日本ワインの革命児たちの姿を描いた『ウスケボーイズ』主演・渡辺大インタビュー「映画作りとワイン作りの共通点を感じた」

  by ときたたかし  Tags :  

日本のワインを世界レベルにまで引き上げたワインコンサルタント・麻井宇介さんの思想を受け継いだ若者たちの姿を描き、第16回小学館ノンフィクション大賞を受賞した河合香織の「ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち」を渡辺大さん主演で映画化。『ウスケボーイズ』が全国随時公開中。

フランスと日本のワインでブラインドテイスティング会を開催し、「フランスのワインの方が美味しい」と思い込んでいる主人公の岡村は長野生まれのワイン『桔梗ヶ原メルロー』の美味しさに衝撃を受ける。この桔梗ヶ原メルローの美味しさの理由には麻井宇介さんによる常識にとらわれないワイン作りがあったのだった。今回は、映画出演をきっかけに日本ワインの美味しさにハマったという渡辺さんにインタビューを敢行!

●ワインがモチーフの映画ということで、たとえば映画『サイドウェイ』などを参考にもしたのでしょうか?

ワインの知識を頭に入れることに精一杯でした。日本にどれだけのワインがあり、どういう種類がありどこが適している、ワイン造りに必要な日照時間など、そういう専門的な知識の習得ですね。僕が演じた岡本さんの畑にもロケ前にうかがい、大地震の話を含め、いろいろとお話もしました。専門用語もたくさん入れながら、作品に入りました。意味もわからずに演じることはせず、みなそれぞれに勉強して感想を言っていると思います。

●確かに、映画を観るまでまったく知らなかったです。

僕もです。実際、脚本をいただいてもピンとこなかったので、監督に「飲もうよ」と誘われ、ここ(取材場所が監督が経営するワインバーでした)に飲みに来て。監督が培っていた知識や経験の習得が撮影までに間に合うかなとは思いましたけれど、これは知らないってもったいないなあと思い、これは大事だから伝えたいことだと思いました。ワインを何杯も飲みましたが、いい気分になりながらも酔っている場合ではなかったですね。

●あのような戦いの歴史やドラマがあったことに腰を抜かしました。

海外の人のほうが情報のキャッチが早いですよね。そうするとどんどん持って行かれてしまい、そういう兆候も常にああるので、僕たちよりもいいワインをたくさん知っていたりする。それもいいことではあるのですが、僕としてはその先に日本人がいて、そのことを知っていて、日本人の食の中にワインという文化が当たり前のように入っていて、というようなことに今回の作品でなればいいかなと思っています。ウィスキーや日本酒などに比べるとまだまだ歴史は浅いですから、観ていただいた方も一緒に歴史を始められると思います。始まったばかりなのでチャンスなんです。

●戦いのドラマはとてもエネルギッシュでしたが、演じている時は、どのようなことを考えていましたか?

映画は最終的には届ける作業だと思っていますが、一年くらい公開の時期を待ってお客さんに観ていただくことって、醸造家の方々もワインを作って仕込み、最終的にお客さんに飲んでいただくので、まるでワインみたいだなとは思っていました。ただ、走るトラックは同じでも、距離がまったく違いますかね。ワインは数年、数十年単位。特に岡本さんの世代で言うと、それほどまだ誰も取り組みもしていなかったことを少人数でやろうとしていた、葛藤していた。その距離は違うけれども、やっていることは同じだと思っていたので、この作品も手探りで答えを探しながら、最後は悩みながら答えを出していく、そこは少し似ているかなと思っていました。

●メッセージ性も大きいですよね?

映画を観たことで、本当に人生で1ミリでもいいのですが、人生に指標になるとか影響を与えるとか、なんでもいいのですが、それが大事なことでしょうね。たとえばワインや食事が腹の足しになるならば、僕たち映像の世界で生きている人間は心の足しを作らなければいけないと、それは津川雅彦さんがよくおっしゃっていたことですが、いまは心の足しになるものが少ないから、いいものを作って、出してあげないといけないだろうと。

●素晴らしい心構えですね。

俳優の中には、何もないところからひねり出すような天才も稀にはいると思いますが、僕の場合は20代後半くらいでデビューと時期が遅く、そこで思うことは自分の人生観を見せなくてはいけないということでした。そういうことが、しばしばあると思うんです。表現する世界では人生観をどれだけ背負っていて、それをアウトプットしている経験もあるほうがいい。いろいろ経験はしているけれど、それを出すところまでが重要かなあと。

●役柄を通じて、熱くなることもありそうですよね。

そうですね。芝居の中では何をしてもいいということはあると思うので、現実世界ではストレスが溜まることも多いわけなので、そういうことを映画を観て発散していただくことは、悪いことではない、とは思いますね。

●それと映画を観ていて、探求心も大切だと思いました。 

その究極が岡本さんみたいに、自分たちでワインを作るみたいなことでしょうね。この探求心みたいなものはモノを造る上で欠かせないことで、俳優もどのように演じたらいいかなどの探求心は失われないもの。僕が演じた岡本さんについては、自分の年齢関係なく、100年先、200年先のワインの品種改良を始めていて、面白いですよ。目先の話じゃないんですよ。

●本日はありがとうございました。今後の活躍も期待しています!

ありがとうございます。最近見た映画で『スリー・ビルボード』がよかったのですが、めちゃくちゃ暗い物語なんですよ。そうとうふりきっている作品でしたが、あの作品のように人間の悩みが出ている作品に惹かれるので、映画は過激でいいと思います。毒がないと、多少のにごりがないと、バランスは保てない。それが人生なので、それを映画で描くべきだと思っています。今回の作品も大変なことが起こるので、そこも注目しながら観てほしいと思います。

『ウスケボーイズ』
http://usukeboys.jp/

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ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo