私は幼い頃から生き物が大好きだ。これは父親の影響によるもので、家では様々な生き物を飼育していた。金魚・メダカ・ドジョウ・クチボソ・タナゴ・ヨシノボリ・イモリ・クサガメ・カブトムシ・クワガタ・セキセインコなどなど。
父のモットーとしては、『生き物はデパートで購入するのではなく、自然から頂戴すること』だ。さすがにセキセインコやら金魚は日本の自然から頂戴することは違う(自然にいたとしてもそれは誰かが放った子なので・・・)が、まあ細かく言うと『日本の自然の中で生まれた生き物は自然から頂戴する』ということだ。
私が小学生の時、千葉県の成田空港近くの川の支流でクサガメが獲れる秘密のスポットがあった。父親は車で旅行をしている最中でも小川や池を見かけると車を停め、そこに何の生き物が生息しているのか確かめていた。そんな努力もあって、様々な生き物の生息スポットを知っていたのである。そのクサガメスポットでクサガメをゲットして家で飼育していた。その中に水戸黄門の登場人物の『風車の弥七』にそっくりな顔をしているクサガメくんがいたので、名前を『弥七』と名付けて可愛がっていた。
が、正直・・・・
全部で4匹のクサガメを飼育していたのだが・・・・
どのクサガメも『風車の弥七』に似ており、毎日どれがどれだか分からなくなってしまう・・・・
そこで、1匹のクサガメに、白のペンキで甲羅に『弥七』と書いて間違わないようにした。
やはり名前を付けると愛情が一際湧いてくるもので、この弥七の甲羅に紐を付けて散歩したり、近所の公園の池で泳がせてあげたりして、それはそれは近所の子供達にも大人気のクサガメくんでした。
ある日、小学校の友達と一緒に弥七を連れて近所の池で泳がせてあげた時のことである。
いつものように弥七はご機嫌にこの池を泳いでいた。たまに池の淵につかまって休んだりしながら、またご機嫌に泳いだりしていた。
すると弥七が何か獲物を見つけたようで、いつもの勢いに増して池の中心の方向へ猛烈に泳ぎ始めたのである!!
そんなことはよくあるのだが、その時の勢いは凄まじかった!!
とその時である!!頑丈に縛っていた紐から弥七がスルリと抜けてしまったのである!!
「弥七ーーーーーーーーーー!!」
私と友達が叫びます。しかし紐から解放された『弥七』は猛烈な勢いで泳ぎ続け、池の底に向けて泳いでいってしまいました・・・・
その後、私と友達は弥七を縛っていた紐を片手に遅くまで池を眺めていましたが、弥七を見つけ出すことはできませんでした。。。
それ以降、私はクサガメを見るたびに弥七を思い出し、時には弥七が大好きな池で楽しんでいる夢を見ることもありました。
あれから10年後・・・・
私が成人を向かえた年に・・・・
「巨大化した弥七を発見!!」との情報が、あの日遅くまで池を眺めていた友人から入ったのである!!
その友人とは小学校を卒業してから全く連絡をとっていなかったのだが、卒アルにあった私の自宅の電話番号にかけてきてくれたのだ!!
その連絡を受けた翌日に友人の家に行き、二人でその池に向かった。私はその池に行くのは小学生以来であったのだが、当時と比べて街は大きく様変わりしてしまったが、その池は全く変わっていなかった。しかし小学生の時に見ていた池はもっと大きく感じていたが、池にかかる橋や真ん中にある岩など全てが小さく感じた。
友人が弥七を発見したポイントに行くと、確かに甲羅干しをしている亀が数匹いた。しかし、この池も現在問題視されている外来種のミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)がその時既に幅をきかせており、その池を完全に制圧していた。おそらくデパートや縁日などで購入したミドリガメをこの池に放した人がいたのだろう・・・・私は目を凝らしながら弥七を探し続けた。
すると!!多くのミドリガメの中に数匹のクサガメを発見!!
ゆっくり近づき、クサガメを見てみると・・・・
当時の弥七からは想像できないぐらいの巨大なクサガメばかり・・・・
がしかし!!ある!!
1匹のクサガメの甲羅に!!
10年も経過して巨大化した甲羅にうっすらと!!
白ペンキが!!
『弥七』の文字は見えないが、間違いなく当時書いた箇所に白ペンキが!!
間違いない!!
「弥七ーーーーーーーーーーー!!」
今すぐ池に飛び込んで弥七を抱きしめたかったが、この大好きな池で幸せそうに甲羅干しをしている弥七を見て「そっとしてあげなくては」と思い、しばらく友人と当時の思い出話しをしながら弥七を眺めていました。
どうやら友人は高校の通学路がこの池に近かったため、気が向くと遠回りをして池に立寄り、弥七が現れるのではないかと期待して見てくれていたそうだ。その後友人は社会人となり、早朝のジョギングコースとしてこの池を途中の休憩ポイントとしていたようで、やはり弥七が現れないかと眺めていたそうです。
私はその友人の話しを聞いてなんだか涙が溢れ、恥ずかしながら大人になって忘れてしまった大切なことを思い出させてくれた気がしました。。。
私もその後はその池に頻繁に通うようになったのですが、発見から5年ぐらいしてから弥七を見かけることがなくなりました・・・・きっと天国に逝ったのであろう。この大好きな池で死を迎えたのであろう。ありがとう弥七。。。。
そして弥七の発見からさらに20年が経過・・・・
私は二人の子供と毎週のように自然と絡む生活をしている。キャンプや登山や川遊びなど。もちろん生き物を探して捕獲し、家にあるたくさんの水槽で様々な生き物を飼育している。『生き物はデパートで購入するのではなく自然から頂戴すること』という独自のモットーは変わらず、さらには友人が思い出させてくれた『生き物は家族であり、いつまでも愛し続けること』ということを教えている。
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