韓国のソウル高裁は3日、2011年12月に靖国神社の門に放火したとして、かねてから日本政府が韓国側に身柄引き渡しを求めていた放火犯の中国籍の男、劉強(39)について、引き渡しを拒否するとの判決を下した。同容疑者は4日午前、上海行きの旅客機で韓国を出国した。
Twitter上でも、今回の韓国側の対応について多数の疑問の声が上がっており、「『靖国放火犯日本に引き渡さず』について韓国に詳しい識者」として、浅羽祐樹氏と木村幹氏の見解がまとめられていた。
なお、浅羽祐樹氏は政治学者(韓国政治・比較政治・国際関係論専攻)で山口県立大学国際文化学部准教授。一方、木村幹氏は政治学者(比較政治学・朝鮮半島地域研究)で神戸大学教授。
浅羽氏は
・事ここに至ると、個別の争点よりも、法や条約に対する日韓の齟齬こそが一番の問題だと思う。
・靖国神社に放火するのは「政治的な大義」で、「義士」扱いですか。ぶったまける。
として、韓国側の対応について否定的だった。
そして、「国民情緒法」について言及した。
・今日聞いた明言。「憲法よりも上位法と言われる『国民情緒法』をせめて明文化してくれ。」
・「国民情緒法」に対する韓国人の理解。検索最大手のNAVERの辞書。「国民情緒にそぐわない行為を法に見立てている。実定法ではない不文律。世論に基づく感性の法で、メディアの影響を多く受ける。世論に依存し法規範無視の風潮を生むという問題もある。」
ちなみにこの「国民情緒法」と云う言葉は、2005年8月に韓国の日刊紙・中央日報、10月の韓国日報でも取り上げられているが、政策判断の物差しとしてこのような曖昧なものが使われては困るという否定的な文脈で登場する。
さらに木村氏は、
・しかし、靖国放火犯が政治犯認定だと同様の事を日本をはじめとする外国で行って韓国に逃げ帰った人は全部政治犯になってしまう。韓国の高等裁判所は自分の行っている事の意味が本当に分かっているんだろうか。
と述べており、
・靖国放火犯「政治犯」認定。行政ならともかく司法の判断でもあるし、中国からの圧力を考慮して、というのは多分違うような気がする(社会的雰囲気はあるかも)。それよりは、韓国の「法文化」が正面に出た事件のような気がする。勿論、詳しい背景については即断できる段階ではありません。
など、そのソウル高裁の判決の背景には中国の圧力ではなく、「韓国の法文化」があると指摘した。
また、「額賀氏訪韓の前日の判決というタイミングに何らかの意図は感じられますか」とのフォロワーからの問いに対しては、木村氏は
・感じません。司法ですから
・まあ確かに高裁の裁判官が、日本か朴槿恵を陥れようとしてわざわざ1月3日に決定をぶつけてきた、と言う可能性はゼロではないんだろうけど、さすがにうがった見方過ぎるような気がするし、判断を下した高裁の判事に関する情報もないし、何よりも額賀訪韓の日程決まったの結構最近だし。
として、否定した。
なお、
・靖国放火「政治犯」の判決が3日に出たのは、勾留期間が5日までだったからです
との声も上がった。
木村氏は冒頭で、今後の日韓関係を読み解くキーワードの一つに「韓国の裁判所」を上げている。
・某新書でも議論したけども、今後の日韓関係の鍵の一つは、韓国の裁判所が握っている。詳しくは、浅羽祐樹・木村幹・佐藤大介『徹底検証 韓国論の通説・俗説─日韓対立の感情VS.論理』(中公新書ラクレ)、をどうぞ http://t.co/vcxDXvRV
一方、これらの意見について
・「国民感情」を理由に平気で法をやぶったり法をやぶることを肯定したりしてるのは日本のほうだよなあ。
・「国民情緒法」? ああ、あれか。朝鮮学校への無償化適用を先延ばしにするのに使われたやつのことか。
といった声もみられた。
日韓は合わせ鏡のようだとよく言われるが、韓国の対応について疑問を投げかけるときに、日本の姿も映し出されていることに気がつく人は少ないようだ。
日本にも「国民情緒法」はありませんか?
画像: ナンダカ フラリさんがまとめたトゥギャッターのキャプチャー
「靖国放火犯日本に引き渡さず」について韓国に詳しい識者の見解