4月3日、あるひとりの在日コリアンの女性が、「某自治体が毎年朝鮮学校新入生にも配っている防犯ブザーを今年度は渡さないと。どうやら市民感情が許さないとかなんとか。まるで流行語になってる」とツイッターでつぶやいた。
そして翌日の夕方には、その自治体が東京・町田市、決定を下したのが教育委員会教育総務課であることが分かった。
朝鮮学校に通う子どもは、北朝鮮に関する問題が発生するたびに標的にされ、むしろ危険であるにもかかわらず、なぜ町田市はこのような決定をしたのだろうか。
ツイッター上では、「これは朝鮮学校の生徒は不審者に襲われても仕方ないということなのか?」、「酷すぎ、朝鮮学校の子供を狙えって言ってる様なもんやん」、「教育委員会がこれだもの。いじめがなくなるわけないよね」と、さまざまな意見が飛び交った。
私は町田市に抗議を、と考えて留まった。電話は業務に支障が出ることもある。在日が圧力をかけるように呼びかけた、といわれることを懸念もした。不当なことに対して声を上げるにも、私たちはやはり自由ではない。
まず、事実の確認をしようと町田市の教育委員会総務課に問い合わせた。この防犯ブザー配布は2004年度から始まったもので、市立小学校に入学した新1年生全員に配布される。
朝鮮学校側からは3月に貸与の申し出があったが、北朝鮮のミサイル発射など最近の情勢から総合的に判断し、教育委員会で不貸与を決定した。朝鮮学校側には3月末に伝えたとのことだった。
「私立、もしくはそれに準ずる学校ではどうですか?」
と尋ねたところ、
「私立でも申し出があれば貸与する。今回、申請した私立は朝鮮学校の他には3校あり、貸与されなかったのは朝鮮学校のみ」
という。
朝鮮学校に関するこういう問題が出るたびに、またかと思い、そう思ったことにぞっとする。防犯ブザーはそれほど高額なものではないし、当初は友人たちから、プレゼントしてはどうかという話も出た。
新入学の晴れやかなスタートを曇らせるような事件を、なんとかしたいという気持ちも大切だと思う。その一方で、このような決定をした町田市教育委員会に、防犯ブザーの持つ意味はもちろん、教育とはなにかをもう一度考え直してほしいと思う。子どもの安全すら守れない教育はごめんだ。
無償化除外問題も早く解決する様に祈り、去年は除雪費用が出ないために朝鮮学校の前だけに出来るという雪山について記事を書いたが、取り巻く状況が全く変わっていない。むしろ悪化しているのではないか。
東日本震災が起こった直後には、福島の朝鮮学校へは除染の費用が出なかった。そのため、全国から集まった関係者、アボジ(父親)たちが自ら除染作業をした。私もその現場にいた。
その後、半分支給されることになった時、子どもたちの命の値段が半分なのかと自嘲気味に云っていた保護者や友人に、何も声が掛けられなかった。そういうことが繰り返されるのはつらい。
最後に町田市教育委員会は、「多数の問い合わせや抗議の声を重く受けとめ、改めてこの問題について検討している」と答えた。その結果は週明けには判明するという。不貸与の決定が撤回されるかどうか、しっかり見つめていたい。
画像: 町田市のウェブサイトのキャプチャー
http://www.city.machida.tokyo.jp/kodomo/kyoiku/about_kyouiku/about_kyouiku01.html