2006年、アメリカ合衆国ミズーリ州で一人の少女が自殺に追い込まれた。少女の名はメーガン・マイヤー(13)。ことの経緯はこうだ。
娘に対するいじめに激怒したローリ・ドリュー(47)が娘や知人と協力のもとSNSサイトの『My Space』上に“ジョシュ・エバンズ”という架空の青年のアカウントを開設。メーガンに接近して頻繁にメッセージをやりとりしておき、親近感をいだかせたところで
「もう俺たちの関係は終わりだ。」
「お前のような極悪人は生きる資格がないぜ! 死んだら少しは世の中スッキリすらぁ。」
とぶちまけたのだ。ローリにどこまでの悪意があったのかはわからないが、注意欠陥障害(ADHD)やうつ病を患っていたメーガンはこれに激しく失望。
「この人殺し!」
という返信を送った21分後、自室のクローゼットで首をつっているところを発見され、そのまま帰らぬ人となった。その後、ネット住民からの告発もありローリの一連のたくらみは発覚。CNNが実名公開でニュースを取り上げたこともありローリはロサンゼルスの連邦大陪審で詐欺、不正アクセス、虐待などの罪により起訴された。世論も厳罰を求める声が多かったが、事前にこういったケースの事件を具体的に裁ける法律が整備されていなかったことが影響して最終的に免罪となっている。
こういった悲劇を未然にふせぐため、リンダ・サンチェス下院議員は2009年に“メーガン・マイヤー・ネットいじめ防止条例法案”を提出。しかし議論は未成年(もしくはサイトが許可しない年齢)者のSNS不正登録、SNSや学校裏サイト上でのいじめといった論点のみにとどまらず、親が子供の人間関係に介入するモンスターペアレンツ(アメリカではヘリコプターペアレンツと呼ぶ)増加の風潮、表現の自由とネット規制のかねあいをめぐる問題などさまざまな角度から取沙汰され混乱。同法案はいまだに成立の日の目を見ていない。
インターネットの急速な普及により、現代のアメリカの若者をとりまく環境は激変しているが、彼らにとって安全で居心地のいい社会が整備されるのはいつの日になるだろうか。この心配は日本においてもしかり、である。