経過と結果、あなたが楽しみたいのはどっち?

  by ムラカミ  Tags :  

世の中には、“「ふっふっふ、この次どうなるかワシ知ってんだもんね。ほらみろ、やっぱりちゃんと言った通りになった」型人間”というタイプの人がいます。これは中島らもが『明るい悩み相談室』で命名したもの(※)ですが、つまり、“知らないものを楽しみたい人”と“知っているものだからこそ楽しめる人”の二通りの人間が存在する、ということ。

はじめて見る映画などで、新しい人物が登場するたびに「この人は誰?さっきの人とどういう関係?」なんて、いちいち聞いてくる人っていませんか?「そのうち人間関係も描写されるだろうから黙って見てろ」と言われても、未知のことが気になって、そこがはっきりしないと物語そのものを楽しめないのです。つまり“知っているものだからこそ楽しめる人”ですね。小説を読む時でも、解説やネタバレを先に読むタイプと読まないタイプとではっきり好みが分かれると思います。「知っているけれど何度見ても読んでも同じところで笑ったり泣いたり感動する」といった、予定調和やお約束を楽しむことは誰にでもありますが、“知っているものだからこそ楽しめる人”はその比重がより大きいのかもしれません。

最近はインターネットの普及によって、海外で行われたスポーツの試合など、録画中継よりも先にリアルタイムで結果を知ることが簡単になりました。しかしこれから中継を見ることを楽しみにしている人、つまり“知らないものを楽しみたい人”にとっては、先に結果を知ることは好ましいものではありません。これを考慮してか、ニュースサイトなどでもタイトル上は「●●の結果」のように、直接的な表現を避けてネタバレを防ぐ工夫をしていることも多いですよね。ところが、先に結果を見て自分のひいきの選手やチームが勝ったことを確認してから、安心して中継を見はじめるタイプの人もいるわけです。まさしく“知っているものだからこそ楽しめる人”ですね。負け試合は見たくない、といった心情もあるのでしょう。試合開始何分で誰それが得点した、という情報を見て、その時間だけ中継を見る、なんて人もいます。自分が満足する結果を知ってから安心して内容を追う“知っているものだからこそ楽しめる人”と、知らない内容を見ながらその経過に一喜一憂する“知らないものを楽しみたい人”とでは、ずいぶんと楽しみ方が違うようです。

“知らないものを楽しみたい人”と“知っているものだからこそ楽しめる人”…さてあなたはいったいどちらのタイプでしょう?

(※)中島らもの特選明るい悩み相談室 その2 ニッポンの常識篇 (集英社文庫)

絵や文を日々細々と綴っています。

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