何もない村をご存知だろうか?
信号もない、コンビニもない、そんな村が今でもそんなに都会から遠くない場所に存在しているのだ。
長野県下伊那郡泰阜村、地図で見ていただければわかるのだが俗に言う南信州という地域である。
縁あって泰阜村の存在を知り興味を持った筆者は今年の冬に秘境のキャンプ場の存在を知った、”二軒屋キャンプ場”でぐぐったら多少情報は出てくるのだが実際に行くとなると一苦労するまさに探検にふさわしいキャンプ場なのである。
冬場は凍結していたりすると危ないので、暖かくなったら絶対行ってやろうと心待ちにしていたのだ。
名古屋から出発し飯田山本インターで降りてキャンプ場に至る山道手前までは2時間もあれば十分に行ける距離、東京からでも4時間あれば行けるくらいではないだろうか?
問題はその先の山道となる。
車1台分の幅でなおかつ路面には落石の跡残る大きな石が散らばっていてさらに踏み外したら谷底へという素晴らしいロケーションであり、ここで対向車が来たらすれ違えないだろう道路を永遠20分ほど走るのである。
途中で撮影をと思ったが、運転していた筆者はその緊張感から写真を撮影するなどと言うことを忘れてしまい残念であるが、助手席に載っていた後輩がビデオカメラを回してくれていたのでYoutubeに動画をアップしてあるので見ていただければ雰囲気くらいは伝わると思う。
途中から舗装すらなくなり久しぶりに砂利道を走る体験もできる、気分はまるでラリードライバーだ。
二軒屋キャンプ場の設備は結構広い20台くらいは止めれるであろう駐車場とそこにある建てたばかりっぽく比較的綺麗なトイレが男女分、そこには水道が来ていて電気も付く。
しかしそこから先はまったくの未開地だと思った方がいい、駐車場から100mくらいだろうか、赤い吊り橋を渡ったところがキャンプ場になるのだが、電気も水道もないただの平野であり、更には携帯の電波も通じないのである。
一応トイレのところに使用者は名前を記入して下さいというノートがあるがもし何かあってからでは恐ろしいことになりそうだったので筆者は一応泰阜村役場の方にキャンプするということだけは伝えておいた。
ただでさえ何もない村の更に何もない場所となると面白いものでその何もなさがたまらなく良いのだ。
さて、ここからは本番。
日帰りならばここでバーベキューコンロでも持ちだして焼きだせばいいのだが、我々はキャンプをしにきたのだ。テントを張らなければ寝ることもできない。
とんでもない道を20分走らないとここから抜けだせず、さらに買い出しできるような店まで行くのにそこから20分かかるという立地なので絶対に忘れてはいけない物がたくさんあるのだが、テントや寝袋は最悪なくても車の中で寝ればなんとかなるのだが、飲料水だけは絶対に忘れてはいけないことを覚えておいていただきたい。
またお泊りであるならば電気も来ていないのでランタンなどを想定されているかと思うが、トイレまで100mくらい歩くので懐中電灯が必要となる、電池式でも自己発電式でも構わない、灯りがないと動くことさえできなくなるくらいに真暗になるので気をつけていただきたい。
またテントの設営や大まかな片付けなどは日のあるうちしかできないことを理解しないととんでもないことになる。懐中電灯の灯りを頼りに作業できるほど大自然は甘い世界ではないのだ。
テントを建て終わりバーベキューでひと通りおなかを満たしたらここから冒険できる場所がある。
10分ほど歩くと”万古渓谷”と呼ばれる渓谷があるのだ。
川沿いを歩くのだがそれほど歩きにくい道ではないので登山靴などは必要ないが、しかし蛇などが出る可能性が高いのでスリッパなどはオススメはしない。
しばらく綺麗な川沿いを歩くと民家が二軒ほど立っている、まさか二軒屋キャンプ場の二軒ってこの二軒の民家のことなのだろうかとかどうでもいいことを考えながら歩いているとあっという間に万古渓谷へ到着する。
折り重なる岩、その合間を流れる水、それらを覆う木々の葉、なんとも壮大な風景だ。それにしても水が綺麗で透き通っている。
川の流れる音だけでも心が癒されるというものだ。
聞く所によるとここを歩いて抜けて隣の飯田市まで抜ける遊びがあるそうだ、確かによく見たら岩に手すりと思われるチェーンが打ち込んである。
途中の岩まで歩いてみたがその先もずっと渓谷であり帰れなくなりそうなので断念、ここから先はそれなりの準備が必要みたいだ。
夜になると星空が綺麗だろうと想像できる、あくまでも想像でしかない、この日は残念ながら曇りで星など1つも見えなかった。
電気の無い生活、いつも通りのベッドで寝れない生活、手持ちの食材や飲料水に限りがある生活、これらを体感するということはつまり避難訓練をしていることと実は同意義だったりするのだ。
最近ではオートキャンプ場など施設の整っている場所も多く、気軽にキャンプが楽しめる時代になってはいるが、たまにはこういった秘境でキャンプをしてみると自分がどんなに都会の絵の具に染められてしまっているかが感じられて面白い。
電気、ガス、水道、道路、通信、医療、それらのインフラは本当に重要で、現代人が現代人らしい生活を行う上においてこれらは欠かせないという意味がよくわかるのだ。
そして我々はそれらのインフラを利用しやすいように整備したり維持するために税金を納めているのだということも思い出せるいい機会である。
どうせ真暗ですることもないのだから、ランタンの灯りを眺めながらお酒でも飲んで、こんな大自然に囲まれながら政治の役割ということを話し合うというのも面白いのではないかと思う。
最後に、二軒屋キャンプ場へのアクセスだが、最新のナビだと”二軒屋キャンプ場”で入っていたりする。
そうでない場合は泰阜村の観光ページやすおか村かわら版に掲載されているし、最悪は泰阜村役場へ問い合わせしていただくことになるかもしれない。
秘境だけに普段では味わえない楽しいキャンプになることは間違いない。