2019年に開館200周年を迎え、世界最高峰と言われるスペインのプラド美術館の全貌に迫るドキュメンタリー『プラド美術館 驚異のコレクション』が7月24日(金)、全国公開となりました。もともとは政府の緊急事態宣言発令直後の4月10日(金)に公開予定だったので、約3か月遅れての全国ロードーショーとなります。
15世紀から17世紀にかけて“太陽の沈まぬ国”とも呼ばれたスペイン王国では、歴代の王族が圧倒的な経済力と美への情熱を背景に美術品を収集していましたが、今回の映画ではアカデミー俳優のジェレミー・アイアンズが本国版のナビゲーターを担当。そして、その日本語吹替版をスペイン文化特使でもある今井翼さんが担当しました。初めてヨーロッパ美術に触れたのはプラド美術館だったという縁もあり、今井さんがスペイン美術の世界に誘います。ヨーロッパ美術や歴史に詳しい人もそうじゃない人も、大きな感銘を受けるだろう本作について、今井さんが語ってくれました。
●「ガジェット通信」は映画ファンの読者も多いので、アカデミー賞俳優のジェレミー・アイアンズがナレーションを務めている点でも注目作なのですが、その日本版を担当されていかがでしたか?
ジェレミー・アイアンズさんの声を自分の声で表現することは、とても難しいことでした。ジェレミーさんは僕よりもずっと年上の名俳優で、僕は今38歳なので、年齢的にしっくりくるかどうか不安がありました。たまに声が低いよねと言われることはありますが、この作品は普段のお芝居とはまるで違う、これだけ壮大なドキュメンタリーですよね。だから、自分の中で躍動感を大きく出すイメージでナレーションをしました。
僕にとっては、これだけ膨大なセリフをしゃべるナレーション、吹き替えの仕事は初めてでしたが、すごくやりがいや手応えを感じましたね。ただ、ティツィアーノなどの人名や地名など、ヨーロッパ特有の発音があったので、実際のところはカミカミでしたけど(笑)。
●わたしはプラドや美術品にも詳しくないのですが、歴代の権力者が心奪われた理由がわかるような内容でした。
迫力ある作品の数々にも注目なのですが、美術館スタッフや各界の第一人者が語る証言は、本当に目から鱗が落ちるようですよね。最先端の機材で撮影した映像の美しさをはじめ、高揚感いっぱいの音楽を通して、感動と発見を感じる作品になっています。僕は何度も何度も観て感激しましたね。
●実際に行かれたことがあるのですよね?
そうですね。15年ほど前にフラメンコを勉強したいとの思い、思い立って強行2泊4日でマドリードに行きました。プラド美術館との出会いは、僕のスペイン、ヨーロッパに関わる上では、すごく重要なものだったと思っています。
僕自身はスペインが好きでフラメンコであったり、スペイン文化特使としてもさまざまな活動をこれまで重ねてきましたが、僕にとって初めてスペインで訪れたのがマドリードで、ヨーロッパで初めて美術館に行ったのがプラド美術館だったんです。だから、すごく勝手に縁を感じていますし、僕自身はプラド美術館での経験から、ひとり旅をする時は旅先で美術館へ行く楽しみを知りましたね。
●プラド美術館は実際、どういうところなのですか?
映画の中でも説明がありますが、プラドは“草原”という意味なんですね。首都マドリードの中心地にありながらも緑豊かで、200年もの歴史がある。重厚感もすごくあります。世界3大美術館と言われるほどで、館内に入る前からゾクゾクするものがありましたね。
●今井さんみたいに現地に行ったことがある方にとっては、どういう作品になりそうでしょうか?
画家たちの当時の思想であったり、美術館に携わる人や舞踏家などのいろいろな角度からの証言もあるので、知識があってもそれ以上に覆されることが当然あると思いますね。僕自身もこの仕事を務める過程で、いろいろなことを知ることができたので、これを持ってマドリードへ行って、プラド美術館でまた絵を見たいなと思ってしまったほどです。
●そうすると今回のナビゲーターは、大変な大任でもありましたね。
僕自身もここまでの経験はなかなかないことなので、その充実感を感じていました。この作品自体が人を誘うという大きなテーマを持っていますが、観る方々が日本語を通して楽しんでもらえればいいなと思いましたね。
●今日はありがとうございました!最後に一言お願いいたします!
美術に造詣が深い方はもちろん、美術館めぐりが好きな方も、世代の違いや知識の有無関係なく、ぜひ映画館の大きなスクリーンでスペイン美術の躍動感と臨場感を楽しんでほしいですね。歴史あるスペインの風景と美術が広がり、実際にプラド美術館に訪れたような気持ちにさせてくれる、充実の映画になっています。この作品を通して異国情緒をお楽しみいただける平穏な日常が戻ることを祈っています。
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