外国人ホームステイ学生から見た日本を密着取材!~ラボ教育センター~

  by 古川 智規  Tags :  

ラボ教育センターといえば会員制で幼少から英語教育をはじめとするトータル学習を行う教育機関として長い歴史を持つので、ご存知の方もいるだろう。
同社では日本人の教育のみならず外国からのホームステイの受け入れも行っている。
そこで夏休みを利用して日本にホームステイしている学生に2日間密着取材した。

日本の何に興味があるの?

国籍は欧米をはじめとしてさまざまで、年齢も日本の高校生くらいだ。あらかじめインタビューのことは伝えてある。
まず記者の素朴な疑問として、日本語をなぜ学んでいるのかということであった。というのは日本語というのは他の言語と比較して習得が難しく、日本以外の他国へ行っても使い道のあまりない言語である。もっとも日本語は最先端の科学技術のような内容であっても苦労なく話すことができる便利で高度な言語であることは事実であるし、先進国で英語を話せなくても日本語だけで地位や年収がさほど左右されないまれな国でもある。その点ではわざわざ英語で講義を行う大学や社内言語を英語にする企業はよく理解できないというオピニオンを記者は持っている。言語は単なるコミニュケーションツールに過ぎず、無理に英語にして意思疎通が取れなければ本末転倒だからだ。いずれにせよ日本語を話す人口ベースでは我が国の人口だけでも1億を超えているので決してローカル言語というわけでもない。しかし英語や中国語ほどでもないのでなぜという疑問は持っていた。
彼らの忖度ない素朴な回答では「日本が好き」「日本の文化を知りたいし実際に住んで体験したい」という回答に集約された。
つまり純粋に日本が好きで、その言語たる日本語を学ぶことにより日本人とコミュニケーションをとり日本文化に触れたいというアプローチ手段だという主張なのかもしれない。つまり彼らの方が言語をツールとして正しく理解しているのかもしれない。この点はわれわれ日本人も英語や他の言語を学ぶにあたり肝に銘じておきたい考えだろう。

では、日本のどこが好きなのかという質問については、アニメや漫画という想定通りの回答が多かったものの、それと同等になぜか「神社」や「日本人の秩序やマナー」というキーワードが多かった。
記者のようなおじさん世代が想像する「留学」や「ホームステイ」とは違い、現代では情報源が多くある。彼らはあらかじめ動画サイトで日本の実情や文化を彼らなりに仕入れて日本にやってきている。そのうえで得た情報を信じられず「確かめに」日本にやってきているという一面も感じられた。
それが証拠に神社、神社というが記者は彼らが神社(Shrine)と寺院(Temple)の区別がついてるのかが疑問だったが、ちゃんと知っていた。もっとも彼らが興味を引いたのは神社の縁起や鳥居などではなく手水舎(ちょうずや)だったようだ。その意味については記者が説明をした。

そして日本人のマナーや習慣についても彼らが感心するところだった。動画で日本の満員電車であれだけ人が多く乗っているのにごみひとつ落ちてなく、静かに秩序正しく乗っているのはなぜだという質問を受けた。関連質問で満員電車でリュックを前に抱えているのはなぜだとの質問を受けた。
これについては日本の道徳心というものは子供のころから教育を受け、自分のことよりもまず周りの人のことを想い、後先をよく考えて行動する、そのように後からくる人が気持ちよく利用することを考えればマナーは自然に身につくものだと説明した。
逆に彼らの出身地ではどうなのかと問えば、日本人が多く行く有名な都市や観光地でさえ「汚い」「ゴミだらけ」「大声でしゃべってる」と異口同音に答えた。
これらの日本人のマナーについて彼らは”respect”すべき文化だと語ったが、記者はそれを一般的な「尊敬する」という動詞ではなく「学ぶべき」あるいは「真似るべき」または「吸収すべき」と意訳してとらえた。

ラボ教育センターではホームステイしている学生を西新宿の教室まで毎日ホストファミリーの元から公共交通機関で通わせている。当然ながらラッシュにもかかる時間帯なので、日本人と同じ環境で「通学」することになる。そうさせることで表面上の日本ではなく日本が抱える都市部の問題点やあるいは彼らが疑問や関心を持っている日本の文化について自ら答えを導き出させようとしているように感じて短期滞在であるにもかかわらず自然な形で日本が吸収できるようによく工夫されていると感じた。

茶道体験

さて、2日目は同社がプログラムを組んだ日本文化の体験学習に同行した。
数あるプログラムの中で茶道体験を選択したのは4名。場所は東銀座の歌舞伎座のとなりのビルに入る「茶禅」。
特に外国人向けというわけではなく、日本人も体験することができるお茶室ではあるが今回は英語で行われる外国人向けのプログラムだ。

まずは茶道のビデオでお茶の心や作法、歴史について簡単に学ぶ。

そして先生が流ちょうな英語でお茶の説明をし、お茶の香りをかがせる。お作法の流派は裏千家。

抹茶は石うすでひくものなので、その体験もする。各自が見たこともないだろう石うすを回しながら茶葉が抹茶になるのをその目に焼き付ける。

日本人でもなかなか引く機会がない石うすであるが、小型のものでもかなり重い。これをゴリゴリと回転させながら抹茶を作る。

日本人の引率の先生も石うすを引く。やはり日本人でも珍しい体験なのだ。

狭いビルなのだが、小さなベランダを露地に見立ててちゃんと蹲踞(つくばい)があり、ここで全員が身を清めてから茶室に入る。

先生があらかじめ英語で任意の機会で写真を撮ってもいいですよと伝えてあったので、美しいお菓子が出てもまずは写真を撮るのは日本人と同じ。本来は亭主(ここでは先生)がお菓子をどうぞと言ってから自分の懐紙でいただくものだが、ここはお作法よりも体験重視である。

あらかじめ取り分けられたお菓子を手に持ち楊枝を使って切りいただく。この日は主菓子が出されたようだ。懐紙の折り目が自然に手前に来ているのも亭主の心遣いか。

先生がお茶を点てはじめた。

各自に薄茶が振舞われ神妙に一服している。
スタッフが声をかけるとようやく笑って答えた。

先生に茶碗の扱い方やいただき方のお作法を学びながらいただく。

そして彼らが実際にお点前する体験を行う番となった。おそらく初めて手にするだろう茶せんにみんな興味津々。
先生は「お作法も大切ですがそれよりもお茶は味わうものですので、多くの人に美味しいお茶を飲んでいただきその味や空間、空気を味わっていただければと思っています」と語ってくれた。
彼らの一人はここで売られているお点前セットを買い求めてご満悦の様子であった。国に帰って美味しいお茶を点ててほしいものである。

こうした体験学習プログラムは日程中の何度か組まれており、本人の希望により複数のプログラムから選択する。やはりアニメ系のプログラムに人気があるが、このような純粋な日本文化に触れるプログラムも根強い人気があるそうだ。彼らは一連のお点前の中で「和敬清寂」を感じてくれただろうか。
では、茶道体験の模様を動画でご覧いただこう。

■来日ホームステイ研修生による茶道体験
https://youtu.be/kr7kPZGLJ64

余談だが後日、記者も安価な野点セットを買い求めて一人で一服を楽しんでいる。

歌舞伎座ギャラリー

一行が次に向かったのは隣の歌舞伎座にある歌舞伎座ギャラリーだ。
歌舞伎に使われるセットや道具を実際に触って体験することができる体験型ギャラリーである。

算盤に興味津々の彼らの前で昔取った杵柄よろしく、恥ずかしながら珠算3級の記者が1から10までを足していき55になる計算を実演した。その時は”abacus”という単語を知らず算盤を”Japanese traditional calculator”と説明したのだが、理解してくれただろうか。本当は中国から来たものなのだが、矢継ぎ早の質問攻めに頭が回らない記者であった。

本当に担ぐことができるかごまであり、当然ながらみんなで担ぎ始める。

歌舞伎の舞台で使う船にも乗ることができ、存分に楽しんだようだ。

いわゆるインバウンド招致でクールジャパンと銘打ってさまざまな日本を紹介しているが、そのほとんどがミスマッチになっている現状がある。日本人が考えるクールジャパンと外国人が感じるクールとはかなりのかい離があり、それはいくら日本人が考えても出せない内容である。彼らにしてみれば確かにアニメやお茶も吸収すべき日本文化には違いないが、リュックを前に抱えているのがクールジャパンなのだ。
またこの取材を通じて感じたのは、日本人と違い彼らには彼らなりのオピニオンを持っているということだ。インタビューは無理に日本語を使わなくてもいいと伝えてあったので英語で言いたいことを思う存分語ってもらったわけだが、そもそも自分の考えというものは正義に反しない限り正解や不正解はないので考えていることを思いっきり語ることができる。ところが日本人は自分の言葉で自分の考えを語ることができない、というよりも自分の考えがないので話せないとうことなのだろうか。日本人が外国人に学ぶべきはオピニオンを持つことなのかもしれない。
同社のプログラムでは国際交流や違う年齢層との交流を通じて言葉だけではなく体も使って自分を表現するので、彼らと反対の立場で日本人が外国にホームステイした際のオピニオンが気になるところではある。機会があればそちらの立場からも取材してみたい。

※動画及び写真はすべて記者撮影・収録
 取材協力:ラボ教育センター・公益財団法人ラボ国際交流センター

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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