林遣都&小松菜奈「相手に寄り添い話を聞いたり、ちゃんと向き合う時間は大切」 ダブル主演作の映画『恋する寄生虫』で受け取ったもの

  by ときたたかし  Tags :  

若者から絶大な支持を得ているという新進気鋭作家・三秋縋のベストセラー小説を、林遣都さん、小松菜奈さんのダブル主演で映画化した『恋する寄生虫』が 、いよいよ公開となりました。本作が初共演となる、抜群の演技力と人気を誇るおふたりが、心の痛みを抱える主人公を、かつて見せなかった表情で、静かに力強く熱演しています。

監督は、CMやミュージックビデオなど多岐にわたり活躍する一方、現在放送中の大河ドラマ「青天を衝け」のタイトルバック映像も制作するなど、今大注目の鬼才・柿本ケンサク。今までに観たことがないような異色のラブストーリーとふたりの魅力を、余すところなく映像に映し出しています。林遣都さん、小松菜奈さんに話を聞きました。

■公式サイト:https://koi-kiseichu.jp/ [リンク]

●奇抜なタイトルでもありますが、脚本を読まれた最初の印象は?

小松:まずタイトルに惹かれました。初めから脚本にはマスク越しのキスとあり、コロナよりも前だったから、お話し的にはリアルではなかったので難しいなと思いました。ちゃんと理解できるものとして伝わるかなという心配はあったのですが、寄生された人間の生活に影響を及ぼす虫の遺伝子を残そうとするものと、それを理性で止めようとする人間に面白さを感じました。

林:これまで触れて来なかったジャンルのお話とお芝居だったので、自分がやると考えながら読んでいくと、ファンタジックな世界観の中で表現が難しそうだなと思いました。でも、小松菜奈さんはそういった世界観でも説得力をもってできる方だなと思っていたので、柿本監督のもとで一緒にやってみたいと思いましたし、こういう題材に挑戦する上で、心強かったです。

小松:わたしも柿本監督が演出するCGが、この世界でどう広がっていくのか、純粋に楽しみだったので、現場でやっていきながら、自分でも役の感覚を掴んでいけるのかなと思いました。感情的にぶつかりあうシーンもあったので、とにかく現場でやってみることで一番わかるんですよね。そこでどれだけ惹かれあうかとか、そういうものを表現できればいいなと。頭で考えず、心で表現できればいいなと思いました。

林:プロデューサーさんとお話もしたのですが、心の動きを繊細に描いた作品であり、主人公たちの設定を、とても身近に感じる方もたくさんいるだろうなと。そう思える登場人物だったので、そこはキャラクターがどう生きてきたかということを、ちゃんと自分の中に落とし込んでやっていかないとと思いました。

●完成した映画を観ていかがでしたか?

小松:CGがすごかったです。見えないものを見せるような柿本監督の演出の仕方はすごく面白くて、これから始まる物語にすごくわくわくしました。登場人物の心の動き、言葉じゃなくても伝わる表情ひとつひとつなど、現場でも感じていたことが、映像にも映し出されていました。痛さもあるけれど、切なさもあり、このふたりが巡り合えたことの必然性がちゃんと描かれていました。アーティなものにもとらえられるけど、ふたりの小さな世界の中で、感情が変化していくことが映像の中にぎっしり入っているので、観てくださった方にしっかり伝わるものになったのかなと思いました。

林:いろいろ振り返ると、当初のラブストーリーから、より人の心の部分について、弱い立場の人間がどう人生を切り開いていくか、現場でそういう方向転換をしていったことが印象に残っています。柿本監督も菜奈さんも感覚を大事にされていて、その場で起きることを楽しむ方々で、僕も同じベクトルでいれるように気をつけながら、みんなで新しいアイデアを出し合って、共有し合うのは楽しい現場でした。

●確かに恋愛よりも、弱い立場や生きにくい人の想いを描いていて、そこに寄り添う作品ですよね。おふたりは、自分と重なることはありましたか?

林:僕は潔癖症ではないですが、もともとコミュニケーションが得意なほうではないので、共感する部分はあります。世の中が苦しい今だからこそ、自分に厳しく強くいなければいけないと、仕事をしていく中でも考えるのですが、逆にそれによって疲れを感じやすく、孤独を感じやすくなることもあると思うので、いかに自分をいたわってあげるかということも、大事だなとよく感じます。無理をしないことも大事だなと思うんです。

小松:結局はコミュニケーション不足だと思うので、ちゃんと向きあって話すことが大事ですよね。それは家族も友だちも同じで、仲がいいからこそわかっているようでわかっていないこともたくさんあると思うんです。結局はみんな他人同士。だからこそ話さないとわからない部分があるから、相手に寄り添い、話を聞いたり、ちゃんと向き合う時間は大切だなと思いました。

●今回の作品と出会って、俳優としてよかったと思うことはありますか?

小松:今回の作品では、柿本監督の長編作品に対する想いを汲み取って、わたしたちの中で生み出すような瞬発力とふりきりも大事だと思いました。中途半端が一番恥ずかしいので、自分に対する挑戦みたいな時間でもあって、ある意味自信を持って臨まないといけない作品でしたね。

林:僕も柿本監督との出会いです。また必ず監督の作品に参加したいと強く思いましたし、監督が生み出すものをこれからもたいです。思考が先をみているというか、将来を見越した革命的なことばかり思い浮かぶ方なんです。常に新しいことにチャレンジされていると思いますし、今回の作品も想像をはるかに超えもので、監督とのこの出会いは大きかったです。

■ストーリー

極度の潔癖症で人と関わることができずに生きてきた青年・高坂賢吾。ある日、見知らぬ男から視線恐怖症で不登校の高校生・佐薙(さなぎ)ひじりと友だちになって面倒をみてほしい、という奇妙な依頼を受ける。露悪的な態度をとる佐薙に辟易していた高坂だったが、それが自分の弱さを隠すためだと気づき共感を抱くようになる。世界の終わりを願っていたはずの孤独な2人はやがて惹かれ合い、恋に落ちていくが———。

作品タイトル:恋する寄生虫
公開表記:公開中
配給:KADOKAWA
クレジット:(C) 2021「恋する寄生虫」製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo