初主演作『マイスモールランド』嵐莉菜インタビュー 「家族も仕事も自分の居場所だと改めて気づいた」 居場所を失くした17歳の主人公を熱演

  by ときたたかし  Tags :  

現役高校生であり、ViVi専属モデルとして活躍するモデルの嵐莉菜さんが、映画『マイスモールランド』で初主演&スクリーンデビューを飾りました。埼玉に普通に暮らす17歳のクルド人サーリャ役で、ごく普通の高校生活を送っていたが、あるきっかけで在留資格を失い、当たり前の生活が奪われてしまうという、思春期の少女の苦難と葛藤、成長を描く物語の中で、デビュー作とは思えない堂々とした演技を披露しています。自分自身5か国のマルチルーツを持つ嵐さんは、わがごとのように作品に取り組み、改めて気づいたことも多かったと言います。お話をうかがいました。

■公式サイト:https://mysmallland.jp/ [リンク]

●嵐さんが演じられた17歳のクルド人、サーリャというキャラクターには、とても共感したそうですね。

そうですね。彼女は日本で、普通の高校生として生活をしているけれど、クルドと日本の間で、自分のアイデンティティーに悩んでいるところに共感しました。私も日本で生まれ育ちましたが、両親のルーツが海外にあります。サーリャとは置かれている状況は違いますが、ご縁を感じたので、このサーリャという役を演じたいと思いました。

●作品や役を通じて自分と向き合うことにもなりますよね。

はい。この作品でサーリャを演じたことで、自分のルーツをもっと大事にしようと思いました。サーリャにとっての居場所が家族や聡太であることを考えた時に、わたしの居場所についても考えました。家族もそうですし、今、お仕事をさせていただいている現場も自分の居場所だと改めて気づくことができたので、家族もお仕事も大事にしたいと余計に感じました。

●お仕事も自分の居場所という感覚なのですね。

今回、気付いたことなのですが、自分の外見やルーツを拒んでいた時期があり、まわりと一緒にしたくて髪の色を黒髪にしたいと思っていたことがありました。でも本格的にお仕事を始めてからは、この外見を求めてくださっていることがわかり、それがすごくうれしかったんです。

●なるほど、早く社会に出られたことで居場所に気付いたわけですよね。

そうですね。今まで余計だと思っていたルーツが、わたしの武器だったと強く感じるようになって。だからこそ、お仕事という場所が居場所に思えたんですよね。

●今回は映画初主演でしたが、お芝居の経験はいかがでしたか?

自分なりにたくさん勉強してサーリャを理解していたつもりだったのに、シーンによってはサーリャを理解できていないことがあり、感情を表現できないシーンがありました。何回もNGを出して焦ってしまいまして。大変でしたが、監督が助言をくださり、しっかりお話ししました。その後のお芝居にもつながりましたし、最後のほうは、サーリャとして生きることができたと思います。

●一番の助けとなった助言は何でしたか?

サーリャは、自分で全部なんとかしようとする意志の強い子なんです。わたしだったら、他人に頼ればいいのにと思ってしまうけれど、彼女は他人に弱味をまったく見せずに自分の中だけでなんとかしようとする。そこが、わたしの中では勉強不足だったんです。台本では感じ取ることができていなかったので、シーンを重ねるごとに監督とお話をして、サーリャを理解していきました。参考にしたいくらい、芯の強い女性だったんです。最初は、そこまで強い子だと思っていなかったので、それは発見でした。

●自分だけで考えていてはわからなかったことですよね。

そうですね。役を掘り下げる作業って、面白いなって思いました。こうして理解を深めていけばいいのかと思いましたし、わたしは撮影前に全部理解しなくちゃという焦りがあったんです。でも、監督は、撮影を重ねるごとに、一緒にサーリャを作り上げていく感覚だったので、それがすごくわたしには救いでしたね。

●役が自分に近いから見えなかったこともあったのかも知れませんね。

本当にその通りで、自分に近いからこそ見えていなかったんですね。思い込みがあり、理解ができていなかった。今回その点で、ほかの人になりきるということを学びました。わたしなら、苦境に立たされるシーンで、聡太(奥平大兼)の助けに甘えてしまうかも(笑)。自分以外の人のためにこれだけ頑張るサーリャに、わたしも見習わなければいけないなと思いました。

●今後のご活躍も期待していますが、今お仕事は楽しく頑張れていますか?

俳優もモデルも楽しくて生きがいに感じています。コンプレックスだった自分のルーツが、今は最強の武器なのではと感じているので、仕事でもプライベートでもプラスに考えていきたいです。そして、今後、世界と日本の懸け橋になるような存在になれたらいいなと思っています。

●今日はありがとうございました!

■ストーリー

17歳のサーリャは、生活していた地を逃れて来日した家族とともに、幼い頃から日本で育ったクルド人。
現在は、埼玉の高校に通い、親友と呼べる友達もいる。夢は学校の先生になること。
父・マズルム、妹のアーリン、弟のロビンと4人で暮らし、家ではクルド料理を食べ、食事前には必ずクルド語の祈りを捧げる。「クルド人としての誇りを失わないように」そんな父の願いに反して、サーリャたちは、日本の同世代の少年少女と同様に“日本人らしく”育っていた。
進学のため家族に内緒ではじめたバイト先で、サーリャは東京の高校に通う聡太と出会う。
聡太は、サーリャが初めて自分の生い立ちを話すことができる少年だった。
ある日、サーリャたち家族に難民申請が不認定となった知らせが入る。
在留資格を失うと、居住区である埼玉から出られず、働くこともできなくなる。
そんな折、父・マズルムが、入管の施設に収容されたと知らせが入る……。

(C) 2022「マイスモールランド」製作委員会

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ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo