日本国への外国人の入国が緩和される中で、業界によっては期待されるのがインバウンド需要だ。
外国にいても母国の情報は知りたいのが性であって、これはどこの国民でも同じこと。今ではインターネットがあるので映像でも文字でもニュースを見ることは可能だ。それがテレビであればなおいいのは言うまでもない。海外に出た時にホテルで現地のテレビ番組を見るのも楽しいが、気が付けばNHKワールドを見てニュースを眺めていたりする。
日本に来た外国人も同様だが、母国のテレビ番組をリアルタイムで見ることはなかなか難しい。そこで日本で海外の衛星放送を受診して契約先にネット配信するサービスが登場する。
セットインターナショナルが提供する国際衛星放送サービス「SET LIVE」はまさにそんな需要を満たすためのサービスだ。
このサービスは、民泊・ホテル・旅館等の宿泊施設で視聴できる豊富な海外衛星放送(外国語)をリアルタイムで配信している。同社と各放送局の間で、日本国内の番組配信に関するライセンス契約等を締結し、全ての番組配信について許諾を得ているので、大きなパラボラアンテナ設置することなく、インターネットを通じて視聴できる。
写真は法人契約向けの画面を家庭のプロジェクターで天井に投影したものだ。もちろんタブレットやスマホでも視聴は可能である。
これらのサービスで宿泊施設やインバウンド向けの観光バスで外国人に母国の放送をリアルタイムで配信することができて喜ばれている。さて、このサービスは個人向けにも提供している。これが本稿の主題でもある。日本人が個人向けサービスを使用して楽しもうというものだ。
法人向けのサービスは15局の視聴が可能だが、個人でも契約できる7(セブン)パックは7局が視聴可能だ。そして、なんといってもお手軽なのはその料金で、月額700円(税別)と破格だ。
普通であれば、語学学習に利用できるという発想だが、それだけではない。
これらの視聴できる放送局のほとんどは、NHKワールドのような外国人向けまたは在外邦人向けに編集された番組ばかりではなく、現地で流れているローカル番組も多い。
よって番組の構成は多彩である。定時ニュースはもちろんのこと、時事番組やドラマや映画、エンタメ番組まで多くのジャンルがある。また何かの分野に特化した放送局もある。
現在ではインターネットで同時配信している放送局もあるが、権利関係や法規制によりすべてをLIVEで視聴できるわけではない。本サービスは同社が代表して外国の衛星放送を受信して動画に変換して配信しているので、流れているそのままだというのが特徴だ。
技術的な話になるが、衛星放送や通信衛星の周波数はテレビのUHFではなくさらに上のSHFの周波数を使用している関係で、サービスエリア外縁部やエリア外では受信するのは難しい。それを巨大なパラボラアンテナで受信しているので映像品質は問題ない。問題があるとすれば、ネットの回線速度遅いときに途切れることがあるが、これはこちらのWIFIやネット回線の問題だ。
さて、個人が月額700円で契約でき視聴できる7局は次の通り。
xing kong international(中国・エンタメ/バラエティチャンネル)
channel[v]china(中国・音楽専門チャンネル)
Hunan TV International(中国・湖南テレビ/視聴率第2位の地方衛星放送)
CCTV-4(中国・国営放送在外華僑向け)
France 24(フランス・国際ニュース専門)
RAI italia(イタリア・公共放送)
Channel News Asia(シンガポール・公共放送)
最近人気のC-POPなどは音楽やエンタメ専門チャンネルでわんさか流れているし、中国語がわからなくてもエンタメ番組ならやっていることは日本のバラエティと同じなので、テイストが違うだけで内容は結構笑える。
さらに昨今の混沌とした世界情勢をあらゆる角度から見るためには日本のメディアだけではなく外国メディアの視点や映像が役に立つ。
例えば各国の公共放送やニュース専門チャンネルの映像を見れば言語はわからなくても何のニュースをやっているのかは分かるし、日本で流れる映像とは視点が異なることがわかる。
そうしたマルチな視点で世界を見ることにより、国際感覚が世界各国の現地の立場からも身につこうというものだ。
ただ漫然と視聴していると今度は何を言っているのかが知りたくなるのが人情というものだ。
そうやって英語だけではなく中国語もフランス語もイタリア語も勉強し始める契機となる。こうした動機付けは人間の持つ好奇心や探求心からくるものの方が継続しやすい。
日本人は外国に行っても「シャイなので意見を述べない、言わない、議論をしない」と外国人からよく言われる。しかし当たらずも遠からずで、英語が流暢に話せる人はぜひ日本の政治や経済、世界情勢についてご自身のオピニオンを英語でスピーチしてみていただきたい。
おそらく満足に話せないことだろう。要するに日本人は日本のことについて知らなさすぎなだけである。これは悪いことではなく、政治経済について知らなくても何も思わなくても生きていける社会だということだ。
外国ではそうはいかない。明日の政権交代が自分の命に係わる国はいくらでもあるので、無関心は命とりなのである。そうした意味からも、同機は何でもいいのでオピニオンを持つ道具として月額700円は高くない。
最後に面白い使い方
堅い話をしたが、最後に楽しい使い方をしてみたので紹介する。画像は2023年1月1日元旦の0時12分(日本時間)の台湾の放送局のものである。画面の時刻が23時12分になっていて、カウントダウンは気の長い47分前になっている。
台湾と日本とは時差が1時間あるので、日本がすでにカウントダウンが終わり「あけましておめでとうございます!」とテレビで言っている時刻は、台湾ではまだ大みそかの23時台だ。日本の視聴者にとっては2度目のカウントダウンを見ることができる。中国の放送局でも時差は1時間なので同じことが起こっている。日本よりも先に新年を迎えるのはオールトラリア、ニュージーランド、ニューカレドニアあたりの地域しかない。他はすべて日本よりも後に新年を迎える。
写真は日本より1時間後に新年を迎えた台北の様子で、画面には花火が打ちあがっている様子が見える。さらに7時間後にはイタリアでもフランスでも新年を迎える。その気になれば数回はカウントダウンの興奮をLIVEで見ることができる美味しい使い方もある。
何を目的にするのかにより使い方は視聴者の数だけあるので、あなただけの使い方と価値観を見出して世界を楽しんでいただきたい。来る海外旅行が以前のように自由にできる日には、現地で同じ番組を視聴して、さらに楽しみを見つけてみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影