鉄道ヲタクの犯行? しなの鉄道敷地内の桜切断に鉄道バー店主「撮り鉄が犯人といわれてしまう背景があったのは確か」

  by 中将タカノリ  Tags :  

2月21日、長野県のしなの鉄道敷地内で植樹していた桜が4本切断されているのが発見された。告発があったのは、しなの鉄道社員が運営する『Twitter』上でのこと。社員は同地が信濃追分~御代田間、浅間山を望める絶好の写真スポットであったことから撮り鉄、すなわち電車の撮影ファンが写真撮影のために桜を切断したと判断。

「残念なお知らせです。 信濃追分~御代田間の浅間山を望めるカーブ区間に植樹されていた桜の木のうち4本が無残にも切断されてしまいました。 植樹されてから数年、初めて花の咲く日を待っていました。 切られた枝の先には初めての蕾がついていました。」

「もうすぐ咲く桜の木を切ってまで撮影した写真に、何の価値があるというのでしょうか? 撮影者の方ご自身に、今一度問いかけていただければと存じます。 あなたの首を絞めているのは、あなた自身です。」

と怒りとも悲しみともつかない悲痛なツイートを発していた。このツイートはまたたく間に拡散され『Twitter』や『2ちゃんねる』で大きな話題に発展。桜を切断した鉄道ファンへの糾弾、鉄道ファンのマナーの悪さへの指摘、鉄道ファンによる犯行だと特定できるのか疑う声などさまざまな声が寄せられた。

筆者がしなの鉄道に問い合わせたところ

「あのTwitterアカウントはあくまで社員が運営しているものです。お客様と近い視点でフランクに交流したり情報を発信できるように考えてのものだったんです。弊社としては、運営は認めているのですが、あちらでのコメントがしなの鉄道の公式見解というわけではありません。本日、運営している社員から「先走ってまだ不確実な、感情的なことを書いてしまいました」と謝罪がありました。今回の件に関しては、弊社としてはまず内部で十分な調査をした上で今後の対応を検討したいと思っています。もちろん鉄道ファンの方のしわざだという証拠はありませんし、警察などの機関に報告するかどうかもまったく未定です」

という回答があった。人気のない中での犯行であり、今後犯人の特定に至るには非常に厳しい面があると思われるが、そもそもしなの鉄道社員が”鉄道ファンの犯行”と断定した背景には一部鉄道ファンのマナーの悪さがあった。『Twitter』アカウントの紹介文にも「写真は安全な場所から撮りましょう」という注意喚起が書かれている。

以前ガジェット通信でもとりあげた鉄道バー“駅”(http://www.eki-sake.com/)のオーナーで、鉄道文化に造詣の深いきんてつじろうさんにお話をうかがった。

筆者:今回はお忙しいところありがとうございます。

きんてつじろう:いえ、僕も気にしてたニュースでした。びっくりしています。

筆者:実際のところ、マナーの悪い鉄道ファンの方って多いんでしょうか?

きんてつじろう:残念なことに、確実にそういう人はいますね。10人いたら1人は……ゴミを散らかしたり。さすがに木を切るなんていうのは知りませんでしたけど。

筆者:撮り鉄の方に関しては特にどんなマナー違反をすることがあるんでしょうか?

きんてつじろう:ごく一部なんですが、自分が撮影したい構図の中に他人が入ったら「どけ!邪魔や!」みたいに罵声を浴びせる人もいますね。僕が以前、伊勢志摩ライナーの試乗会に行った時にも、電車の前で駅員さんにカメラを撮ってもらってるおばさん達がいたんですよ。ほのぼのしていい風景じゃないですか。それを自分が電車を撮りたいからって言って「駅員さん!こっちも待っとんねん!はよどけや!」ってまくしたてたりね。マナー違反っていうか熱中しすぎて自分が見えなくなってるんでしょうね。

筆者:言われた側は普通に引きますよね。

きんてつじろう:そうですね。またどなったりしなくてもホームのど真ん中に三脚立てて乗客の邪魔になったり、線路とか立ち入り禁止の部分にまで入り込んで撮影する人もいるので……。

筆者:良心的な鉄道ファンの間ではどのように思われているんでしょうか?

きんてつじろう:「またくだらんことやってるな!」ってみんな批判的に見ていますよ。大多数は常識のある普通の人ですしね。散らかったゴミを片づけたりもします。あと、これはこれで別の問題なんですが、撮影ファンに対して電車の窓から「兄ちゃん。何やってんの?」みたいなこと書いたプラカードを出しておちょくる人も出てきてるんです。撮影ファンにとっては写したい構図の中にプラカードが入れられて屈辱的だからトラブルに発展するし、プラカードを出すこと自体も危険行為なので、負のループというかマイナスがマイナスを生んでしまっている状況があります。良心的な鉄道ファンの中からマナー改善を呼びかけていかないといけませんね。

筆者:今回の問題で盛り上がったインターネット掲示板などによると、鉄道員の方ともめてまで写真を撮影しようとする人もいるということで、本当にきんてつじろうさんのような良心的な鉄道ファンの方からいい影響力を発してもらえればと思います。

きんてつじろう:駅員さんを邪魔したりもめるなんて言語道断ですよ。特殊なパターンかもしれませんが、僕自身は子供のころから何人かの駅員さんや乗務員さんと親しくお付き合いする機会があって、その中で鉄道に対する想いが深まったり心温まるような経験をさせてもらいました。記事になるので詳しいことは言えませんけどね(笑)。でも、真の鉄道ファンなら鉄道員の障害になることをするなんて本当にありえない。今回の事件にしてもまだどんな人が犯人かわからないけど「撮り鉄が犯人」と言われてしまうような背景があったことは確か。思い当たる人は反省して欲しいです。

筆者:ありがとうございました。最後に読者のみなさんにメッセージなどお願いします。

きんてつじろう:節度をもって楽しめば鉄道はとっても魅力的な世界です。自分の好きなことはマナーよくやりましょう!

真の鉄道ファンとして熱心な言葉の数々をいただくことができた。事件の真相解明とともに一部鉄道ファンのマナー改善がなされることを願うばかりだ。

※画像は『Twitter』から引用しました。

中将タカノリ

■シンガーソングライター、音楽・芸能評論家 ■奈良県奈良市出身 ■1984年3月8日生まれ ■関西学院大学文学部日本文学科中退 2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。 歌謡曲をフィーチャーした音楽性が注目され数々の楽曲提供、音楽プロデュースを手がける。代表曲に「雨にうたれて」、「女ごころ」(小林真に提供)など。 2012年からは音楽評論家としても活動。さまざまなメディアを通じて音楽、芸能について紹介、解説している。

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