
最先端医療により、多くの病気やウィルスの治療に成功してきた現代医療。
しかし、1981年以降から死亡率が急激に増え続け、未だ死亡率の頂点に君臨する病気がある。
それが、癌である。
不治の病と言われたこの病気も、多くの研究者達により、外科療法、化学療法、放射線療法、など様々な癌に対する治療が開発された。
そしてこれにより治療の難しかった癌の根治が可能になったが、末期の患者には根本的な治療は難しいのが現状である。
癌には癌幹細胞と癌細胞の二つがある
そもそも癌とは、どういう病気なのだろうか?
癌という病気は、我々の体を形成する約60兆個の正常細胞が突然変異を起こし、悪性腫瘍を増殖させる事を指す。
しかし、意外に知られていないのが癌細胞の組織である。
癌には癌幹細胞と癌細胞の二つがあり、癌幹細胞によって産みだされた細胞が癌細胞である。
解り易く説明すると、癌幹細胞(母)癌細胞(子)と解釈してもらうといいだろう。
増殖しているの根源は癌幹細胞(母)であり、その癌細胞(子)だけを叩いても根本的な治療にはならない。
その為癌の治療方として、癌幹細胞(母)癌細胞(子)の両方を切除し、抗がん剤での投与により治療する事が出来ると考えられている。
抗がん剤は、癌幹細胞を死滅させられない
抗がん剤といえば、癌の治療には欠かせない薬として有名だが、その抗がん剤で多くの人が勘違いをしている事がある。
それは、抗がん剤は決して癌の特効薬ではないという事。
現状の抗がん剤は、癌細胞の増殖を抑える薬であり、癌を完全に死滅させることは出来ない。
実は抗がん剤は癌細胞(子)には効果があっても、癌幹細胞(母)には殆ど効き目が無い。
理由として、癌幹細胞(母)は癌細胞(子)とは違い、一度増殖をすると【静止期】という特殊な冬眠状態になる為である。
活動をしている癌細胞(子)には効果があるものの、活動をしていない幹細胞(母)には抗がん剤で死滅させることが難しい。
その為、切除によって癌幹細胞(母)を切り取り、抗がん剤で癌細胞(子)を叩くというのが定説だが、どうしても癌幹細胞(母)が残っていると再発してしまうのが現状だ。
静止期追い出し療法によって、抗がん剤が効くように
しかし今回、九大生体防御医学研究所の中山敬一教授らの研究チームが、癌幹細胞を叩く治療に成功した。
これが【静止期追い出し療法】である。
実は癌幹細胞には、Fbxw7という分子がある。
このFbxw7という分子は癌幹細胞の増殖を抑える分子なのだが、この分子があることにより癌幹細胞が【静止期】になってしまう。
しかし、このFbxw7を人工的に欠損させる事により、癌幹細胞を【静止期】から【活動期】にする事ができる事が判明した。
【活動期】になった癌幹細胞には、抗がん剤が有効になるため、癌幹細胞を死滅する事ができるというのである。
そう、抗がん剤が癌の特効薬になるのだ。
まだ研究段階ではあるが、これが本格的に治療として行われる様になれば、将来体を削ることなく癌を根治する事が可能になる。長年苦しめられた癌という最恐の病気を、打破する方法と言っていいだろう。
現在、癌患者は国内だけでも150万人以上、死亡数は年間40万人。
そして、現在もその数は増えている。
闘病中の人、亡くなった人達の為にも、早く【静止期追い出し療法】が実用化できるように、頑張って欲しいと心から思う。