記事を書いていると、時々「変換できない漢字」に出会うことがある。
その多くは人名で、初めて見る漢字もあれば、見慣れた漢字にそっくりな漢字なこともある。
初めて見る漢字はそもそも読み方の想像がつかないことも多いが、「見たことがある気がする」漢字は間違い探しのように見比べてしまう。(ちょっと楽しい)
「あぁ、ここの点が2つなのか……」
「よく見ると草冠じゃない」
「同じ漢字かと思ったら中に入ってるのがロじゃなくてエ!」
などなど、見たことがある気がするけどちょっと違う漢字はこういうことがよくある。
記事以外でも「変換できない漢字」=「一般的に使われない漢字」を見る機会は意外と多い。
例えば、「サイトウさん」や「ワタナベさん」はメールに書いてある署名と正式な漢字が違うことがそう珍しくない。
ずっと「斉藤さん」だと思っていた友達が、本当は難しい感じ(漢字)の「サイ藤さん」だったりすることも実際にあった。
こういった特殊な文字は「外字」と呼ばれており、草なぎ剛さんの「なぎ」の字などがこれにあたる。
遺影写真作成・加工サービスを展開するアスカネットによると、葬儀社もこの「外字」に頭を悩ませているそうだ。
葬儀の場では「人生最期の瞬間だからこそ、正しい漢字を使いたい」と願うご遺族の方や葬儀社は少なくありません。
現状、外字対応には、筆耕ソフト導入や、カッティングシートによる切り貼りなどで行われています。
しかし、これらの作業には手間がかかる為、悩みを抱えている葬儀社が多いようです。
そうしたことから、昨今ではデジタルサイネージでお名前などを出すケースも多くなっておりますが、サイネージにおいても「外字」の対応がされていないため、葬儀社の悩みになっています。
(出典:アスカネット広報事務局)
平成24年3月に総務省が行った「市区町村が使用する外字の実態調査」によると、現在は1,166,536文字の外字が使用されているそうだ。
冒頭に挙げた「サイトウさん」の「サイ」の字だけでも85種類あるらしい。
(※「サイ」の種類については諸説あります)
(出典:アスカネット広報事務局)
本当に細かい違いばかりだが、これらは違う漢字として登録されている。
名字研究家の高信幸男氏によると、こうした外字ができた原因は「役所の人間の書き間違い」だそうだ。
もともと、明治時代以前、名字は貴族や武士のみが使うことを許されていました。それが明治時代になると国民全員に名字を使うことが義務付けられました。
そこで多くの人が名字を役所に申請したものの、当時は読み書きが充分でない役人も多く、度々起こる登録時の“書き間違え”がそのまま登録されてしまい現在の「外字」になったそうです。
(出典:アスカネット広報事務局)
デジタルトランスフォーメーションが推進される中、「市区町村が使用する外字の実態調査」では、データの移行やシステム間の連携の際に、外字データを連携するための同定作業や文字コードの変換テーブル作成の作業が発生することで、作業負担や移行コストが増加することなどの課題が指摘されている。
葬儀の場だけでなく、外字対応は今後あらゆる分野で課題になっていくかもしれない。
(参照:総務省「市区町村が使用する外字の実態調査」報告書)
(参照:書籍「日本人のおなまえっ!」(集英社インターナショナル))