「プロ野球の危機」この言葉を何度耳にしたことだろう。
CS(クライマックスシリーズ)に出てくるチームの顔ぶれに今年も真新しさがなかった。そろそろCSも飽きられてるのかと思うほど、客の入りが鈍い。シーズン2位、3位が戦うクライマックスシリーズのファーストステージは空席が目立った。
セ・リーグの中日ドラゴンズvsヤクルトスワローズ戦の一塁側スタンドはガラガラ。中日がブランコの逆転ホームランでファイナルステージ進出を決めた劇的な試合の観客動員数は平日とはいえ23264人。これは前落合監督では客を呼べないという理由で突然辞めさせられたファンの反発なのかもしれない。
パ・リーグも北海道日本ハムvs福岡ソフトバンク戦の第3戦では本多選手(ソフトバンクのセカンド)がファウルボールを猛烈に追っかけてフェンスにぶつかりケガをするなど、鬼気迫るプレーがあり、日ハムの日本シリーズ進出が決まる試合だっため、37166人も詰めかけたが、第1戦は31022人、第2戦は23610人と4万人収容できるドームでは寂しかった。
プロ野球全チームの年間平均観客動員数は前年度と比べると数百人単位で減っているだけなのだが、ここ数年は過去より上回ることはなく、徐々に少なくなっている。ある意味この動きは不気味である。
ところが巨人と中日のファイナルステージで様子が一変する。
中日が3連勝して王手をかけるまでの視聴率は、第1戦12.1% 第2戦が8.1% 第3戦11.5%と平凡だが、巨人が勝ちはじめると第4戦14.4% 第5戦17.5% 第6戦平均視聴率は20.1%で瞬間最高は30.6%と数字はうなぎ上り。
関東だけの数字だが、これは眠っていた巨人ファンやプロ野球ファンを目覚めさせたのかもしれない。それくらい試合内容が濃かった。第4戦から流れが変わり、中日があと1勝のところまで追い詰めたのにも関わらず、巨人がまさかの3連勝。1勝のアドバンテージがある巨人が逆転で日本シリーズ進出を決めた。
どうしてこんなにも極端に流れが変わってしまったのだろう。
中日がヤクルトとCSを戦っている間、巨人は韓国のチームと練習試合をして調整していたが、やはり本物の緊張感のある試合勘を取り戻すのは容易じゃなかったようだ。巨人打線が慣れてきたのは第4戦ということになるのだろうか。
同じチームと移動日なしで6連戦やるというのはお互いのデフェンス側に有利に働いたようだ。
中日は大島だけが平均してヒットを打っていたと思う。ブランコは一発も出たが、荒木、井端、和田など肝心なときに凡打するケースが目立った。巨人も阿部に本来の調子が出ず、二冠王の陰がなく、お互いのクリーンナップはバットが湿っていた。
6戦の中で投手力も打線もそれほど力に差がなかったのに、唯一伏兵の駒が中日にはいなかった。選手層の厚い巨人に下位打線や代打に良い選手が残っていた。
特に象徴的だったのは第6戦の2回裏の巨人の攻撃。5番高橋、6番村田、7番古城、8番寺内の4連打が試合を決めた。
正直、中日よりも巨人が日本シリーズに出たほうが日本シリーズは盛り上がるだろう。それは視聴率が証明しただけじゃなく、第6戦の9回ツーアウトであと一人となったとき、観客から巨人抑えの西村コールが自然と沸き起こり、東京ドーム内の熱狂を反映していた。
中日がファイナルステージ進出を決めたとき、同じような雰囲気があれば、結果は違っていたかもしれない。
今回のセ・リーグのCSはプロ野球の面白さの原点回帰を促した。
画像:from flickr YAHOO! (http://www.flickr.com/photos/_231sk/8056997835/)