現代において普通に花を贈る相手はいるだろうか。家族やパートナーでさえ、特別な日にしか花という選択は日本人には敷居が高いように思える。例えば、母の日や誕生日、結婚記念日等が該当するだろうか。
そのような特別な日に限らず、普通に花を贈る習慣があれば世の中に花が飛び交う素敵な世界になるんだろうと考えると、世知辛い世の中で一層の心の余裕が求められるのかもしれない。
特に男性は花屋に入ることすらはばかられるという方は多い。理由はいくつかあろうが、第一に花を買う習慣がないので恥ずかしい、第二に値段がわからず予算を伝えれば見繕ってくれるのだろうが相場がわからず躊躇、第三に花を贈る相手がいない。そんなところだろうか。しかしネットショッピングでポチるのであれば、急に現実味が増す。そこでパートナーでも家族でもなく、普段からお世話になっている方にお花を届けようとネットで検索してみた。テレビCMでもよく流れる花キューピットは、それ自体がチェーン店というわけではなく全国の個別の花屋さんをつないだ注文プラットフォームだと思えばよい。ネットショッピングそのものだ。
花は生ものなので発送地からよりも、到着地最寄りの花屋さんから届けた方が「活き」が良いのは魚と同じだ。
夏休みということもあり、仮に旅行や帰省で少々の世話ができなくても大丈夫そうな花をネットで検索して調べる。それくらいは現代人ならお手のものだろう。その結果、蘭が多少放置しても全く問題がないことが分かった。胡蝶蘭といえば開店祝いや政治家の事務所でよく見かける高級花きだが、デカい鉢植えでは逆に大げさだ。しかしデスクにおける程度のちょうどよい大きさのミディ胡蝶蘭があったので、それを注文することにした。ミディ胡蝶蘭は一般的にビジネスで贈られる大輪の胡蝶蘭よりもコンパクトで価格も手ごろだ。育て方に気をつければ来年もまた花を咲かせてくれるだろう。
ネットショッピングの感覚で依頼主や贈り先の情報を入力する。
自分ではまったく花のことを知らなくても、専門知識がなくても、その筋の専門家がどこかで情報を発信してくれているので、検索さえできれば難しいことではない。ちなみに胡蝶蘭の切り花が東南アジアの空港でお土産として売られていることからわかる通り、熱帯から亜熱帯の植物で植物検疫の関係で日本に持ち込めるかどうかは別として、長時間切り花のまま輸送しても問題ないくらい高温多湿に強い。夏場なら鉢植えの水が乾かなければ数日間は不在で放置しても大丈夫だ。むしろ冬の寒さの方がピンチな花なので今の季節ならばピッタリだ。ちなみに上品で優雅な胡蝶蘭の花言葉は厳密には色別にあるようだが、共通なものとしては「幸せが飛んでくる」だ。ピンクの花には「純粋な愛」というのもあるが、今回は当てはまらないので「純粋な心からのお礼」とでも読み替えてもらうことにする。
そして指定日にきちんと送付先に最も近い花屋さんから胡蝶蘭が届けられた。一つだけ注意しておきたいのは、サプライズプレゼントには向かないという点だ。これは生ものの花を送ることから、必ず送付先に事前連絡が行くので「突然花が届けられた!」というサプライズは成立しにくいことだけは注意して注文する必要がある。
特別な関係の特別な日から、日常の関係の気持ちからの贈り物まで、幅広く手元に花が届けられれば、それが日常になり花を愛でる気持ちも日常になり、男性が気軽に花屋さんで花束を注文する日もそう遠くないだろう。現代はそんな心の癒しが必要な時代なのかもしれない。
※写真はすべて記者撮影