宮崎駿を心配させちゃった!『ひつじのショーン』監督が回想:来日特別インタビュー

  by ときたたかし  Tags :  

ひつじのショーンの長編映画シリーズ第二弾『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』が現在公開中です。第一作目超えの壮大で無謀な冒険、ユニークで魅力的なキャラクター、アードマンにとって初の劇場版SF作品であり、いまもなお愛され続ける数々のSF映画へのオマージュも満載。公開に先立ち、リチャード・フェランさんとともに監督を務めたウィル・ベチャー監督が来日。今後のアードマンを担う若手として本作で長編監督デビューを果たしたベチャー監督が、いろいろ語ってくれましたよ!

●アメリカでは「セリフを付けたらもっと面白くなる」などと言っている人がいたそうで、全然わかってないですよね(笑)。

それってたぶんドリームワークスと一緒に『ウォレスとグルミット』を書いていた頃のことだと思う。グルミットが言葉を話したほうが、観客の理解度が高まるってね。その提案のことだと思います。当時はニック・パークたちが難色を示して、アードマンでは、このカタチで物語を伝えることを誇りに思っているからね。ただ実は今回の作品でもルーラなどは、宇宙語みたいな言葉を話している。でも僕たちが作った言葉で、誰にもわからないからいいんだけどね(笑)。これ、実際に使っていた人形です。

●おお、触ってもよいですか? これでの撮影は、その、気が遠くなりますよね?

僕は自分で手を動かしていたアニメーターの出身だけれども、小さな子どもほど手はかからないよ(笑)。

●素人イメージでは口の表現と撮影が大変そうで、油断すると、どこまで撮ったかわからなくなりそうですが。

ストーリーを決めてから絵コンテ作業をするので、全部のカットは決まっているよ。それで監督やスタッフ同士でテストをしあって進めていく。全部のキャラクターを同じ部屋に集めて、全部のシチュエーションを僕たちが演じる。アニメーターたちはそれを参考にするけれど、彼らは監督の僕たちが何を求めているのか、僕たちが演じることで参考にしやすくなる。このやり方だとスムーズに進行するけれど、どうしても撮り直したい場合は、ゼロからやり直しだよ(笑)。

●気が遠くなりそう(笑)

制作チームが一番大変だろうね。40ユニットのミニロケーションがあり、それぞれのシーンを撮っている。それが終わる時期を待ち、次のシーンを撮るわけだが、彼らが一番忍耐力が要ると思う。

●長編化する際の大変だったことは?

だからこそストーリーが肝心で、長時間に値するだけの、耐えうるものでなければいけなかった。ただ、僕らの世界観は、ショーンが誰であるとか決まっていることがいいよね。その設定がしっかりあるから、それを基礎にして、キャラクターの性格付けが可能だから、すごくやりやすい。そのなかでのキャラクターの長編の挑戦は、エモーショナルでみなを引き込めるようなものでなければいけなかった。バランスを心がけているけれど、一番大切なことはキャラクターたちの道のり、旅で、それが物語のハートでなければいけないと思います。

●話は変わりますが、どうしていまのお仕事を?

10歳くらいの頃、アニメーションが好きになった。おそらくアードアンの影響を強く受けていて、でもディズニーも映画館では観ていた。家のテーブルの上で自分でアニメーションをやり始めると、命を吹き込めること、ストーリーを綴れることが本当に大好きになって、アニメーションは何でも表現できるでしょう? いまだに当時の気持ちが強い。ただ、この業界は、大変ではあります。長時間働かなくてはいけないし、何日も暗いスタジオの中にいないといけないので、お日様を観ることも少ないからね。でも、観客が笑ったりして反応している姿を観ることが、一番の喜びだよ。

●日本のアニメーションの影響は?

何年も前、アードマンに宮崎駿さんが来た時に、会って話もしたよ。当時僕はアニメーターとして仕事をしていたけれど、そのプロセスに監督が大変興味を持っていて、特にアニメーターである僕が、ニック・パーク監督(の思うそれ)とちょっと違った動かした方をした時に、「監督であるニックが直せないじゃないか」とすごく心配していました。いま自分自身が監督となってみて、その意味、気持ちがよくわかるよ。映画もアニメーションも僕はもともと大好きで、最近ではジブリの『レッドタートル ある島の物語』も観た。基本的には日本のファンです。

●余計なことですが、なぜディズニーのほうには行かなかったので?

触れること、この手触り感がいい。ストップモーションアニメ―ションが大好きなんですよね。あとはもう技、芸という側面も好き。ストーリーテリングという意味では、ディズニー/ピクサーは最高だと思う。すごい量のストーリーテリングをしていますよね。リスペクトをしているけれど、たとえばさっき話した、自分が小さかった時にハマった理由というのは、たとえば絵を描くよりもモノを作るほうが早かったりして、自分が子どもの身なのにできることだったことは大きい。手を使うことがいまだに一番の魅力だと思っているし、監督としても僕たちは特別な環境にいると思う。文字通り、僕たちが作ろうとしている世界がそこにあるわけで、物理的に没入ができるからね。

ミニチュアの人形に命が吹き込まれて、生命が宿るということ。それを自分たちで観たり。その中に身を置くことは、ちょっとほかの仕事ではできない体験だからね。

●さて本作、クリスマスに最適ですよね!

日本のクリスマスは、友だちと過ごすの? 家族とかな?

●昔は全カップルがホテルでディナーみたいな時代がありましたが、最近は、いろいろだと思います。あと、ひとりで過ごす人もたくさんいると思います。いい時代です。

本当に温かい映画だよ。友情や楽しみ、祝福をするような作品で、楽しい時間を過ごしてほしいですね。笑えるし、すごくアクションもあるし、アドベンチャーもあるし、観終わった後に、絶対にスマイルになるので、笑顔で劇場を後にできので、クリスマスにぴったりですよ。

■ストーリー
ショーンと仲間たちがのんびり暮らす中、 突如UFO がやってきた。街はたちまちUFOフィーバーに沸き、 牧場主も宇宙をテーマにしたアミューズメントパーク“FARMAGEDDON”を作り、一儲けをしようと企む。そんな中、ひょんなことから牧場に迷い込んだルーラは、ショーンたちと出会いすぐに仲良しになる。家族が恋しくなったルーラを家に帰してあげようと計画をたてるも、思いもよらぬハプニングが次々と巻き起こる。ルーラを故郷に返すためUFOに乗り込んだショーンとビッツァーの運命やいかに!

12月13日(金)全国ロードショー!
(C) 2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS. All Rights Reserved.
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
公式HP: https://www.aardman-jp.com/shaun-movie/

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo