劇場版アニメーション『DEEMO サクラノオト』イッセー尾形&濱田岳インタビュー:「ハッとする瞬間が見つかると思う」

  by ときたたかし  Tags :  

全世界で累計2,800万ダウンロードを突破したスマートフォン向けリズムゲーム「DEEMO」がアニメーション化され、劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』として、全国公開となります。

不思議な城でピアノを奏でる謎の生物・Deemoと、空から降ってきた記憶を失った少女・アリスの物語で、その彼女を優しく見守る猫のぬいぐるみのミライ役を濱田岳さん、ジョークばかりを言っているくるみ割り人形役をイッセー尾形さんが好演します。

その公開を受け、作品から受け取ったもの、声優の仕事についての想い、そして映画を待っている方たちへのメッセージなどを、おふたりにうかがいました。

■公式サイト:https://deemomovie.jp/ [リンク]

●大ヒット音楽ゲームの劇場版ということで音楽面をはじめ、映像美や奥深いストーリーなど注目ポイントはたくさんある作品ですが、おふたりの感じた全体的な印象はいかがでしょうか?

濱田:最初、これほどまでの世界観の作品になると想像をしていなかったんです。アフレコは未完成の仮の映像に自分の声を当てていくので、映像美や臨場感あふれる音楽など、不慣れな僕には到底、想像もつかないものでした。

イッセー:僕は、掘っていくとなかなか難しいことを扱っているテーマだと思いました。自分を掘っても何もない、反対に外にいくことになっても、それも難しいだろうと。そんななかで記憶を失くしてしまう特殊な状況を作る。記憶を失くしたのであれば取り戻したいと思うだろうし、取り戻した後のこともある。いろいろあるけれども、やっぱり人間って、マイナスになるとマイナスを埋めたくなりますよね。

濱田:ミライを演じる上で理解して臨んだことは、この少女アリスのあがいてく様、頑張っていく様を、簡単に言うと応援していくキャラクターだろうということでした。ただ、彼女の背中に直接触れてグイグイ押して上げるということではなく、触りたいけれど触れないキャラクターなんです。そのぬいぐるみなりの優しさというか、それはとても難しいポイントだと思って臨みましたね。

イッセー:少女アリスを眺めながら、記憶が見つかるといいなあという願いを込めて映画を観ていたら、今度は自分の中に見出すというか、自分に対する応援歌みたいなものだなという気にもなってきたんです。オレもしっかりしなきゃとね。70歳になってもやることはあるんだと(笑)。そういう気分になりましたね。

●ミライもくるみ割り人形も、おふたりにぴったりなキャラクターだと思いましたが、演じてみた感想はいかがですか?

濱田:完成した作品を観た時に愛着がわきました。ラフな段階では、監督も僕もみんなでミライを探りながら作っている状態だったので、完成して自分のできることはやったかなという感じがしたんです。なので、これからどんどん好きになっていくだろうキャラクターだなと思いました。世界中で2800万のファンがいる作品なので、そのミライについては最初知らないことでプレッシャーはありました。「いいのかな、自分で」と、かなりドキドキはしていましたね。

イッセー:こんなに感情移入したことはないですよ(笑)。四六時中、「なんとかでごじゃる」といつも言っていました。自分の中に入れないと「ごじゃる」なんて普通言わないもの(笑)。何かにつけて「ごじゃる、ごじゃる」と言っていましたよ。1週間は「ごじゃる」生活でしたね。習うより慣れろで、やっていました。

●普段とは違う種類の仕事は、大変ではなかったでしたか?

イッセー:でも僕は面白がってブースの中に入ってやっていましたよ。どういう完成形になるのかはわからないけれど、面白かったです。あの作業自体は人がいたほうがいいと思ったからひとりで寂しいなと思ったけれども、やってやれないことはないなと思ってやりましたね(笑)。

●「ひとり芝居」をやられているので、ひとりで寂しいのは意外です!

イッセー:それとは違うんですよ(笑)。これはミライや匂い袋(渡辺直美)などがいたほうが絶対楽しいなと思いました。

濱田:これはみなさんと同じ意見と言いますか、やったことがないことは誰でも最初は「エッ!」「できるかな?」となると思います。でも職業柄、最初のチャンスをもらえることは1回きりなので、チャンスをもらえたことが素直にうれしくて、僕でよければチャレンジさせてください、という思いになりますね。

イッセー:同じ川には入れないからね。水は流れているものだから。

濱田:今回の劇場版『DEEMO サクラノオト』もそうなのですが、普段あまりやったことがない声優さんの世界でチャレンジしてみませんか? という申し出は、ちょっとドキドキはするけれど、客観的に観たら喜ばしいお仕事だなと思ってチャレンジしました。

●今日はありがとうございました!最後にメッセージをお願いいたします!

濱田:僕は完成した作品を観た時に、こんなに可憐な少女からこれほどの元気や勇気をもらえると思ってもいなかったので、とても感動しました。ハッピーなだけのお話ではないのですが、映像美や音楽の迫力を劇場で味わっていただけたらうれしいです。

イッセー:僕はハッとする瞬間が2回くらいありました。で、そのハッとする瞬間が何だったのか、後々考えることになるんですよ。それは観ている人もハッとする瞬間が見つかると思う。自分に返ってくるんです。映画の話ではなくて自分の話である、ということを感じてほしいですね。

■ストーリー

ピアノが鳴り響く音楽学校。聴く者全てを惹きつける見事な旋律を奏でるのは少し影のある少女、アリスだ。人と交わろうとしない彼女だが、好奇心の強いサニア、優しいロザリアと出会い、徐々に変化が訪れる。

空から一人の幼い女の子が落ちてくる。記憶を失くしていたが、黒の紳士がDeemoということはなぜか知っていた。Deemoがつま弾くピアノの旋律に誘われるように、少女は「アリス」という自分の名前を思い出す。そこには、彼女を優しく見守るぬいぐるみのミライ、くるみ割り人形、フワフワと宙に浮く匂い袋がいた。

ピアノの音色で成長する木が天窓まで届けば元の世界に帰ることができるのではと考えたアリスたちは、城に隠された楽譜集めを始める。そこでアリスは表情を隠した仮面の少女と出会う。「あなたなんて、嫌い」と言う仮面の少女とアリスの関係は?
仲間たちとの楽譜集めの冒険。仮面の少女の心。そしてDeemoという存在の謎。時にアリスの頭をよぎる桜並木。

途中で止まる記憶の旋律――。

過去・現在・未来に大きな波紋を広げる音色が、次第にアリスの記憶の扉を開いていく。

(C) Rayark Inc. /DEEMO THE MOVIE Production Committee.

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo