ロシアのウクライナへの軍事侵攻の中でも、東部ドネツィク州の港湾都市マリウポリを巡る戦いの激しさが報じられています。2022年3月24日には、マリウポリの西に位置するベルジャンスクの港でロシアの揚陸艦『オルスク』を破壊したとウクライナ海軍が発表。YouTubeやSNSなどにクレーン脇に停泊する船より黒煙や炎が見える映像が投稿されています。
ロシアの軍事侵攻によって、マリウポリやベルジャンスクに面するアゾフ海に注目が集まっていますが、船舶による物流が多大な影響を受けています。ロイターによると、黒海やアゾフ海で外国籍の商船100隻以上が立ち往生し、危険な状況下での待機が長引き、食料や医薬品が不足による乗員の状況悪化が懸念されています。
海運国ギリシャ発の船舶位置情報サービス『マリントラフィック(MarineTraffic)』では、アゾフ海と黒海の間のケルチ海峡付近に多数の船がひしめいている様子を見ることができます。
ケルチ海峡に2018年に開通したクリミア大橋の南と北に、数多くの民間船が待機。南の海域には、アゾフ海沿岸の港を目指す船だけでなく、ヴォルガ・ドン運河を経由してカスピ海方面へ向かうはずだった便も停泊しています。中には、2022年1月末から足止めされているコーカサス行きの船も……。
クリミア大橋北の密集域にはロシア船籍が比較的多いことが確認できます。アゾフ海中央や北岸に船の運航・停泊はほとんどなく、戦渦を避けている様子が分かります。
2022年2月26日には、日本企業が船主の貨物船『ナムラ・クイーン』がミサイル攻撃を受けて被弾したことが伝えられたほか、1隻が沈没するなど、既に民間船への被害も発生。機雷が敷設される可能性もあり、世界経済への影響が懸念されます。『マリントラフィック』の船舶情報を見ると、その切迫度がより伝わるのではないでしょうか。
MarineTraffic
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