部のアヴイニョン市にあるクレテイユ(Creteil)モスクだけではない。ロンドン北部のフィンスブリー・パーク(Finsbury Park)モスクのように国境を超えた犯行も後を絶たない。何より深刻なのはフランスの「教会」までもが標的にされ、実際に犠牲者を無数に出してしまったことだ。
 「フランス警察組合国家警察同盟」の一員のデイヴィッド・オリヴィエ・レヴェルディ氏は「治安部隊は過去数日間に『テロリストの脅威に焦点を当てろ』」と警告していた。また「警察官とは市警とフランス国家警察に分かれる。そして迅速に役割分担をしなければならないのだ。そうすれば加害者があらゆる重軽傷者や死者をさらに多く出す杞憂が現実になる前にその先鋭化した過激派の個人を無力化することができたはずだろう」と付言した。
 フランスでは内務治安部隊、国家警察、「フランス国家警察特別介入部隊(RAID)」、特に市警が、過激派の攻撃者を迅速に無力化する任務についている。
マクロン氏による風刺画新聞社「シャルリー・エブドー」による物議を醸す「ムハンマドの風刺漫画」の刊行へのコメントと支持は、イスラム世界を股にかけてほとばしる怒りの抗議デモを生んだ。マクロン氏の写真を燃やし、フランス産製品の不買運動のボイコットにまで発展していくことになる。

 強気な発言と手練手管の政治の高い求心力で知られるマクロン氏だが、それが一因となって近年も頻繁に起き続けるテロのその背景を紐解く必要がある。
 9.11以来、イスラム教嫌いは欧州中の至るところでイスラム教徒がテロ事件や戦争に触発されて過激思想の先鋭化がテロに走らせる現実になった。
 2023年10月にオーストリア・ウィーンに拠点を置く「欧州基本権機関(FRA: European Union Agency for Fundamental Rights)」(※「欧州人権差別・外国人排斥監視センター」の後継)の前事務局長で現職の欧州評議会マイケル・オフラハーティ人権担当委員が政府に警告した。「イスラム教徒を含む欧州の系統のアフリカの人々は持続的な人種差別、ハラスメント、暴力などの課題に直面してきた。国連が呼びかけたイスラム教嫌いの記述も文書化されているにも拘らず、欧州連合(EU)はその域内全土を股にかけて反イスラム教嫌いの怒りと憎悪の感情が燃え上がっていることに善処してきたのか?」と。
 欧州委員会による承認が降りた後、EU執行部門とフランス、ドイツ、オランダを含む締約国が取りまとめた共同宣言には「反ユダヤ人、反イスラム教徒憎悪者が等しく非難されるべきであり、翻って欧州に在住するイスラム教徒を我々は『同胞の市民』として歓迎する」との記述を盛り込んだ。多文化、多宗教のEUの現実にとって、そんな「包括的EU」と呼称できるような主導権を通じて採択すべきものを模索してきたのだ。
レイシズムの全ての顕在化に取り組む力と権威を掌握している「欧州基本権機関(FRA)」は「人権と司法」の番人として逆に「権力」を行使できる。

 EU政府の中にはテロリズムや過激派、イスラム教徒と繋がっているものも存在する。一例としてハンガリー共和国のヴィクトル・オルバン首相はテロリズムに移民の繫がりがあり、極右や反イスラム教のレトリックを利用し続けているためEU主要締約国のマジョリティーの政治家からは声もかけられなくなった。
 ドイツ史のユダヤ人に対する極右の暴力にも拘わらず、ドイツの「社会民主党」と「緑の党」における大物たちは暗黙のうちに全てのドイツ系を含む欧州全土のイスラム教徒たちの国家における反ユダヤ主義の高まりに関して責任を負わざるを得なくなった。

 2024年4月上旬のインタビューでマクロン氏が「『国際オリンピック組織委員会(IOC)』を支援する決断を下した。ウクライナ侵略にも拘らず「ロシアのアスリートらに母国ではなく中立の個人としての旗の下、パリ五輪大会で競技を行うことを認める」という意向を語った。
 マクロン氏は10.7以来、ガザで攻撃の応酬が続いているにも拘らず、イスラエル国旗の下でイスラエルのアスリートたちが同じくパリ五輪大会に参加できるよう誓約を遵守している。しかしながら、「我々は『イスラエルが攻撃している』とは言うことができないでいる。」とマクロン氏は述べた。「イスラエルは今ガザで応戦しているテロリストの攻撃の犠牲者だった」と。その立ち位置は議会で満場一致の支持を得ていない。
 同月30日、フランスのセーヌ=サン=ドニ県のコミューン、サン=ドニの郊外、パリ五輪大会のパリ五輪組織委員会本部前に、約300人を超える親パレスチナ派デモ抗議隊が集結した。波打つパレスチナの旗とスローガンの詠唱、ガザ戦争を動機とするパリ五輪大会への「イスラエルの組織参加」に抗議する集いであった。
デモに参加していたユーロ・パレスチナ活動家グループのメンバー、ニコラス・シャーシャハニ氏は「ロシアとベラルーシを五輪から排除すべきと決めるのに彼らは4日以上もかからなかった。私たちはイスラエルの代表者を歓迎する準備をしているの」と言う。
 フランスは多くの親パレスチナ派が10.7以来行進して抗議活動を起こしているのを目の当たりにしてきた。フランス警察はソルボンヌ大学から50人の学生を排除した。同月23日には「シアンスポ」で知られる「パリ政治学院」で抗議のために親パレスチナ派の学生たちが円形劇場を占拠しようと試みていた。パリ地区にあるフランスの2つの名門大学でも大学のキャンパスを占領しようと抵抗してきた学生と警察の悶着が報道された。以前に米国のUCLAやスタンフォード、コロンビア大学で巻き起こった大学生による「ストップ・ザ・ガザ・ジェノサイド」の抗議デモはグローバルに波及していき、日本の東京大学でも夜のキャンパスに同趣旨でガザのジェノサイドを止める声をあげる集いに学生らが参加した。

【6】「スポーツの力」は戦争当事国双方の緊迫感をガス抜きし僅かでも平和を導くか

[筆者コラージュ作成]

 そもそも「オリンピック休戦」は2024年7月26日から8月末までの「パリ五輪パラ大会」の開催期間中と、さらにその先も見据えた期間に、戦争国家同士の敵意を和らげ、戦争を止めるために呼びかけられる。1992年、IOCは古代ギリシャ伝統の復活として「平和祭典」を掲げた近代五輪大会のパリ出身創設者ピエール・デ・クーベルタン氏のレガシーを遵守するために動いてきたものだった。
2018年、韓国で主催された平昌冬季五輪の開会式では、南北朝鮮の代表選手たちが「朝鮮半島の統一」を意味する一つの国旗の下に、スタジアムを共に行進したのだ。彼らもまた、アイスホッケーのチームで闘う上でこの競技でやはり南北一つになって競い合った。
 世界がロシア×ウクライナ戦争とイスラエル×ハマス×パレスチナ紛争という地政学的な混乱の只中で行われることを目指す2024年「パリ五輪パラ大会」。これらの有事は五輪大会にシンプルな疑問を突きつけている。「スポーツの能力は戦争当事国双方の緊迫感を少しでも和らげて減退することに果たして繋がるのか?」と。
 このアジェンダについて、一橋大学の坂上康博名誉教授が次のような持論を展開している。1932年「ロサンゼルス夏季五輪大会」及び1936年「ベルリン夏季五輪大会」において、日本は計18個のメダルを獲得して「スポーツ新興国」としての名を上げた。また1942年「パリ夏季五輪大会」以降、常に5位以内に入賞していたイタリアは世界のスポーツ強国だった。五輪大会のメダル獲得数をさらに伸ばして順位を引き上げたのもロス五輪とベルリン五輪だった。だが、それ以上だったのはドイツだった。ベルリン五輪で金33個、銀26個、銅30個を獲得。一気に世界No.1に駆け上がった。世界平和を目指す五輪が逆にファシズム国家のパフォーマンスの場となり、WWⅡへの道を突き進む跳躍台となってしまったのではないか?あるいはもし、日独伊三国がロス五輪やベルリン五輪で大した活躍もせずに自信を喪失していたとしたら、あれほどまでの無謀な戦争へと突き進むことはなかったのではあるまいか?
 大日本帝国政府はスポーツを「安全弁」として利用し、不平や鬱憤から逃避させ忘却させるという名目を掲げていた。労働の分業化や機械化などによって我々の現実生活がますます無味乾燥になっていく中で、スポーツは人間的な欲求を満足させることができる一つの「避難所」になっている。人々はスポーツの「愉快さ」の中に全ての不平や鬱憤を晴らし、反抗的な気分や破壊的な思想を忘却することができるというのである。だが、日本の当時のスポーツ国策に比べ特に現代の欧米では野球(MLB)やサッカー、バスケ(NBA)などのスポーツ観戦客が、自身の応援していた地元チームが負けると火災や暴動を度々引き起こすことが報じられている。
一方で、前述の1932年「ロス五輪大会」で「スポーツ新興国・日本」とグローバルに評価されたものの、背景には1931年9月に勃発した「満州事変」によって悪化した米国の対日感情を好転させるという「外交政策」上の狙いが日本にはあったと見られている。
 満州事変以降、国際世論に背を向けて中国侵略を続けた大日本帝国は満州国の承認を巡って、国際連盟と対立を生んだ。1933年3月にはついに国連を脱退、翌年12月には日本の軍事的行為に枠をはめていた「ワシントン軍縮条約」をも廃棄し、国際秩序への無謀な挑戦を繰り返していった。軍部の暴走のみならずマスメディアなどを媒介にして作られた排外主義的なナショナリズムに日本国民が深く囚われていたことが決定的になった。
 1936年2・26事件は日本の軍国主義及びファシズムにとって一つの重要な画期となった。軍部主流は該当事件の威圧的効果を最大限に利用して対米英協調派ないしは自由主義的勢力を屈服させた。アジアにおける覇権確立のための「国家総力戦準備」及び国内政治体制の「ファッショ化」=「議会制民主主義の否定」の急進的な強行は経済的困難と相まって国民の反発、反軍、反ファッショ意識を引き起こし、広田弘毅内閣の早期退陣を招いた。
 この時期の「民衆意識」の特質である「反軍・反ファッショ意識」の深まり、あるいは生活不安や政治不信からの「一時的逃避」といった傾向。1936年「ベルリン五輪」で引き起こされた国民的な熱狂は実はこうした文脈理解で捕えるべき社会現象ではないか。それこそが、危険な「排外主義的ナショナリズム」へと連動する可能性は確かに否定できないが、おそらく大半は民衆の反軍・反ファッショ意識を反映したもの、あるいは現実からの一時的逃避であり、暴走する軍部への積極的な支持とはおよそかけ離れたものではなかったか?

 戦前戦中に大日本帝国が行っていたスポーツによる「思想善道」政策の中に、その時代の「反発する民意」や現代にも通ずる「思想の闘い」が汲み取れる。
 まず、「思想善道」の国策との関連で注目されるのは、大日本武徳会と講道館である。これらの武道国体の場合は「武道精神」を忠義や愛国の精神、国体の精神などとリンクさせ、武道を国家主義を浸透させていく手段に変えることによって「思想善道」政策の直接的な担い手になったという通念が伺える。
 日本体操連盟の「体操祭」は国民が一つの号令のもとで心身共に全国一体となるラジオ体操の瞬間を生み出した。さらにそれを国家の祝祭日と重ね合わせることで、愛国心へと接続していく「国家的な権力を強いる儀式」となっていったのである。
 当時の作家、村山知義ら左翼陣営は国家によるスポーツの政治的な利用を真正面から批判し、さらに人々の「階級意識(ヒエラルキー)」を呼び起こそうと試みた。国際共産主義運動の一翼を担う「プロレタリア・スポーツ運動」別名「赤色スポーツ運動」の実践を目指したものに他ならない。
 前出の坂上氏が論じてきた言葉を借りれば、「全体として俯瞰してみた場合、体操祭のように祝祭日に設定され、国家的な儀礼として展開されたものや、天皇・皇族の出席を伴うスポーツ行事などが「国家的な秩序」への同意を強化し、国家との一体感を推進する「権力の装置」として巧妙に機能していたと考えられる」という。

【7】「物語(ナラティブ)」戦術がテロ脅威の「脱過激化」を可能に

[筆者コラージュ作成]

 翻って現代の「思想の闘い」とは、「過激派主義」思想の先鋭化プロセスに対抗しようとする「暴力的過激主義対策(CVE)」研究部門のコミュニティ構築力に焦点を当てた先駆け的存在として、インドの反体制勢力が強いカシミール地方で生を受けたファラ・パンディッシュ氏の取り組みから解釈を試みてみよう。
 パンディッシュ氏がカシミールに帰郷した際、2人の身内が過激派に殺害され、暴力事件に巻き込まれてそれぞれ亡くなった体験をした。その後、米国政府の一員となって史上初のイスラム社会への米特使に任命された。9.11後の「思想の闘い」に対抗すべく確立されたポストを与えられ、80カ国を訪れ、デュッセルドルフの貧民街からマリのモスクまで様々な場で何千人もの不満を持つ若いイスラム教徒たちに会ってきた。パンディッシュ氏はアイデンティティーの危機を予見。「仲間同士の関係だけが考え方を変えられる」との結論に至った。先鋭化を阻止するには、信頼できる「声」を集めて反撃する以外にない。
 米国政府特使として、いち早く「Facebook(現メタ)」を使い、世界各地で出会ってきた若者たちと連絡を取り合う手段であり、何より若者同士を繋ぐ手段でもあることをパンディッシュ氏は知った。
 彼女はミレニアル世代に焦点を絞り、ドイツで会った若者とオーストラリアの若者を繋ぐことに役立ちたかった。自分がモータリアでしている会話をタジキスタンのパミール高原の若者たちの間で流行していることを結びつけたりしてリアルタイムで伝える必要性があった。その崇高な使命感を以ってしても、米国政府の仕事をしている限りは早期の実現が困難だと悟ったパンディッシュ氏は特使を辞職し、世界各地のグループを結集して「ダンブルドア軍団(CVE版)」(英国で著名なファンタジー作品「ハリーポッター」が由来)を作り上げようと動き始めた。その間にも代表的なもので「オンライン・シビル・カレッジ・イニシアチブ」(100超えの欧州の反ヘイト組織を繋ぐ)や「ジェン・ネクスト」(元イスラム過激派の過激思想解除)、また「クリエイティブ・マインズ・フォー・ソーシャル・グッド」(中東のYouTubeやInstagramのスターたちをモスクや教会に誘い、そこでの宗教間対話を大勢のフォロワーたちとシェア)などのコミュニティが生まれている。
 コミュニティは若者に話しかけるコツを知っている人間、つまり同世代の若者に力を与えようとしているという。彼らは「オンラインの過激派のコンテンツ」の立場を弱め、それに代わる「物語(ナラティブ)」を大量に表示する、信頼できる「声」で埋め尽くすことができる。
 分かりやすいソーシャル・メディアの配信が大部分を占める新種の戦争、コミュニケーション学者のハルーン・ウッラー氏のいう「デジタル世界大戦」のほんの一例でもある。政治家、セレブ、ヘイト集団、反ヘイト集団の誰であれ、「物語(ナラティブ)」を自身のものとし、観察者の感情を呼び込み、信憑性を与え、コミュニティを構築できた者、または同じことをごく個人的なレベルでも繰り返し行う。
 
 「戦争において『物語(ナラティブ)』という武器は海軍やナパーム弾、ナイフといったものよりもはるかに重要になっている」
   ――ソマリアのイスラム過激派組織「アル・シャバブ」幹部 オマル・ハマミ

 米国国家安全保障シンクタンク「(財)ニューアメリカ」のピーター・W・シンガー戦略官兼上席フェローによれば近代の戦争とは「情報戦争」「認知戦」「ソーシャルメディア戦」の三つに大別されるという。

[出典:「朝日新聞デジタル」]
A.I.は既に戦場で使われて久しいが、「イスラエル軍のA.I.システム『ゴスペル・ハツォーラ(ゴスペル戦場管理システム:Habsora)』がガザ地区の戦争で民間人の犠牲者を大量に出すことを容易にしてしまっている負の側面がある。その結果に人間は責任を取らなくてはならない。」と警鐘を鳴らす。私たちはウクライナとロシア間の戦争でA.I.の活用が大規模な成長を遂げていくことを目にしてきた。
A.I.が仕掛ける「情報戦争」とは、ディープフェイクとして知られるフェイクイメージ画像やフェイクビデオを含む人工的な内容を生み出してきた。これまでにもゼレンスキー氏が首都キーウに現れたとする動画や、米国のジョー・バイデン大統領が米軍隊配備について公表したというフェイクビデオなどを見聞してきた。他方、ウクライナ人は日常生活で顔認証のA.I.テクノロジーを利用している。同様の手段でビジネスと政府は今や、デジタルファイルが読み取ったある画像とあなたの顔が合致するのか否か突き合わせて確実に正確な情報を読み取れる。そのような技術は戦争にも応用可能なのだ。
では「認知戦(Cognitive Warfare)」の目的とは、人間の頭脳の脆弱性を利用して「個人をハッキング」し、「すべての人を兵器化する」ことか「インフルエンサー操作」のいずれに用いるのか?という「朝日新聞デジタル」のインタビューに対し、シンガー氏は具体的には「中国人民解放軍(PLA)」は「認知戦」を他者とフェアなものとするー我々がそれらを戦争領域と呼ぶー空・陸・海―のごとく。実際に同じ程度のレベルで筆記し、表現しているものを指す。かつての戦争の中ではあり得なかったが、「A.I.を別の手段で使う時、ネットワーク自体のアルゴリズムを用いるだろう。それこそがA.I.だ。何が人気で有名なのかを選び出す。重要な要素の中でアルゴリズムを把握することができるなら、推薦としてA.I.が挙げてきたリストには使用者の視点で明らかにした見解に、より同意しやすい傾向の人々に影響を与えることができるかもしれない。」とシンガー氏は述べた。その上で「彼らはソーシャルメディアを『認知戦』の鍵を握る戦場だ、と表現している」と付言した。
 「ソーシャルネットワーク戦」は、より厄介だが封鎖は不可能で、すぐにネット上にあまねく拡散される。比較的小規模な物理的紛争に、ネットを通じてグローバルな戦闘になりX(Twitter後身)だけで1000万件を超える激しい応酬が展開された。2012年の「防衛の柱」作戦では、アメリカン大学のトーマス・ジーツォフ准教授が、何十万ものツイートを忍耐強く調べ、紛争が起きている8日間について時間ごとの戦況と国際世論の変化を比較した。結果は衝撃的だった。ネット上でハマス側への共感が急増すると、イスラエルは故意に空爆を半分以上に減らし、逆にプロパガンダを2倍以上に増やしていた。これらのツイートの感情(イスラエル寄りかパレスチナ寄りか)を時系列で表にすれば、地上で何が起きていたかを推測するだけでなく、イスラエルの次の行動を予測することも可能だった。イスラエルの政治家や「イスラエル国防軍(IDF)」司令官は、ひたすら戦場の地図を見つめていたわけではなかった。タイムライン、SMSといったあえて呼ぶなら第4空間で起きている戦場の状況にも目を光らせていたのである。
 「いいね!」戦争はどれも具体的な目的を念頭に置き、対立者を相手にして行われる「注目争奪戦」だ。勝利を収めるにはアテンションエコノミーの「バイラル性(ウイルス性)」と気まぐれに対する理解と「物語(ナラティブ)」「感情」「信憑性」を「コミュニティ」構築と絶え間ないコンテンツの供給(情報氾濫)と融合させて伝える能力が必要不可欠だ。すべてがインターネットで起きるので戦争の一つ一つが無数の当事者によるグローバルな網引きと化すのだ。
 例えを幾つか挙げれば、英国は「標的型の情報活動」及びアウトリーチによって変化をもたらす、兵士1500人強の「第77部隊」を結成。「北大西洋条約機構(NATO)」は「ソーシャルメディアの兵器化」に重点を置いた「戦略的通信研究センター」を開始。イスラエル国防軍(IDF)は「デジタル部門」を設けた。トルコは拡大している「愛国的トロール(荒らし)」軍団を擁し、メキシコ政府は「新興ボットネット」を配備。その他数十カ国による「サイバー・プロパガンダ構想」を打ち出している。
 インターネットやスマホ、ソーシャルメディア(SNS)だけでなく、現代では多くが第4空間の「ネットデジタル世界」を通じて名声を手にしている。テクノロジーを使ってメッセージを広めたり、「YouTube」や「Instagram」のインフルエンサーとなって。
 

【8】「権力」の変遷「指導者」から「素人」の一般市民へ

[筆者コラージュ作成]

 今や「権力」は「指導者」から「素人」へと変遷した。ここに「権力の終焉」モイセス・ナイム著<日経BP社>から7つの実例を見ていこう。
 エジプトのイスラム主義組織ジハード団の創設者の一人、アブド・ゾモル氏は1981年のアンワル・サダド大統領暗殺事件の首謀者だ。かつてのテロリズムとISISの違いは「使っていた『媒体』だった」。バイラルマーケティング(主にインターネットやメールで口コミを利用して不特定多数に広まるよう仕掛けていくマーケティング手法のことで、バイラルは「ウイルス性」という意味。人から人へと情報が伝わっていく様子を表現した)はISIS最大の兵器と化した。
 第一に、北京の作家・活動家の劉暁波氏は「08憲章」というオンライン・マニュフェストの指揮を取った。後に中国の現代化と改革に普遍的な民主主義と人権の価値観を組織したことで中国共産党当局に逮捕され、獄中でノーベル平和賞を受賞した。
 第二に、エジプトのワエル・ゴニム氏は同国の野党が脆弱で頼りないと見てとるや、「Facebook(現メタ)」を通じて、政府の説明責任を求める運動を組織した。
 第三に、コロンビアで、エンジニアのオスカーモラレス氏が「ワン・ミリオン・ヴォイシズ・アゲインストFARC(反コロンビア革命軍)」という「Facebook Group(現メタ)」を設立し、広範に渡って一般市民を攻撃し誘拐する革命軍に抗議した。大規模な集会と圧力に発展し、人質の解放につながった。
 第四に、モルドヴァの政治改革の口火を切ったのは同国のTwitter(Xの前身)活動家たちだった。
 第五に、ケニア人の弁護士で「M」と名乗るブロガーのオリ・オコーラ氏のようにサイトを立ち上げ、ケニアの堕落した政治的状況を監視した者もいる。
 第六に、2009年イラン大統領選挙後に起きた大衆暴動取材の際、外国人ジャーナリストらがイランから締め出された際に、イラン系アメリカ人ケリー・ゴルヌーシュ・ニークネジャード氏が“Teheran Buream.com”を立ち上げてイランの同胞たちから直接集めたニュースを世界へと拡散した。
 第七に、ブロガーで市民運動家のサミ・ベン・ガルビア氏はチュニジアの人々を反体制デモに駆り立てた。背景として、ウィキリークスが暴露したチュニジアの腐敗に関するアメリカ外交文書の辛辣なコメントをグループ・ブログで広め、「ジャスミン革命」の立役者になった。

 これまで見てきたように、「ソーシャルネットワーク戦」の勝者たちは組織に管理されずに行動する。ネット上の至る所に姿を現し、弾圧を受けても巧みに逃げおおせる。テクノロジーは単に道具でしかない。「権力」が段階的に連なって拡散していく状況が、個人にかつてない力を与えている。そしてその個人が「実世界」の政治家たちに直接かつ効果的に影響を与え、説得や抑制が可能な時代になった。 
 
 「ソーシャルメディア(SNS)」を悪用して羞恥刑を科し、破滅する人間はもはや著名人だけではなくなっている。「ルポ ネットリンチに人生を壊された人たち」ジョン・ロンソン著<光分社新書>によれば、無名のしかもさほど悪いことをしたわけでもない人たちが犠牲になり始めている。企業が風評被害を受けることは以前からあり対策が必要だったが、「無名の個人」までもが同様の対策を講じなければならない。当初はTwitter(X前身)などで風刺や批評、あるいは一種のジャーナリズムと呼んでいいようなツイートが多かったが、それが特定の人間を罰するような発言が飛び交うように変わっていった。ソーシャルメディアで誰かを晒し者にしたり、個人攻撃で罰を与えるような活動をライフワークにしている「権力者」まで現れるようになった。そのうちの一人であるテッド・ポー氏に作家のジョン・ロンソン氏が話を聞くと、「(羞恥刑が科された)被疑者にも基本的人権が与えられている。そのことが重要です。正式な裁判を受ける権利も保証されている。ところが、インターネット上で被疑者になると、人権を全て奪われてしまう。当然、結果はより悪いものになります。世界中の人々から時間の制限なく責められ続けることになる。」と語ったポー氏のように「権力」の側にいる人間がロンソン氏のような本来何の権力も持たないはずの人間の行動に神経質になる。それはパワーバランスが変化している証拠でもあるだろう。従来の「権力」が絶対的なものではなくなってきている。
 「私のような一般の人間の方が、あなたのような専門家よりも恐ろしいということですね?」とロンソン氏がポー氏に対して畏敬の念を抱きながらそう尋ねると、ポー氏は満足したのか「そう、あなた方の方が怖い。怖いんですよ」と彼はそう言った。
 強力な権力を持ち、かつては遠い存在だったポー氏よりも、今や「一般の人間」の方が怖いのだ。「狂っている」「あまりにも残酷」と非難してきた相手よりも自分たちの方がよほど恐ろしい存在になっていた。狂っているのは、残酷なのかは私たちである。「ごく普通の人」が「戦場にいる兵士」のようになっている。他人に何か落ち度を見つけると、鬼の首を取ったかのように一斉に個人攻撃を行う、そんな輩の新たな「権力」のあり方へと変貌してきたのだ。

 そうして「SNS戦」で驚くべき効果を上げている「一般市民の兵器化」の戦術ツールこそが、「物語(ナラティブ)」まさにそれなのである。

 

【9】戦死者を英雄視し被害者意識を操る『ナラティブ』は『不可欠な兵器』

[筆者コラージュ作成]

第4空間としての「ネットデジタル世界」で技術的に主導権を奪うことで、既存の「権力者」以上に個人でも新たな「権力」を握ることができると前述した。
そしてそこで効果を上げるのは「物語(ナラティブ)」という戦術ツールであると。
その「物語」に見られる三つの原則を「『いいね!』戦争 兵器化するソーシャルメディア」ピーター・W・シンガー/エマーソン・T・ブルッキング共著<NHK出版>から見ていく。

(1)シンプルであること。デジタル世界で効果的な「物語」というのは、ほんの一瞬で理解できるものしかない。現代の「物語」では画像が使われることが多々ある。例えば長年、大型ハリケーンが襲来し、その被害が「記録的豪雨」に関する災害報道に重きを置いて周井に流れる中で、いるはずのない巨大なサメが泳いでいる「写真」は「物語」を伝えることになり恐ろしさをシェアする恐怖忌避行動を誘発する効果を上げる。

(2)「共鳴」すること。瞬時に強い共感を覚える特定の言語と文化の産物に準拠している。「物語」とは、自分がその登場人物に明らかに連帯あるいは反対していると感じさせて、既存の展開にすんなり納まるものだ。プロセスにおいて、SNSは参加できる米下院議員の場合でさえ、オンラインの知名度と過激思想の「物語」には強い相関関係がある。米国の「ピュー・リサーチ・センター」の研究によれば、非常に党派色が強く極端に偏った下院議員ほど、党派的な芝居のキャラにイメージがピッタリとマッチし、Twitter(X前身)のフォロワー数が増加する。

(3)「目新しさ」である。最も効果的な語り手はフレームに捻りを加えたり、反転させたり、「破壊」したりして、視聴者の予想を裏切り新たなレベルの注目を惹きつける。少しくらいの目新しさではネットのスピードについていけない。奇抜だとか、矛盾しているとかが一目で分かるコンテンツが不釣り合いなくらい世間の注目を浴びる。

 上記ベースにあるロジックを踏まえて現実に世界で起きている「物語」の及ぼす作用を紐解くのに「毎日新聞」の大治朋子専門記者のルポが一考に値する。
 世論操作の必須ツールとしたのは「SNS」とそれを動かす「アルゴリズム」そしてコンテンツとしての「物語(ナラティブ)」。そこで「怒り」や「不安」を煽る物語であることが特に重要だという。「怒り」の感情が特に広がりやすいという研究は世界中の研究から既成事実となっている。東北大学大学院の虫明元(むしあけ・はじめ)教授(脳神経科学)によれば「脳の大脳皮質は『不安のシナリオ』を生成する。不安な感情を煽る情報にばかり触れていると不安神経症」にもなりかねない。一方で不安を煽る情報をSNSで拡散させて「いいね」をもらうことで、中脳のドーパミンなどの快楽物質を分泌させる関連性がある。すると「本来の不安の原因が解消されたわけではないのに快楽物質が出るので、次の不安情報が来たらまた投稿、拡散させてしまう。新たな快楽を得て気持ちよくなり依存的になってしまう」と虫明氏はいう。これこそが脳のメカニズムまで分析し、人間の脆弱性を踏み台にする現代SNS社会の「ナラティブ戦術」だというのだ。
 人種差別的な「ナラティブ」の伝播が強いのは、人間の「無意識」に働きかけるためだとも言われる。
 「ナラティブ」は個人の心を揺さぶり、感染し、政治を変え、社会を変えていく作用を生む。前出のシンガー氏も「特に軍事力で格差がある戦争においては、『弱者』ほど自分達を英雄視したり、戦死者を神話化したりするような『ナラティブ』が『不可欠な兵器』になる」と述べている。その上でシンガー氏は「ソーシャルメディアを兵器化するには、自分たちが掲げる大義の戦いに参戦するよう人々を説得する必要がある」と指摘した。さらに「それには人を動かす『ナラティブ』を作らなければならない。ナラティブは大抵(感染力の高い)ヒロイズムや戦死、被害者意識などをテーマにする。今、我々が目撃しているロシアとウクライナの情報戦とは、まさにこうした『ナラティブ』の発信力をめぐる戦いなのだ」と前出のシンガー氏は指摘した。

 「ナラティブ」はサイバーセキュリティーの脅威に防衛線を張るフランスの「パリ夏季五輪パラ」でも関係がある。「ブラックバード(BlackBird)A.I.」社は「コンステレーション(星座)」と呼ばれるA.I.ベースの「ナラティブ」インテリジェンス・プラットフォームを創り出した。テクノロジーがナラティブを分析し、リスクのレベルと内容の付加を図る過程を初めに導入するプラットフォームだと言える。「Blackbird A.I.」社のサラ・ブートブール情報分析官が「『コンステレーション(星座)』ではあらゆるプラットフォームに関する発見や分析、オンラインの会話の調査ができ、リスクをもたらす危険因子を見極めることに役立てる。私たちはその『ナラティブ』の可能性に目を配っているのです。」と「Fox News Digital」の取材に答えた。
 一つの「ナラティブ」攻撃はあらゆる主張として定義づけられる。それは情報エコシステムの中の人や場所、物事についての認識を形作ることで深刻な害悪をもたらす潜在性があるというものだ。同社によれば、これらの「ナラティブ」攻撃は重要な財産的損失につながりかねない上に、有害な評判を流布し、特にもしある特別なナラティブが誤報によって左右されるものになる可能性も否定できない。
 IOCのトーマス・バッハ会長は近年、「責任を持ってA.I.をスポーツの中に受け入れる必要がある」との意思を予てから表してきた。
 ハクティビストのような「ダークハッカー」も含む「負」のサイバー攻撃者の脅威に晒されるリスクに対抗して、逆に「ホワイトハッカー」の役割を果たすA.I.の「正」の面からパリ五輪のセキュリティーとして対抗する機会もまた付与されているのだ。IOCとしては「A.I.スポーツ導入計画」の中にオンライン・ハラスメントからアスリートを保護するための力の入れようという大義も掲げている。

【10】仏「サイバーセキュリティー戦略」『ビジュニム(Viginum):外国デジタル介入監視・防止機関』は磐石か

[筆者コラージュ作成]

フランスのサイバーセキュリティー戦略は、国内情報機関セリーヌ・バーソン長官、国家情報システムセキュリティー庁(ANSSI)ヴィンセント・シュトルーベル長官及びパリ五輪サイバー脅威防止対策チームリーダーのフランツ・レグル氏が陣頭指揮を取っている。
「パリ五輪パラ組織委員会」が直接管轄するのは3つの「内部システム」だ。⑴テクノロジー・オペレーション・センター(TOC)⑵サイバーセキュリティー・オペレーションセンター(CSOC)⑶ナショナル・ストラテジック・コマンドセンター(CNCS)である。
「パリ五輪パラサプライヤー+パートナー」が「外部システム」の外堀に目を光らせる。例えば、⑴ワールドワイド・パートナー「Atos(アトス)」がITシステム提供(認証システム・アスリートの競技スケジュール管理など)⑵オフィシャル・パートナー「Cisco(シスコ)」がサイバーセキュリティー設備と会議用ソフトウェアなどの提供。⑶プレミアム・パートナー「Orange(オレンジ)」がより多くの人が写真や映像提供をシェアできる光ファイバー・モバイルネットワークを提供。といった3例を挙げた。

ハッキング集団と国家のやり口を視座に入れれば、ロシア、中国、北朝鮮、イランなどが代表例として「サイバー犯罪国」「ハクティビスト(hacktivist)(政治的ないし社会的な主張を目的としたブラックハッカー)」に挙げられる。
2024年パリ五輪パラの想定標的として⑴報道ルーム支援ITシステム⑵スタジアム入場システム+電子チケット販売⑶海外メディアTV生放送⑷五輪主催会場全体の電源供給など、これらのシステムに侵入しシャットダウンやウイルス拡散リスクが懸念されている。このやり口であればコンピューター・ネットワークのみならず、デジタルチケットシステムもイベント・タイミング・システムまでもが無力化されてしまう可能性が大きい。
かつての五輪への直接的サイバー攻撃被害は、前出の2014年「ソチ冬季五輪大会」に続き、2018年の韓国主催「平昌冬季五輪パラ大会」も狙われた。
開会式の間にサイバー攻撃が起き、Wi-Fiネットワークが機能不全に陥り、公式平昌五輪スマホアプリが故障。報道用のドローンが地上停止するなどの甚大な被害を被った。
ロシア・ウクライナ戦争でもこうした国家主導型の敵対サイバー攻撃を行う「ハクティビスト」の存在が知られるところとなった。
ロシアに帰属するハクティビストの「プリミティブベア(Primitive Bear)」は、「持続的標的型攻撃(Gomaredon APT: Advanced Persistent Threat)」グループ別名「Armageddon / Primitive Bear/Actinium」がウクライナを標的にしたサイバー攻撃を仕掛けてきた。
また、「ゴッサマーベア(Gossamer Bear)」などの攻撃組織、及び「Repeeting Umbra」「Lost Potential」などの「アクティビティクラスター(アクティビティの集団化)」は2022年にウクライナに対して特に活発に活動した。その他の属性不明のキャンペーンもおそらく情報収集目的でウクライナの組織や個人を標的にしたサイバー攻撃を行ったと見られている。ロシア帰属の国家主導型サイバー攻撃者である。

フランスでは2023年5月21日に「2024年五輪パラリンピック競技大会およびその他諸規定に関する法律第2023―380号」が施行された。全5節29ヶ条から成る同法案。第1節(第1条〜第4条)「医療体制」規定。第2節(第5条〜第8条)「ドーピング対策」規定。「世界アンチ・ドーピング規定」の全ての要求に応えるとしたフランスでは遺伝子検査及び遺伝子型の特定は原則として「民法典第16-10条、第16–11条」により禁じられていた第5条「ドーピング検査として遺伝子検査を行うことを認め、手続きを定める(スポーツ法典L、第232–12–2条新設)」を恒久法とする。いわゆる「A.I.映像監視導入法案」は第3節(第9条〜第19条)「セキュリティ対策」に含まれる。第10条は2025年3月31日までの試行として「A.I.(人口知能)」による監視カメラ画像の処理を認めるものとする。(但し、顔認証技術・生体認証技術は使用禁止)と規定されており、アルゴリズムに基づいた「自動映像監視システム(AVS)」が用いられいわゆる「A.I.セキュリティシステム」として支持される一方、国際人権NGO「アムネスティー・インターナショナル」などから「人権侵害」だと批判する声も上がっている。
第16条は300人以上の観客を収容するスポーツやイベント会場へのボディースキャナー設置を認める(国内安全法典L、第613-3条の改正)規定。
第17条⑴ 2024年大会などが開催中に不正に大会会場内に立ち入ることを禁じる。(スポーツ法典L、第332 -10-1条)を新設。すべての観客に入場電子チケット持ち歩きを義務付ける(国法典L、第332-1-2条)が規定された。

 前出のブートブール氏は「我々が本当に焦点を当てているのは『ビジュニム(Viginum):外国デジタル介入監視・防止機関』こそがフランス政府の運営部門であり、そこにはデジタルな外国の干渉に焦点が当てられたこともあった。『ビジュニム』は十分な偽情報キャンペーンを伴う『オンライン・アクターズ・プロパゲイティング海外ネットワーク』を見出している。そしてそれはパリ五輪パラを主催できるだけの能力が果たしてフランスにあるのか、狙いを定めることになるのだ」と語った。マクロン氏は2021年からあらゆる潜在的な未来の出来事に防御策を講じるために「ビジュニム」の先頭に立って情報セキュリティーを牽引してきた「旗振り役」なのである。

<結び>

 世界的なスポーツの「平和祭典」である「2024パリ五輪パラ大会」が間近に迫り、国家安全保障面で脅威となる「第4空間」の有害サイトで知り合った過激派予備軍がテロ行為に走る。そんな近年の犯罪傾向から元凶である「先鋭化された過激派思想」の芽をつぐみ、根絶することが急務である。同時に「ウクライナ戦争」「ガザ戦争」の「パリ五輪パラ休戦」の誓約が守られ「ウクライナ平和サミット」でも世界が平和に向かって一つにまとまるよう祈念する。
 そこには「ソーシャルネットワーク(SNS)戦」という新たな戦争の形が見受けられる。A.I.ベースの「物語(ナラティブ)」という効果的な「一般市民の兵器化」戦術ツールを使う発信力が及ぼす影響力で、既存の腐敗しがちな権力者にとって代わり「権力」を市民が平和のために行使できる時代になった。
「脱過激化」には信頼できる声を集めて反撃し「ナラティブ」を書き換える。そのA.I.は「正」の力で「パリ五輪パラ」のインテリジェンスセキュリティーの盾となる。バッハ氏が掲げる「A.I.スポーツ導入計画」にはオンライン・ハラスメントからのアスリート保護名目もある。だがA.I.にある正と負の「二面性」を「人間が制御できる確信を持てないうちは、決して主導権をA.I.に渡してはならない」と「OPEN A.I.」サム・アルトマンCEOらが警告を続ける。マクロン政権は「外国デジタル介入監視・防止機関(ビジュニム)」の偽情報撲滅を伴う情報セキュリティーを充実させてきた。同氏肝煎の五輪パラ史上初のセーヌ川下り「開会式野外観戦」に向けて最大限の治安脅威警戒レベルまで引き上げたフランス。「パリ五輪パラ休戦」決議に則りあらゆる脅威リスク想定シナリオによる治安当局の警備磐石体制でマクロン氏の「平和」への願いは叶うだろうか?
(了)
 

【出典】
“Investigation into corruption inside Paris 2024 set to loom over Olympic Games” Lawrence Ostlere (20 Feb. 2024)
“France assesses Paris Olympic terrorist threat in light of Moscow attack” Angelique Chrisafis <The Guardian>(28 Mar. 2024)
“We Will be Attacked’: Cybersecurity Challenges Loom Over Paris Olympics 2024” Ashish Khaitan<Cybersecurity News>(18 April. 2024)
“Who are ISIS-K, the group linked to the Moscow concert hall terror attack?”Jessie Yeung(25 Mar.2024)
“Four men go on trial in Paris accused of conspiring to plot neo-Nazi attacks”Angelique Chrisafis(19 Jun. 2023)
“France taps leading AI-driven risk intelligence firm in push to combat cybersecurity threats at Olympics Paris Olympics opens July 26” Chantz Martin
“China’s Xi backs Macron call for global Olympic truce” John Irish/Elizabeth Pineau(7 May.2024)
“French cyberdefence chief warns Paris Olympics a ‘target’” (27 Mar. 2024)
“Russia and IOC at the UN before member states pass Olympic Truce for Paris Games” Graham Dunbar(22 Nov. 2023)
“Paris 2024: conflict in Ukraine and the Middle East threaten to turn the Olympic Games into a geopolitical battleground” Jung Woo Lee<THE CONVERSATION>(14 Mar. 2024)
“Islamophobia and antisemitism are equal scourges and the EU is finally recognizing that” Shada Islam(7 Dec. 2023)
“Knife attacker in Nice kills three people” Kim Willsher(29 Oct.2020)
“INTERVIEW/Peter Singer: Humans must be held responsible for decisions AI weapons make”(25 Mar. 2024)
“Paris Olympics: Pro-Palestinian protesters demand Israel’s participation be limited as was Russia’s” (5 Feb. 2024)
“Paris 2024 Olympics, Rugby World Cup: ANSSI’s summary of the various threats”
“Eight wounded in shooting near French mosque, but police rule out terrorism(3 Jul. 2017 )”
“France unveils security plan for Olympics opening ceremony in central Paris” Florian Hulleu(24 May 2023)
“Paris Olympics opening ceremony could move if threat detected, says Macron” Kim Willsher(15 Apr. 2024)
“The Doping Underworld is Plaguing The Olympic Games, Again” John Hoberman(11 Feb. 2022)
「ソチ五輪の背後で蠢くロシアのサイバーテロリスク」飛立知希著<ビーカイブ>(2014年2月22日)
「仏週刊新聞社『シャルリー・エブド』襲撃テロ事件から約1ヶ月 戦争加害者としてのジェンダー なぜ女たちは戦場へ赴くのか?」飛立知希著<ビーカイブ>(2015年2月4日)
「暴力的過激主義対策(CVE)サミットで呼びかけ対テロ教育の必要性とプロパガンダ対抗の強化」飛立知希著<ビーカイブ>(2015年2月23日)
「政治に振り回されるオリンピック」佐野慎輔著<笹川スポーツ財団>(2021年3月17日)
「権力装置としてのスポーツ」坂上康博<講談社選書メチエ>
「スポーツと政治」坂上康博<日本史リブレット58>
「東京オリンピック1964の遺産―成功神話と記憶のはざま」坂上康博/萊田享子共著<青弓社>
「1972年9月5日」(ミュンヘン五輪テロ事件)坂上康博氏より「五輪公式記録」資料提供
映画「ミュンヘン」スティーブン・スピルバーグ監督<NETFLIX>
映画「ドローン・オブ・ウォー」アンドリュー・ニコル監督<WOWOW>
映画「ソーシャルネットワーキング」デヴィッド・フィンチャー監督<NETFILX>

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

ウェブサイト: https://news.livedoor.com/article/detail/8099163/

Twitter: @volsareno333

Facebook: 時事英語雑記帳