ゾエティス・ジャパンは、猫の変形性関節症に伴う疼痛の緩和を目的とした動物用医薬品「ソレンシア」を販売開始した。ペットは人間のように痛みや苦痛を言葉で訴えることができないため、飼い主の症状発見が遅れやすいと言われる。なお、本品の使用には獣医師の処方が必要だ。
それに同社の調査によると、猫の変形性関節症という疾患そのものを知らない飼い主が約70%だったこともわかり、特に飼い主に対しての周知活動や啓発活動が急がれるところだ。
さて、そうはいっても具体的にどのような症状なのかや発見方法等については専門家に聞かないとわからないため、猫専門の獣医師・服部幸先生に聞いてみた。以下一問一答方式で回答してもらった。
Q.愛猫が昔より動かなくなった等をいつ頃(何歳くらい)から気をつけなければならないでしょうか。
A.シニアが何歳から始まるのか?と言うことと関連すると思いますが、一般的には11歳くらいからシニアと言われています。レントゲンを撮影すると12歳以上の90%で多発性関節症が見つかったと言う報告があります。それらを考えるとやはり11歳くらいから気を付けて猫ちゃんのことをよくみていただければと思います。
Q.変形性関節症は非常に多い疾患でありながら、あまり知られていません。この状況について詳しく教えてください。
A.人では高齢になると膝や肩が痛くなるという状況を経験したり、聞いたりすることは多いと思います。それは猫でも同様です。高齢になると猫も変形性関節症が増えてきますがその症状にはなかなか気づくことが難しいです。これを機に愛猫のことをよく観察してみてください。
Q.発見・診断が難しいといわれる猫の変形性関節症ですが、どのように愛猫を観察すればよいでしょうか。
A.変形性関節症の症状は足を庇って歩くことと思われがちですがそれだけではなく、「ジャンプすることが少なくなる」「高い所から飛び降りることをためらう」「階段を上らなくなる」「グルーミングをしなくなった」「爪が伸びている」など一見すると関節の痛みとは関係なさそうなものもあります。これらは老化のサインと誤解されてしまうこともあります。愛猫が抱えている痛みのサインを見逃さないようにしてください。
Q.1 歳以上の猫の74%が罹患している可能性があるといわれる変形性関節症ですが、罹患しないように気をつけることは可能なのでしょうか。(住環境など)
A.残念ながらこうすれば変形性関節症にならないようにできるという方法はありません。ただ、太ってしまうと変形性関節症の症状が強くでてしまうことがあります。また筋肉量を維持することもとても大事なことです。若い頃からよく遊んで運動をして、太らせないようにすることが大切です。
Q.変形性関節症を罹患していることによって起こる別の疾患などはあるのでしょうか。
A.変形性関節症になったからと言って特別になりやすい病気はありません。ただグルーミングをしなくなることによって体表に毛玉ができたり、爪とぎをしなくなったことで爪が伸びすぎてしまい肉球に刺さってしまうことはよく起こります。
Q.ソレンシアによる変形性関節症治療が始まったことによる、これまでとは違うメリットや期待についてお聞かせください。
A.変形性関節症の治療は時間がかかるためいかに治療を継続するかも大きなポイントとなります。今までの薬やサプリメントは毎日投薬しなければなりません。それは薬を嫌がる猫にとって、そして薬を飲ませる家族にとって大変なことでした。しかしソレンシアは月に1回注射するだけで効果が長期間続くため投薬回数が少なくて済むというメリットがあります。猫の変形性関節症の選択肢が増え、多くの猫が治療できるようになることに期待しています。
治療薬としての薬理作用や具体的な効能については、最寄りの動物病院等で相談していただきたいが家族の一員であるペットが苦痛に苦しむ前に上記のアドバイスを参考にして早期発見をしてあげたい。
なお同社では日常から猫の様子を撮影して、獣医師に見せることで関節症の診断や治療に役立ててもらいたいとの想いから、愛猫が走る姿を動画に撮ってインスタグラムに投稿する「みんなで走ろう!CATFLIXキャンペーン」を実施している。ハッシュタグ(#みんなで走ろうキャットフリックス #猫の関節の痛み)を付けてリール投稿すると抽選で、KARIMOKU CATの人気グッズがプレゼントされる。詳細は「みんなで走ろう!CATFLIXキャンペーン」で検索していただきたい。
※写真はすべて記者撮影