シリア内戦の拷問実行犯 ドイツで公判始まる

  by tomokihidachi  Tags :  

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 ヌーラン・アルガーミアン(現在28)は2011年シリアで反政府抗議デモに参加していた時に逮捕された。悪名高い尋問センター司令官のアンワール・ラスラン氏に「虫に感染した隔離独房から出させてほしい」と懇願したが放置されたという。元シリア政府諜報機関局将軍の経歴を持つラスラン被告と共にアイヤド・アルガイン被告の初公判がドイツで行われた。
 シリアのバッシャール・アル・アサド政権の戦争犯罪を国際法の「普遍的管轄権」で裁く至上初となる訴訟が世界中から注目されている。

シリア高官の戦争犯罪からアサドまで巻き込めるか?

ラスラン被告は58人を死に至らしめ、少なくとも4000人を拷問し、レイプし、さらに性的暴行を悪化せしめた刑に問われている。
だがシリア内戦の「人道に対する罪」と「ジェノサイド」に違反する戦争犯罪に問う罪状の申し立てが検察官から法廷で厳かに読み上げられる。

だがラスラン被告の立場は複雑だ。被告は一年未満、2012年に反体制派に寝返って和平協議の代表派遣団に加入していた。ジュネーブで国連がスポンサーを務めているものだ。

アイアド・アル・ガーリブ(現在43)は複雑な「人道に対する罪」に共犯として逮捕され抗議している裁判が2011年9月1日と10月31日のものなのか、抗議者たちを投獄へと陥れる逮捕劇に見舞われた。

国連安保理が決議を採決することで事態を裁判所へ持ち込める「ローマ規定」第13条「管轄権の行使」(b)安保理による検察官への付託の可否が問われる。具体的にいつ、どこで何があったのかを一つずつ明らかにしていかねばならない。100人ずつ、あるいは1000人ずついる被害者の裏を取って行かねばならない。目撃証言や証拠収集だけで膨大な時間とコストとマンパワーがかかってくる。長期的な捜査が長引くほど立証が困難になる。国際NGOなどが「被害者の聞き取り調査報告書」を提出しても客観的な挙証能力が伴わなければ裁くことはそれでも難しい。さらに国連安保理決議でロシアと中国の拒否権発動により国際刑事裁判所(ICC)の管轄権は無効になる。

「普遍的管轄権」による係争

だからこそ「国内」刑事裁判との関係で一部の国が採用している「普遍的管轄権」で係争するのだ。「普遍的管轄権」とはジュネーヴ諸条約と第一追加議定書の重大な違反に該当・非該当を問わず、締約国の広義の「国際法上の犯罪(ジェノサイド・戦争犯罪・人道に対する犯罪)」を犯した者がある国で逮捕された場合、発生場所や容疑者の国籍を問わず行使することが認められている権利を指す。

シリア側のラスラン被告代理人弁護士のアンワール・アル・ブンニ氏は「尋問センターでは多くの人達がその過程で鞭打たれ、かつてシリア政府内部では一回拷問された」と主張したが、連邦裁判所が出した声明とは内戦中、シリア政府の犯した大規模な暴力を犯したこととは合致しない。国際法学専門家による国際法的に裁判監視が行われる法廷の声明を出した。
反政府軍を同士討ちさせるために権力の座からアルアサドを引きずり下ろそうと彼の部隊が民間の隣人を破壊し尽くしてきた。そして化学兵器を使った「刑務所の群島と拷問のセンター」が国を跨ぎ建造された。

ドイツのためにも裁判が2002年来、「普遍的管轄権」の原則で、世界中の至るところで国内裁判が戦争犯罪事案の裁判を起こせるようになった中で、複数の訴追された重要な事案になってきた。

「それは良き最初の一歩だ。重要な段階であり
シリアの人々の正義の需要を満たすほど重要なものにはならないだろう」
審判を監視しているシリア正義と説明責任(Syrian Justice and Accountability Center)のモハメド・アル・アブドゥラーセンター長は語る。

コブレンツの犠牲者を代表して「憲法と人権の欧州センター」創始者の1人であるウォルフガング・カレック氏は、ナチスの抑圧を医師から兵士、扇動者たちまで個人的な役割を果たしていたものだと理解している分析官たちが追及の手を緩めていかぬよう独特の裁判を闘っている。

シリアをこの拷問国家支援の罪に問うのは初のことであり、9年を超えた内戦でその延長上にある虐待に悪事を働いたシリア政府高官らの事案に説明責任を求めて行き詰まった事態を打開しようと国際的に尽力をしているところだ。

戦争犯罪はドイツ連邦検察官の分断を謀り、シリア政府に近しいアプローチをしてきた。
カレック氏が言うには「集められた遺体こそが挙証能力を助けることに希望を見出すものだ」。アサド政権内部で欧州のシリアの高官達の裁判も芋づる式になされることを言い含めている。

2人の男たちのうち、2014年7月ラスラン被告はドイツに入り、彼と共同被告のアイアド・アル・ガリブは2018年4月にドイツの地を踏み、逮捕された。2019年2月にドイツ当局に裁判を受けるはずだった第一公判が取消しになっていた。

「我々にとってこんなにシリアの歯車となって働いている高級官僚を被告に生け捕ったのは初めてのことだ。歯車を揃えるよう機能させて、これらが他の権力の他の幹部を標的にしなければならない、と言うことができると言わなければならない」とカレック氏は述べた。

ドイツ・マーバーグ大学で戦争犯罪裁判の国際研究文書センター(International research documentation for war crime trial center)ステファニー・ボックセンター長は「もしあなたが確かに重要な人権侵害に関与していたとしたら、リスクとしては小さいかもしれないが、常に危険が伴うことになるだろう」と指摘する。

だが合法的な政策提言は裁判所に望みをかけ、残りの2、3年は続くと期待されている。そしてそれは犠牲者になっていることを暴く手段を提供し将来訴追するための道を拓くことや、シリアの高官に警戒して他の弾圧的国家が被告席に回されることも来たるべき時が来るはずだ。
検察官を解雇したアサド大統領にはシリア国外の法廷では意味をなさない。ラスラン被告が最初の高位職に就いたシリア政権内部でそんな重罪に問われる裁判を行う彼に対する世界初の訴訟が権力をいまだ維持しているアサド大統領を巻き込めるか、注目されている。

欧州でシリアの高官を訴追する多くの努力は、これまで大概、欠落していたシリアで高級官職による象徴的な起訴とシリアにまだ残っている下等兵士の裁判に費やされている。
厄介なのは、欧州政府の方が国境を越えたシリアの事案の立件を思いとどまってしまうことだ。

しかしその事件もまた次なる疑問をもたげてくる。シリアの司法制度の限界について誰がどこで説明責任を果たそうとするだろうか。
酷い戦禍から9年後何十万人という人々を殺害し、地球規模を股にかけて散らばる難民や
ハーグ本部の母体を国際刑事裁判所(ICC)を参照する兆候さえ見せていない。

ドイツにとって裁判が2002年来、「普遍的管轄権」の原則で、世界中の至るところで国内裁判が戦争犯罪事案の裁判を起こせるように、複数の訴追された重要な事案になってきた。

移行期正義(transitional justice)の戦略的達成

「シリアの正義と説明責任センター(SJAC)」モハマド・アル・アブダラー所長はシリアの国家の未来に決定権と見做すプロセスからシリア内戦で直接的な被害を被った全ての人達に包括的かつ意味あるものとなるであろう。
制度的革命:これは抑圧国家の制度を解体することを含み警察や司法、憲法の修正条項を、違反の再現を避け、免責するものである。
メカニズムはシリアの司法を成し遂げることができるだろう。

シリアの「移行期正義」の履行は市民政府と公平な裁判を有用なものにする。最近変わったシリアの司法は2018年にシリア独裁政権による不公平な司法を立て直すことができる。

移行期正義(いこうき・せいぎ・Transitional Justice)とは、紛争(戦争・内戦を含む) 期あるいは紛争後の社会における法の支配において、過去の大規模な人権侵害とその結果に対して折り合いをつける社会の試みの過程と仕組みの総体のことをい う。より簡潔に言えば、紛争が終結した後に、かつての政治指導者や軍事組織の指導者や実行者の審理と処罰について、おこなわれる正義の実践のことである。(※注釈1)

グータ地区出身のシリア人ジャーナリストのアナス・アルクーイ氏は「彼らは自宅を突き破り、私を父と共に逮捕した。調査の過程では私は鞭打たれて拷問された。彼らは卑猥な言葉を使って私に相反する重量金を科刑してきた。イスラム国や旧アル・ヌスラ戦線との取引、さらには不貞を含み。彼らはどんな科刑を支払われても私を殺すつもりだった」とイナブ・パラディの取材に応じていた。

アナスは「シリアの『移行期正義』への言及こそが唯一、最近のシリア独裁体制に変革をもたらすことになるだろう。そして市民政府と公平な司法が有用なものになるであろうかーーー」と一筋の希望をみている。

(※注釈1)「移行期正義」 Transitional Justice in Conflict and Post-Conflict Societies 解説:池田光穂
https://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/150102Trans_Justice.html

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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