怪しいネットワークビジネスを追え! ~11

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この連載で取り上げてきたNtBカレッジ(仮称)は2017年9月頃にIBカレッジ(仮称)という別の社名に名称変更しています。この社名変更に合わせて、代表であったS氏が役員を辞任し、新たに山N氏やK野などのグループが代表取締役に就任する形になっています。

また、これに先立ち8月頃から「NtBカレッジは新しく生まれ変わります」と称して、今まで「ネットビジネスで儲けることを教える」として物販などを指導していた業態から、アトリエと称してセミナー会場を使って投資勧誘を行うビジネスに大きくその内容を変更させていきました。この前後でS氏はNtBカレッジの運営から手を引いてたように見えます。

ただ登記簿上の住所はその後もS氏が代表を務めるA社と同じものになっているので、まだ何か関係があるのかもしれません。ただ、お金を集める仕組みも変わっている事から、S氏が主導しているビジネスでは無いように見えます。これは憶測になりますが、どうもS氏は末期状態にあったNtBカレッジを、会員組織ごと別グループに売り払ったように思えます。

では、その末期状態にあったNtBカレッジが一体、何を行っていったのかを中心に検証してみましょう。
 
 

■末期状態であったNtBカレッジ

NtBカレッジは、2015年2月のプレオープンの800人からスタートして三ヶ月で約3000人に会員数を伸ばしたようですが、そこから急速に会員数の増加が鈍り、8月の正式オープンでは約4000人、その後は5000人程度というアナウンスを最後に会員数につての公言は取りやめてしまっています。

 実際の所は、強引な勧誘で入会させてもすぐに辞めていく人が多かった様子で、中々会員数を伸ばせなかった様子が見て取れます。そして、プレオープンから僅か2年後の20017年に入る頃には既に末期状態になっていた様子です。

一応2016年の後半頃までは、東京を中心に新規会員募集の為のエリア説明会を毎週のように開催しており、その情報が公式サイトの方にも掲載されていたのですが、2017年に入ると、新規説明会に関する情報は無くなり、問い合わせフォームなども無くなってしまいます。
代わりに録画したS氏のWebセミナーへの誘導だけという状態になります。この頃には、自慢にしていた新宿のセミナーハウスも閉鎖されてしまった様子です。

さらにS氏が2017年2月に行った会員向けのラストセミナーでは「NtBカレッジはある意味失敗しました」と宣言して、「新しいNtBカレッジが誕生します」と謳い事業内容の大幅な変更を発表します。概要書面を見てみると、これまであった物販サイトや、まとめサイトの展開、ビジネスツールと称したものの提供といった話が無くなっているのが判ります。

この2月に行われたセミナーではNBFAというアフィリエイトのシステムを立ち上げて、会員に組織に関してはアフィリエイト活動しか出来ないかわりに月謝が安い「ユーザー会員」と、それに加えて勧誘活動も出来る「ビジネス会員」に分けるというものを発表します。こうしたライト層の会員と、連鎖販売取引を行う会員を分ける方式は、アムウェイなどの大手のネットワークビジネスを行っている企業でもよく行われている手法です。

新しく主力コンテンツの位置づけになったNBFAは、後にNtBカレッジの組織を引き継ぐことになるK野氏らのグループが持ち込んだもののようなのですが、この内容もいい加減なものだったようです。少しその内容を検証してみましょう。

このNBFAでアフィリエイトのテクニックとして指導していた手法というのは、アフィリエイトを成功させるためには「フェイスブックでイイネを集めよう」というものでした。そもそも闇雲にフェイスブックでイイネを集めた所で、ビジネス上の評価が上がったりアフィリエイトや勧誘が成功するとは思えないのですが、以前から「いねの数に価値がある」として、それを集める手法を販売している『情報商材』があり、その流れを汲んでいる様子です。

NBFAでいいねを集める手法として行われていたのが、ツイッターなどのSNSに、芸能まとめサイトなどでよくある様な読者を煽るタイトルとリンクを掲載させて、フェイスブック風にデザインされたページに誘導するという手法です。そこで使われる記事自体も「他媒体で人気のものをコピペして引っ張ってくる」という身もふた無いものだったのですが、誘導されたページでは「イイネ」ボタンを押さなければ、本文の記事が読めないという形を取っていました。このイイネは本物のフェイスブックと連動していましたので、記事に誘導することでアカウントに対するイイネが集まる仕組みです。

もちろん、この手法は、他の媒体の記事を勝手にコピペするという事ももちろんですが、それ以外にも様々な問題点が有ります。 例えばユーザーが記事やサイトのコンテンツの評価する前に、まず「イイネ」を押させないと本文が読めない形ですから、これはフェイスブックのプラットフォームポリシーにある「ファンゲート禁止」に該当する可能性が指摘出来ます。このファンゲートというのは「いいね!」ボタンを押すことを条件にキャンペーンの応募やページ閲覧などの何かのインセンティブを与える形のもので、評価としての「いいね!」の信頼性を損ねるものになりますから、2014年に禁止されたものです。

こうした仕組みがフェイスブックの運営側に発覚したのかどうかはわかりませんが、大々的に運用を開始した直後の2017年の5月には、早々に運用を停止になってた様子です。
 
 
■ユーザー会員の勧誘

NtBカレッジでは、ビジネス会員が勧誘をして、このユーザー会員を増やすことでもMLMで作られるバイナリーの組織として計上されて、ポイントは少ないですがコミッション報酬を受け取られると説明しています。
S氏は、NBFAのみ使えるユーザー会員は初月300円に月額5000円という低価格な設定なので勧誘がしやすいと主張していました。また連鎖販売取引の勧誘では必要だった概要書面が「いらない」と言って勧誘がしやすいと主張します。この概要書面が必要ないという点に関してS氏は、念入りに専門家に確認を取ったと主張した上で「今まで散々苦しめられてきた概要書面がいらない」という話をセミナーなどで強調します。しかし、この主張には疑わしいモノがあります。
この「ユーザー会員」というのは、物販を行っている従来型のネットワークビジネスとは違い、収入を得ることを目的としてNtBカレッジが仲介してアフィリエイト活動を行うことになります。これは特定商取引法で定められている「業務提供誘引販売取引」になる可能性が出てきます。

業務提供誘引販売取引というのは「内職商法」や「サイドビジネス商法」といったものを思い浮かべて頂くと良いかも知れません。購入したチラシを配布する仕事や、販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事、あるいは販売されるパソコンやコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成などの在宅ワークなど様々なものがあります。もちろん健全な運営をしている所もあるかもしれませんが、いい加減な運営で消費者とのトラブルを引き起こしているケースも多い商法の一つです。

独立行政法人国民生活センターによると、利益が出るという説明で勧誘されて「アフィリエイトをするためのウェブサイトとノウハウを購入しているケース」が業務提供誘引販売取引の定義に該当する可能性がある点について言及されています。
NtBカレッジは、ユーザー会員にアフィリエイトに使う事を目的としたNBFAというシステムの提供や、アフィリエイト案件のあっせんを行う事業を展開しており、ビジネス会員がアフィリエイトで「稼げる」と言って消費者を勧誘しています。そして入会金や月謝と言った形の特定負担が発生していますから、これは業務提供誘引販売取引に該当する可能性が高いと言えるでしょう。

この特定商取引上で定められる業務提供誘引販売取引に該当すると、勧誘に先立って業務提供誘引販売業を行う者の氏名や特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨、その勧誘に関する商品または役務の種類を告げなくてはなりませんし、契約の締結前には概要書面を渡さなくてはなりません。

どうもS氏が主張するような「ユーザー会員の勧誘には概要書面を渡さなくても良い」というのも怪しい話だと考えた方が良いでしょう。これまで様々な面から指摘してきましたが、S氏やNtBカレッジの運営はビジネスの知識が乏しく、単に「連鎖販売取引に該当しないという認識だけしか持っていない」ように思えます。仮にそうだとすると会員がNtBカレッジ側の話を信じ込んで、言われるがままに活動することで、不法行為に巻き込まれてしまう可能性が出てきます。
 
 
■ビジネス会員

NtBカレッジでは低価格の「ユーザー会員」は勧誘活動が行えないので、MLMとしてリクルート報酬を受けるためにはビジネス会員である必要があるという形にしていました。

NtBカレッジ側の説明では「ユーザー会員」は連鎖販売取引とは関係が無いように語られています。しかし「ユーザー会員」の勧誘を口実に、「ビジネス会員」との違いなどを説明を行ってしまうと、実質的に連鎖販売取引の勧誘行為となってしまう可能性も出てきます。
また以前にもNtBカレッジが行っているネットワークビジネスが無限連鎖講、いわゆるねずみ講に該当する可能性を指摘してきましたが、「ユーザー会員」の価格設定が明確なった事で、その疑惑はますます深まります。

NtBカレッジは会員向けの説明で「商材としてネットビジネスというコンテンツがあるので、ねずみ講では無い」とおかしな主張していますが、仮に全面的にこの説明を鵜呑みにするとしても、ユーザー会員には月額5000円でそのコンテンツ部分が提供されている以上、そのコンテンツには5000円以上の価値があるとは主張できない形になります。
もちろんユーザー会員に提供されているコンテンツ自体に「お金を取れるようなものなのか?」という根本的な疑問もあるのですが、少なくともビジネス会員が支払っている月謝の差額になる一万円の部分は、介在する商品やサービスが無く、勧誘の報償とポジションによる金銭分配だけに存在していることになります。つまり「無限連鎖講ではないと主張するのが厳しい」事になってしまっています。
どうもNtBカレッジは「ユーザー会員」というのを切り口に、法の抜け穴を付こうと考えていたフシがあるのですが、適当過ぎてやぶ蛇になってしまった形のように思えます。
 
 
■ホリエモンの動画を無断使用

この動きに前後する形で、は2017年の頭ごろに、NtBカレッジはセミナーで、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏か2014年に近畿大学の卒業式で行ったスピーチの動画を「近畿大学」というロゴもそのままに使用していたことが発覚し、堀江氏側の代理人弁護士がNBCへ直接コンタクトを取って具体的に訴訟の準備を開始したという事がありました。
堀江氏側の弁護士の話によると、NBC側の代理人弁護士は「使用の事実自体把握できていない」として、自ら無断使用等の実体を明らかにはしようとしない状況だったようです。本来ならば社内調査等を徹底するべき所のはずですが、どうも「知らぬ存ぜぬ」で逃げ切ろうとしている様子です。

筆者の方でも堀江氏側から相談を受けて、把握している勧誘セミナーが開催された日時や担当者の名前、セミナーの中で堀江氏のスピーチ動画が丸々使われている様子を録音した音声データ等を提供しました。その中には博多で行われた「NBC新規事業説明会」という、Y田Y太が講師を務める有料セミナーのものもありました。
このY田Y太という人物は、ある投資詐欺が疑われている案件で、投資対策弁護団から勧誘グループの一人として名指しされている人物です。だからといって犯罪が確定しているというわけではありませんが、NtBカレッジやS氏の周りには「怪しげな人物」がウロウロとしており、そう言う人達も色々と問題を引き起こしていたと言えるでしょう。

 
 
■既存会員からの集金

新しくユーザー会員という仕組みを作ったNtBカレッジですが、既に新規の勧誘自体が難しくなっていた様子で、こうした悪あがきも大して成功しなかったようです。その一方で最後に残っている会員からもお金をかき集めようと動いています。

2017年3月半ばごろに「NtBカレッジからあなたへの本当のラストメッセージです」と題して「総額271万円相当の豪華特典を無料でプレゼント」や「50万円を稼ぐ方法を、その場で完全公開」といった、派手な謳い文句でオンラインセミナーを開催します。
この「ラスト」だとか「最後の」と煽りながら、「○○万円相当の豪華特典を無料プレゼント」として、古くて売れなくなった情報商材をくっつける形で勧誘セミナーに誘導していくのは、NtBカレッジを立ち上げる以前からS氏が盛んに行ってきた手法です。
試しに、その豪華特典の内容をみてみると、実に怪しげなツールや情報商材が並んでいました。そういった価値のないものを集めてきて、それぞれに「○○万円相当」というのを適当につけて、それを合計して「総額271万円相当」という数字を出している形です。

NtBカレッジはこのセミナーから、上位3%の会員しか参加できないという「アルティメット」という30万円もする高額な有料のプランの販売に結びつけたかったようです。このプランの購入メンバーは、通常の紹介者ボーナスが3倍になり、さらに新規で二つ新しいポジションを「NtBカレッジ本部が運営する特別アカウントの下に提供する」と言うという説明をしています。会員向けのセミナーでは「先行者利益を確保してもらうために会員向けに先行販売する」と謳い、購入したTop3%しか申し込めないという形でプレミア感を出し会員を煽っていました。ま、これ境に高額な情報商材を会員にネットワークビジネスで販売させようと企んでいたようです。

この商品の優位性として「NtBカレッジで新規に二つのアカウントを取るだけでも、入会金や月謝を合せると年間51万8400円必要なのに、それが30万で買えるのでお得だ」という説明をしています。どうもこのオンラインの勧誘セミナーの謳い文句だった「50万円を稼ぐ方法をその場で完全公開」というのは、この「アルティメット」に30万円を支払えば、オマケで二つのポジションが付いてくるので、新たに新規入会で二つのポジションを申し込むより「年間51万8400円がお得になる」という話だった様です。

もちろん「割引」や「オマケ」が有ったとしても、それは「稼ぐ」という事とは違います。しかし情報商材やネットワークビジネスの世界では、消費者を騙すために、こうしたモノをごちゃ混ぜにしているケースが良くあります。「本当に儲かるかどうか?」は単純に自分の財布に、お金が入るのか出ていくのかを考えると判るはずですが、そこに「夢の実現」だとか「自分への投資」「ビジネスチャンス」だとかいう話を持ち出して、人の感覚を混乱させて、価値のないものを売りつけようとするのは、『情報商材』の世界で使い古されたパターンです。

重要な点ですが、この商品の本質は「30万円支払って購入する、勧誘による報酬分配の割合」ですから、アルティメットはそのまま無限連鎖講、いわゆるねずみ講となる可能性が高いものだと指摘出来ます。もっとも、このアルティメットの場合、二つのポジションが与えられるといっても、それは末端の最下層のポジションですから、そのポジション自体が収益をあげるのは難しいことが予想できます。

またアルティメット購入で新たに二つのポジションを売り切りで渡してしまうのは、組織運営の面から考えても気になる所です。NtBカレッジでは下部に新しくポジションが発生すると、その上位の会員達にはコミッション報酬が発生します。この報酬の原資は毎月の月謝分から捻出する形でした。ところが月々の月謝が入ってこない「売り切り」ですと、新しく増えた報酬分はそのまま負債になります。NtBカレッジは自身の分配モデルを「7割を配当に回している」と説明していました。この説明が正しいとして、本来二つのポジション分でNtBカレッジが得られた売り上げは年間「51万8400円」です。運営側はその7割の35万円程度を1年間の配当として使う必要がある事になります。しかしアルティメットは、30万で「売り切る」わけですから、1年も経たないうちにその売り上げの全てを配当に使ってしまうことになります。

どうも、このアルティメットは、NtBカレッジのビジネスモデルの破綻が迫っているのを判っていながら、最後になんとか会員から現金を搾り取るために無理矢理作り出したコンテンツにように思えます。S氏は長年培ってきた情報商材の販売ノウハウを駆使して、このアルティメットを売ろうとします。実際にマインドコントロールの影響下にある会員の中にはS氏を信じて購入した人もいた様です。
  
 
次回でいよいよ最終回です。
 
 
トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 会員けサイトで使われていた画像を元に自主作成
 
 
※本稿でとりあげている『NtBカレッジ』は、既に活動を停止していると言えますが、S氏を始め、その後の引き継いだ団体は、様々な懸念がある活動を続けております。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。

消費生活アドバイザー めきし粉書房代表。 電子書籍とか出してます。 オカルトから文芸、その他。 最近のメインテーマは「プロパガンダ」とか「マインドコントロール」 貧乏オーディオ愛好家。

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