「お薬手帳」はお得なの?「かかりつけ薬剤師」って何?薬剤師に聞いてみた!

  by 古川 智規  Tags :  

病院に行き処方箋をもらい、それを薬局で調剤してもらう「医薬分業」はかなり定着してきた感がある。
薬局で「お薬手帳」の提示を求められることも多く、うっかり家に忘れてくる場合もある。その際はシールをくれるので家で忘れずに貼っておく。

ところが最近、スマホアプリの「お薬手帳」が普及し始めて記者もそれを使っている。処方された薬の情報はもちろんのこと、服用スケジュールや既往症のデータまで管理できるので便利といえば便利だ。

この電子お薬手帳を見ていると「かかりつけ薬剤師」を利用していないという表示が現れた。
この「お薬手帳」の意味合いと、「かかりつけ薬剤師」というものの制度を薬剤師に聞いてみた。

薬剤師に疑問をぶつけてみた

話を聞いたのは東京都練馬区にある日本調剤・高野台薬局の薬剤師である麻生貴将さん。

–お薬手帳について教えてください

「はい、お薬手帳は患者さんが処方されたお薬についての履歴を時系列で確認することができます。それにより違う病院にかかっても医師が処方履歴を確認して的確な処方ができます。薬剤師はそれらのお薬の飲み合わせについてより専門的にチェックすることができますので、患者さんや医師に確認をしたりアドバイスをすることができます」

–お薬手帳にお金はかかるのでしょうか?

「お薬手帳は冊子であれ電子であれ、手帳そのものにお金はかかりません。むしろ薬局でお支払いいただく負担額は安くなります」

–どういうことでしょうか?

「薬局の規模や地域医療への貢献度により細かく規定がありますので一概には言えませんがお薬手帳のことだけで申しますと、お持ちいただく場合とお持ちでない場合は診療報酬点数が違います。お持ちいただいた方が点数が低いので自己負担額は安いのです。少し専門的になりますが薬剤服用歴管理指導料という項目がこれにあたり、持参された場合は41点、されなかった場合は53点になります。1点は10円ですが、3割負担の場合はその3割ということです。実際にはこれだけではないのですが、お薬手帳だけで概ねこれだけの違いがあります」

–ところで電子のお薬手帳にかかりつけ薬剤師が…と表示されたのですがこれは何ですか?

「かかりつけ薬剤師というのは患者さんが望めば薬剤師を指定して自分専門の薬剤師にいろいろと相談することができる制度です。いわば薬剤師の指名制度とでも言いましょうか。お薬のことだけではなく広く健康サポートをしますので必要な方は積極的に利用していただければと思います」

–お金の話ばかりで申し訳ないですが費用は掛かるのですか?

「これも診療報酬点数が決まっていまして、かかりつけ薬剤師を指定しない場合は薬剤服用歴管理指導料という点数が加算されますが、指定した場合はかかりつけ薬剤師指導料という点数に代わります。3割負担の方で60円から100円高くなります。ただしこれは調剤の時だけにかかる負担ですので、毎月定額でいただくというものではありません」

–具体的にはどのように選ぶのでしょうか?

「かかりつけ薬剤師になれる薬剤師は豊富な知識と経験が求められますので薬剤師であれば誰でもというわけにはいきませんが、基本的な流れとしてはいつも行く薬局を決めていただくのがよろしいかと思います。例えば風邪をひいたら内科に行きますが、歯科治療を受けている場合は歯科、神経痛があれば整形外科に行きます。違う病院でもらった処方箋をいつも行く薬局へお持ちいただければ少なくともお薬の窓口は1つになります。そのいつも行く薬局で条件を満たす薬剤師の中から、かかりつけ薬剤師を選んでいただくのがいいのではないでしょうか。詳細は薬局でお尋ねいただければ詳しく説明してもらえます。かかりつけ薬剤師を指定する際には患者さんの個人情報を深く知る立場になるために同意書をいただきます」

–どのような方がかかりつけ薬剤師を指定されるのでしょうか?

「やはり多いのはお薬を定期的に多く服用されている方でしょうか。ですので後期高齢者が最も多いと思います。理由は様々ですがやはり飲み合わせに不安があったり、服用のタイミングが多くてその整理の指導をお願いされたり、体調が悪くなった際に副作用なのかどうかを確認したいためにお電話をいただく場合もあります。次に多いのはお子様をお持ちのお母さんでしょうか。お母さんご自身に不安はなくても、お子様の体調や様子に不安があったり、副作用やアレルギーの判断できない場合が多いのでかかりつけ薬剤師を指定されるケースが多くなっています」

–電話でも相談できるのですか?

「もちろんです。当社ではかかりつけ薬剤師に指定された薬剤師は勤務表を患者さんにお渡しいたしますし、仮に勤務していない場合でも緊急連絡先をお知らせいたしますので他の薬剤師が対応することができます。夜間や休日でも対応しています」

–しかし病院にあまり行かない人にはメリットはなさそうですが?
「健康な方で病院にあまり縁のない方はそうかもしれませんが、それでも風邪をひいて一般医薬品をお求めになることもあるかと思います。そういう場合でもかかりつけ薬剤師を指定されておけば患者さんのことをよくわかっている薬剤師が相談することができます」

–病院に行かなくても相談していいんですか?

「もちろんです。一般的なドラッグストアと違い調剤薬局は処方箋がないと受け付けてくれないような敷居が高くて入りにくいイメージがありますが、最近の薬局は一般医薬品も置いていますので受診する程度のことではなくても、かかりつけ薬剤師に相談していただければ、お体に合ったお薬を提案することができます。また病院に行った方がいい場合もそのようなアドバイスをすることができますので、結果的に最適な判断のお手伝いができるのではないかと思います。さらに最近多いのは薬局で購入するサプリメントに対する安心感が高いということです。相談をお受けして薬剤師がチェックしたサプリメントですので、個々の体に合ったサプリを提案することの安心感は高いようです」

他に注意点はありますか?

「電子のお薬手帳は薬局により対応するアプリが決まっていたり市区町村でフォーマットが決まっていたり、方式もQRコードを読み取ったり、電子メールで自動的に入力されるものなど統一されていませんので、いつも行く薬局で推奨のアプリをお尋ねになってインストールするといいでしょう。病院で時間がなくて聞くことができなかったことでも薬局では比較的多くの時間を割いてお話をお聞きすることができますので、気軽に薬剤師に相談していただいた方が精神的にも安心できる方が多いようです。その意味でも患者さんの病歴や薬歴をすべて把握しているかかりつけ薬剤師制度を利用していただければいいのではないでしょうか」

薬剤師に話を聞いて、記者も多くの薬を服用しているがそういえば医師と話すよりも調剤の際に薬剤師と話す時間の方がトータルでは長いような気がする。また長く薬を飲んでいたり、医師の処方が変わると薬剤師の方から「お変わりありませんか?お薬が変わりましたけど何か体調変化がありましたか?」とよく聞かれる。月に一度しか行かないのに完全に把握して強い薬があると気にかけてくれているのがわかる。

診療報酬は英語で”Health care fee”といい、文字通り「健康管理報酬」なのだ。医師や看護師、薬剤師を含めた医療チームからトータルな健康サポートを受けて充実した生活を目指してみてはいかがだろうか。

※写真はすべて記者撮影
 取材協力 日本調剤株式会社

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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